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2002年11月20日
ブランドン・ケイム
訳 森野 俊子
バイオファーム ルーレット
遺伝子組み換え作物といえば、ふつうは食用の植物のことを思いうかべる。しかし、この業界内部の者にとって、食物はほんの手始めに過ぎない。めざす利益は、バイオ製薬にあるとされる。これは、植物に遺伝子操作を施し、医薬品やその他の物質を生産させることである。
未来の話のように聞こえるかもしれないが、多額の金が、投資家達が2010年までには何十億ドルにもなるともくろむ事業に先駆けるためにつぎこまれている。
それに携わっている人々は、規制や人々の安全などの面倒なことは気にかけようとしない。
全米の何百もの農場で、試験的な医薬品栽培作物がすでに作付けされている。これらの植物は「秘密企業情報」であるため、こっそりと植えられる。そしてとっておきの秘密は、なんでもないところに隠されるものなので、堂々と野外に、どこかわからないよう安全が確保されぬまま、植えられている。
この莫大な実験は、合衆国農務省(USDA)の協力のもとで行われている。USDAは試験場を一度くらいしか訪れないか、ときにはまったく訪問しない。これまでのところ、基本的にバイオファーム会社の「自発的コンプライアンス」を信頼してきた。知ってのとおり、自発的コンプライアンスとは、「実質的には規制がない」というビジネス用語である。
幸運にも、といってよいだろうが、バイオファーム企業の秘密のベールは、食品医薬品局がネブラスカ州の大豆50万ブッシェルを廃棄するよう命じたというニュースを、全米の新聞が先週報道したとき、劇的にはぎとられた。その大豆は、昨年同じ農場に植えられ予期せずに再び生えてきたバイオ医薬トウモロコシに汚染されていたのだ。
公益事業の「犬が俺の新聞報道に食いついた」学校の先生であるUSDAは、翌日、この9月にも同じように汚染されたアイオワ州の大豆畑155エーカーを焼却したと発表した。そのことはそれまで誰にももらさなかったのである。それは、技術的に、驚くべき認容であった。ほんの数週間前、USDAの官僚が、バイオ医薬品植物の野外栽培に懸念する活動家達に汚染試験は起こりさえしなかったと知らせたばかりだった。
あきらかに、USDAは、もはや隠しとおせないことが明瞭になって初めて、アイオワ州で起こったことを公にすることに決めたのである。たまたま両州の変異トウモロコシは、テキサス州にある会社プロディジーン社により開発されたものだ。プロディジーンの自社技術に対する横柄な態度は環境保護論者たちの憤怒を買ってきている。
プロディジーン生産開発部副社長のジョー・ジルカ氏は第85USDA承認作物試験で使われた作付け方法のことを「それを保証する最善の方法は、他のトウモロコシと全く同様に育てることである。別の言い方をすれば、無名にしておくことで完璧に隠しとおせるのである。知ってのとおりわが社のTGEV(豚ワクチン)は、まさに二つの州の間にあるここストーリーシティの近くで育った。しかし誰もそれを見たはずはなかったろう。」と述べた。
プロディジーンと政府は、どちらも、全米でどんな医薬品または化学物質がまさに食卓にのぼるところだったのか明らかにすることを拒否している。しかしプロディジーンの社歴によると、次の4つのうちのひとつであったらしい。
エイズワクチン:実際に免疫応答を抑制するおそれがあると考えている研究者もいる。
血液凝固因子:動物に膵臓疾患を引き起こすとされているもの。
消化酵素:医薬品製造で使用され喘息を誘起するとされるもの。
工業用接着剤の一種
もちろん、他のなにかであった可能性もある。わかっていることは、FDAの新聞報道によれば「その
遺伝子組み換え物質は新薬応用審査機関のもとで調査中である。」ということだけである。換言すれば、人体に用いて安全かどうかまだわからないということなのである。
USDAの対応は侮辱的なくらい生ぬるかった。「農務省は、将来同じような問題が起こるのを少なくするため、規則を改正することを考えるかもしれない。」と上級行政官のシンディ・スミス氏は述べた。
「考えるかもしれない」「少なくする」とはいったいどういうことなのか。正確なところ、どうすればUSDAが、何百万人もの人々があやうく試験段階の医薬品や化学物質を食べさせられるところだったという事実を重くうけとめるようになるのだろうか。おそらく数人の死者が出てハッとするか、あるいは何十年もあとになって初めてわかり、そのときはもう手遅れなのだが、体が弱っていくような病気が着実に増えることか。さもなければまったくの経済上の観点で輸出市場が失われることだろうか。
USDAは国内の試験作物をひとつのこらず公表し、バイオ医薬企業を規制することに徹底して取り組む必要がある。それまではすべての野外試験をただちに中止すべきである。いかなる商業的利益も、われわれの同意なしに、われわれのもとでいま起こっている危機に相当するだけの価値はない。
ブランドン・ケイム氏はリスポンシブルジェネティクス <http://www.gene-watch.org>委員会の通信局長である。Email:brandon@gene-watch.org
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