1998年度、大学ベースの品種別栽培試験で得られた

Roundup Ready大豆の収量低下の程度とその結果

 

 

Dr. チャールズ ・ベンブルック

ベンブルック・コンサルティングサービス

アイダホ州 サンドポイント

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


Ag BioTech InfoNet Technical Paper  No1.

1999年7月13日

 

 

(河田昌東 訳)

総   括

 

 

 1999年に合衆国内で植えられた大豆の2分の1以上は、モンサント社が生産した多目的用出芽後除草剤glyphosate (商品名:ラウンドアップ)に耐性を持つように遺伝子組み換えされた品種である。1996年に生産された「Roundup Ready」、すなわち glyphosate の直接散布に耐えられる大豆はごくわずかであった。

Roundup Ready(以下RR)大豆をこのように急激に取り入れた事は、アメリカの畝作(row-crop)農業の歴史上、これまで前例がなかった。 いかなる新しい品種や殺虫剤も、これほど劇的にこのような短期間に市場占有率を増したことはなかったのである。

 RR大豆が農民にこれほど人気が出た理由は、それによって大いに雑草管理(訳注:日本では除草の意味だが、日米の考え方の違いが良く分かるので、あえてこう訳す)の仕事が単純化され、農民が他の除草剤による雑草管理システムにともなう様々な問題を回避する助けになるからである。 これは数百から数千エーカーもの大豆畑に、タイムリーな雑草管理を終えなくてはならない(大規模)農民の間で特に人気が高いことが分かった。

 RR大豆の成功は、いわゆるRoundup Readyの「収量低下」を問題にするなら注目に値する。大抵の条件下では、もし農民が類似の非遺伝子組み換え品種を植えたなら、RR大豆の方が本来の在来種より生産量が低下することを、広範な証拠が示している。

 この報告は1998年に行われた8,200以上の大学ベースの大豆の試験栽培の結果を再検討して、RR大豆収穫量低下の程度について次のような結論に達する。

            収量トップのRR品種と在来種同士を比較すれば、RR大豆の方が1エーカー当たり平均4.6ブッシェル、即ち6.7パーセントの収量低下になる。

● 8つの州でのテストでは、収量トップの5品種の平均収穫高を比較すると、在来種

    に比べて収量低下は平均4.1ブッシェル、即ち6.1パーセントである。テストさ

    れたすべての品種の平均では、3.1ブッシェル、5.3パーセントの収量低下であ

    った。

            中西部のいくつかの地域で、種苗会社によって売られた在来種のうち最も良い収量

 のものは、同じ種苗会社が売った同種の Roundup 耐性品種より収量が10パー

 セントまたはそれ以上多い。

 

 RR大豆の収量低下を公平に見ることは大切である。1975年から1994年の間、大豆の収量は毎年(1エーカー当たり)平均0.5ブッシェルずつ増加してきた。1999年にはRR大豆の収量低下により、もし種苗会社が除草剤耐性株の栽培に劇的にシフトしなかった場合と比べれば、大豆の収穫量は全国平均でおそらく2.0から2.5%の減少をもたらしたと思われる。もし、将来育種の改善による逆転がなければ、この大豆の生産能力の低下は、これまで単一の遺伝的変化で主要作物にもたらされた最も著しい減少であることは明らかであろう。

RR大豆システムが農薬の使用を減らし、生産者の利益を増加させるかどうかについて、我々の分析は以下のとおりである。

            RR大豆システムは除草剤の使用に大きく依存し、従って除草剤の使用や依存を減らすものではない。逆に、(メーカーは)ストーリーを全部云わず情報が不完全だとか、でたらめな分析データの比較をしているというのが我々の主張である。

            RR大豆を栽培している農家は、1998年にRR大豆を植えなかった大部分の大豆畑で行われた従来の雑草管理と比べて、1エーカー当たり2倍から5倍の重量の除草剤を使っていた。RR除草剤の使用は、多面的総合雑草管理システムを行っている多くの農家に比べて、10倍かそれ以上レベルを越えている。

            RR大豆を栽培している農家のラウンドアップ使用量は、いくつかの主要な雑草でラウンドアップ耐性株が出現し、雑草のラウンドアップ感受性が鈍い方にシフトして、1999年には著しく増加したため、(ラウンドアップの)値下げと激しい売り込みがあったという明らかな証拠がある。

            大豆に対するラウンドアップの使用量は、多分、今後数年以内には1998年の2倍に増加するであろう。しかし、今のRRテクノロジーの様なやり方が今後も続くならば、ラウンドアップの有効性と市場シェアは急速に落ち込むであろう。

            RR大豆の収量低下と開発費により、大豆農家は間接的にかなりの収入減を課されることになる。その度合いは、RR品種の収穫が最良の場合の1エーカー当たり総収入の数%から(悪い場合)12%にまで及ぶ。

 

コスト高とラウンドアップ使用による重大な減収にもかかわらずRR大豆が著しく普及したのは、今日の除草剤に依存した大豆栽培の雑草管理システムの難しさと高コストが原因である。ラウンドアップ散布にもっと強い耐性を持つ雑草の急速な発生は、より統合化された、多面的な雑草管理システムの必要を促している。

 

 

A 大豆の雑草管理———終わりなき挑戦

 年々歳々、雑草との闘いは大豆農家が直面する最も厳しい有害生物問題である。 おそらく農民がさらされているさらに厳しい唯一の課題は、まあまあの利益をどうやって生みだすか、その方法を見いだすことである。特に、供給過剰と需要の伸び悩みで価格が押し下げられた1999年の様な年にはそうである。

ミネソタ大学の雑草科学者、ドナルド・ワイス博士 は、アメリカ中西部の畑作物栽培システムにおける雑草が果たす役割の大きさを次のように強調している。

「雑草は持続可能な農業システムの発展にとって大きな障害である。・・・雑草によって農業生産のやり方(例えば、耕作方法、除草剤、栽培管理、畝の間隔など)が規定されるし・・・現在の栽培方法が(かえって)雑草を増やし、雑草問題を解決するために農民に耕耘機を使ったり、除草剤の導入を強いたりしている、ということを強調しなければならない」(ワイス、1994)。

農民は毎年、数種類から半ダースもの種類の(細葉の)雑草の他、同じだけの種類の広葉雑草を処理しなければならない。 雑草が収穫量に対して脅威かどうかは問題でなく、問題なのは・・・・

            雑草管理がどれくらい大変か?

            雑草管理で、直接間接に、大豆の健康と収穫高にどんな影響が出るか?

            雑草管理のコストはいくらか?

            雑草管理システムが短期長期にわたって環境や土壌の品質に与える影響は?

である。

 ある年の雑草管理が悪ければ、以後何年にもわたって問題は悪化することになる。そして、土壌中に雑草の数がはっきり減ったと分かるまでには、農民はその後何年もの間注意深い雑草管理をしなければならなくなる。その後も、雑草の種は風で遠くまで飛んで、農民は誰も彼もが将来の雑草管理を完全には出来なくなるのである。

貧弱な雑草管理は農民にお金使わせプライドを失わせる。こんな大豆畑には、所々に見える背の高いfoxtailや、Crop canopyの上でそよ風にのってふわふわと漂う velvetleaf以外、目に見えるものは何もない。そして収穫の時になれば、まだらに生えた雑草がコンバインの速度を遅くし、成熟も乾燥も不揃いな作物を作ってしまう。 雑草は成長中の作物と日光、水そして栄養を奪い合う。雑草の数が多ければ多いほど、特に栽培早期に多いほど収穫量に対する脅威は大きい。

 

 

小さいが確かな前進

これまで除草剤に何十億ドルも出費し、新しい除草剤の研究と開発、登録に何億ドルも投じたにもかかわらず、農民にとって、大まかに云えば雑草は1959年より1999年の方が多くの問題を起こした。( Benbrook他1996)。 なぜか? 原因は、農場がより大きくなり、いっそう特殊化され(訳者注:単一作物栽培)、そして農法における多くの変化が農場に、ある特定の雑草を生えやすくしたからである。

 土壌の侵食を減らし、最低限必要な労働力で、速やかに広大な面積をカバーするために、農民は、確実で化学物質に頼らない、いくつかの雑草管理戦略を放棄した。 40年間USDA(米農務省)と土壌保護論者たちは、土壌保護路線を支援し、あるいは耕起を減らしてきた。

最初の耕起は多年生雑草を殺すか、あるいはダメージを与えて、雑草の種を土中に埋め、そして苗床を作るために実行される。しかしそれは同時に表土を雨と風の浸食効果にさらし、高度に浸食可能な大地に不利益をもたらす。 より軽度の道具を使った耕起は耕作(?)と呼ばれ、作物が発芽した後で、除草を助けるために行われる。耕作は低コストで効果的に雑草の数を抑制し、非化学物質雑草管理システムの根幹をなす。様々な理由で、農民たちはこの種の耕作から撤退した。 主要な理由の1つは狭い畝への植えつけシステム、固い苗床、そして非耕起栽培システムの流行である。

もう1つは、畑でスチール(の機械)を引っ張りまわすのにお金がかかることである。それには燃料がたくさん必要で、耕起の道具は絶えず修理しなければならないし、メンテナンスも必要である。さらに、限られた労働力で大きな農場を早くカバーするには大型機械が必要とされる。 機械が大きいと、それだけ経費もかかり、大きな農場ほどプレッシャーもまた大きい。これが多面的戦術による非化学物質雑草管理システムから次第に農民を引き離した悪循環である。

 統合化された雑草管理システムが、大幅に除草剤に依存するるシステムより有益なことは証明ずみである(Tillman 1998年; Drinkwater他1998年;同じく、アイオワ州立大学の持続的農業のためのAldo Leopold Centerの多数の研究報告;Practical Farmers of Iowa の年次報告など。http://www.agron.iastate.edu/pfi/ 参照)。それは除草剤依存性を減らし、収穫損失がなく経費を下げることができるが、計画性と技能と献身を必要とする。 成功の秘訣は、適切な輪作、耕起と早期の植え付けを可能にする計画的システム、そして雑草が小さく、除草しやすいうちに行う機械的耕起などである。 農民が成功するかどうかは、農場で起こる生物学的プロセスと展開する生物サイクルを良く理解するかどうかにかかっている。 注意深いタイミングと多面的戦略を総合するかなりの熟練が不可欠である。

実際、人間の要素がおそらく主要な制約条件である。 耕作機械を適切に操作するのに必要な、熟練し、経験のある個人が、絶滅寸前の生物リストを良く知っているとは限らないが、そうした生物の数は際限なく落ち込んでいる。過去15年間にわたって雑草管理費用は明らかに上昇しているので、賃金は唯一の問題ではない。 たいていの農場で除草剤の出費が1エーカー当たり15ドル増えれば、耕運機で2〜3回余分に耕すだけの費用にはなるだろう。

大豆を栽培している土地の95パーセント強で、除草剤が主要な雑草管理戦術である。 なぜなら、多面的管理システムよりも除草剤の利用が容易だからである。それが容易になったのは、除草剤の販売と適用に向けた、知識と基盤整備のための永年の公私にわたる投資と、非化学物質による雑草制御技術とシステムを簡易で効率的なものに改善するための研究、教育、そして技術開発を永年、相対的に軽視してきたからである。 どちらを優先するか、公平には推移しなかった。 激しい宣伝により「進歩」とは最新の除草剤を使う事だという考えが強化されてきたのである。

しかし、私的セクターや公的研究プログラムから多くの支援が無くても、 持続可能な農法を実践し、有機農産物市場を開拓してきた農民たちは、非化学物質による、あるいは減農薬による雑草管理システムを改良し続け、雑草管理費用を、除草剤ベースの近隣の農家の2分の1以下に押さえてきた。(「岐路に立つ有害生物管理」C・Benbrookその他、1996の「雑草管理」の項参照)

 

 

変化する標的

雑草には環境に適応して増殖する素晴らしい能力がある。 2人のアイオワ州立大学の雑草科学者、ボブ・ハルツラー博士とダグ・バーラー博士が一つの真理− 雑草出現のパターン −を研究した。

1998年の研究で、彼らは同じ季節に異なる地域で異なる雑草が生えることを発見した。北東アイオワで、giant ragweed が最初に出現してから50日後にfall panicum が発生した。 同州全体で、新しい雑草の出現までに約2カ月の経過期間があった。

 異なる雑草種の出現に長い期間かかることは、 Roundup 耐性大豆を植えている農民にとって特に問題である。なぜなら、Roundupは成長中の雑草にだけうまく効くからである。 農民はRoundup を散布するのに次の雑草が出現するまで待たなくてはならない。 けれども、もし彼らの待ち時間が長くなれば、最初の雑草はジャンプするほど大きくなってしまい、その結果、あるものはRoundupの散布で発育を妨げられる程度で、再度の散布や別の効き目のある除草剤が必要になってしまう。

 問題をさらに悪化させるのは、何種類かの雑草が1カ月又はそれ以上にわたって発芽し、waterhemp や morningglory のようなシーズン終期の雑草をコントロールしなければならない、という最も難しい問題が起こってくることである。 その結果、せっかく除草剤を早い時期に適切に散布しても、これら発芽直前の雑草には効かず、それがこんどは次のシーズンに問題を起こすのである。

雑草の進化的変化で、農民は年間を通じて問題雑草を駆除するために、絶えずより強い薬を探し求めるよう駆り立てられてきた。 その結果、除草剤の出費が1980年代には倍増し、1エーカー当たりおよそ13ドルから、1988年には26ドルを越えるまでに増大した。(「大豆コーンベルト地帯における種子と農薬生産:1975〜1997」ベンブルック著1999年の表1参照) 1998年に始まった、競争による除草剤の価格下落のため、除草剤への依存度が増し使用量が増えても、今後数年間は除草剤の出費は押さえられるかもしれない。

雑草の種類の変化や耐性雑草の出現は、あまりにも広範に深く依存してしまった除草剤依存システムの長期的有効性を、徐々にむしばんでいく主要なメカニズムである(脚注2)。

雑草の種類の変化は、畑にある様々な雑草種の相対的比率の変化を反映している。他方、ある除草剤に対する耐性雑草の出現は、畑にある雑草内部に起こった、遺伝的強制による進化現象である。

RR大豆の場合、すでにこうした雑草種のシフトや自然適応が起こっているという証拠が出ている。アイオワ州立大学の研究者達は、waterhempのグリフォセート耐性株を記載した(出所は脚注参照)。この特殊な雑草種はWeed Control Manual(雑草管理マニュアル)1998年版で、全国的にもまた中北部地域でも最も憂慮すべき「有望な雑草」として強調されている(Meister 1998)。何故トリアジンとALS除草剤に対する耐性が出現するのかという理由と、そのラウンドアップ耐性能力についてもふれられている。(アイオワ州立大学の雑草科学者Bob Harzlerの最近の研究概要は次のホームページを参照<http://www.weeds.iastat.edu/mgmt/qtr98-4/roundupfuture.htm>)。

中西部の大豆農家もまた、velvetleaf とsamartweedが、つい昨年は効果的だったラウンドアップの散布量には耐性になっていると報告している。雑草科学者は、今後数年間ラウンドアップ耐性の雑草種が増加し、農家は除草剤の混合割合の変更を余儀なくされるだろうと予想している。かりにたった数%の農家がそうせずに単にラウンドアップの散布量や散布回数を増やす様なことをしたら、それだけでごく当たり前の雑草が遺伝的に耐性を獲得するような選択圧力として働いてしまうだろう。

おそらく、これらの耐性雑草は急速に拡散し、総ての農家が他の除草剤の使用や除草方法の変更をしなければならなくなるだろう。

皮肉にも、RR大豆の市場におけるめざましい成功が、畑で問題を起こす場を提供しているのである。ある除草剤または雑草管理システムが如何に巧く機能しようと、明日の問題雑草はちゃんと片隅で待っているのである。ある地域で雑草管理システムが一面的であればあるほど、新たな問題雑草はそれだけ早く出現するものである。農家が除草剤に頼れば頼るほど、とくに単一のあるいは少数の製品に頼れば、耐性雑草は発生しやすい。これは雑草管理の歴史の教訓であり、バイオテクノロジー革命がアメリカの大豆産業の変革に際して適切に耳を傾けてこなかったことである。

 

(脚注2)これらの潜在的リスクについては、Dr. Mike Owen の1997年の除草剤耐性テクノロジーに関する良いレビューがある(Owen 1998).

 

 

B 収穫量比較の方法

 ラウンドアップ 耐性大豆の収量を非組み換え大豆の収量と比較するために、2つの主要な方法が使われた。1つは、多くの大豆品種あるいは多くの農場の平均収穫高を比較する方法である。 このような比較における問題は、多くの変数がコントロール出来ないということである。 平均収量の差は、遺伝的差異によるかも知れないし、他の要因で説明可能かもしれない。

最も正確な方法は、適切に計画され、glyphosate 耐性遺伝子を持つか否かという点だけ違う、遺伝的近似種(脚注3)同士を、同じ場所に並べて植え、その収量同士を比較することである。他の要因が同じであれば、このような試験は遺伝子の相違による結果を区別する最も信頼性の高い方法である。

広い大豆畑を持つ州立大学のほとんどが、様々な品種を栽培し、公平で正確なデータを農民に提供するために、大豆の収量試験を実行した。 (州立大学の大豆栽培試験データのインターネット情報源は文献リストにある)。 試験は一つの州の様々な地域で行われ、また成熟時期の違う品種の試験も行われた(脚注4)。 いくつかの州では、いろいろな耕起方法や植えつけシステムでも試験が実行された。

この報告で、我々は各大学の試験から得られた、現在利用可能な最も公正な大豆収量試験データを比較する。 我々は、1998年に8つの州で実行された8,200以上の大豆収量試験について、ウィスコンシン大学の分析を引用する。 Roundup 耐性大豆の収量低下についてのこの決定的な評価は、E・S・ オプリンガー、M・J・ マルチンカ 博士とK・A・ シュミッツ 博士によって行われ、「合衆国北部における遺伝子組み換え大豆の収量」という題がつけられている。(脚注5)

 

 

1、州別の品種栽培試験結果

1と表2には、8つの州で行われたRR大豆と在来種の収量の違いが、オプリンガーの要約報告のデータを引用して述べられている。各表には3つの比較——全品種の収量平均、試験された中で収量トップの5つの品種の平均収量、そして最多収量の品種同士の比較が載せられている。

表1は1エーカー当たりのブッシェル(訳注:袋、1袋約35リットル)数、表2はRR大豆の収量低下を二つの方法———RR品種と在来種の1エーカー当たりのブッシェル数の差、そして、在来種の収量に対するパーセント、で示す。

 

脚注3 )「遺伝的近似種」という言葉で、我々は二つの品種が特定の遺伝子又は形質の導入以外、その他の

遺伝子が同一であることを意味する。

脚注4)大豆はしばしば成熟期グループ別に売られ、研究されている。一般に、成熟期間が長いと、期待され

る収量は高い。したがって、短期品種と長期品種の収量を比較するのは不適当である。

脚注5 )この論文は http://www.biotech-info.net/soybean_performance.pdf でオンラインでアクセス可能で

ある。この論文の要約表は http://www.biotech-info.net/yield_performance.pdf でアクセス可能である。 また、Oplinger 博士によって彼らの調査結果の要約のスライド・プレゼンテーションが http://www.uwex.edu/ces/soybean/slides/1998%20ASTA%20Expo/sld001.htm でアクセス可能である。

 

 

 

1 1998年の8つの州におけるRR大豆と在来種大豆の収量の比較

(単位:エーカー当たりブッシェル)

 

 

  

   州名

 

 

試験平均

 

 

最多収量5品種平均

 

最多収量品種

 

在来種

 

 

RR種

 

在来種

 

RR種

 

在来種

 

RR種

 

イリノイ

 

 

58

 

60

 

65

 

65

 

67

 

67

 

アイオワ

 

 

61

 

57

 

64

 

60

 

66

 

60

 

ミシガン

 

 

66

 

64

 

74

 

69

 

78

 

70

 

ミネソタ

 

 

66

 

61

 

73

 

67

 

74

 

69

 

ネブラスカ

 

 

66

 

51

 

65

 

58

 

66

 

60

 

オハイオ

 

 

60

 

58

 

67

 

63

 

69

 

65

 

南ダコタ

 

 

49

 

44

 

54

 

50

 

56

 

51

 

ウィスコンシン

 

 

71

 

69

 

85

 

82

 

87

 

84

 

出典:Performance of Transgenic Soybeans-Northern U.S., E.S. Oplinger, M.J. Martinca, K.A. Schmitz

   州別の詳細については、「Yield Performance of "Roundup Ready" vs Conventional(CN) Soybeans in  

   the Northern  U.S. 1998」 の表1参照。 

 

 

オプリンガーのデータは次のことを示している―――

 

 

11、 RR大豆の収量低下は、最多収量品種同士の比較では、0〜10%、平均収量では1エーカー当たり7%、つまり5ブッシェルの範囲にわたっている。

 

12、 試験した最多収量5品種で、(RR大豆の)収量低下は0〜11%、平均6%であった。

 

2. 州別のRR大豆と在来種の収穫量差、1998年

 

   

 

州 名

 

 

在来種に対するRR種の1エーカー当たりの収量差(ブッシェル数)

 

 

試験平均

 

 

最多5品種平均同士

 

最多収量品種同士

 イリノイ

2.0 

0.0

0.0

 アイオワ

-4.0

-4.0

-6.0

 ミシガン

-2.0

-5.0

-8.0

 ミネソタ

-5.0

-6.0

-5.0

 ネブラスカ

-7.0

-7.0

-6.0

 オハイオ

-2.0

-4.0

-4.0

 南ダコタ

-5.0

-4.0

-5.0

 ウィスコンシン

-2.0

-3.0

-3.0

8州平均

-3.1

-4.1

-4.6

   

 

 

州 名

 

 

1エーカー当たりの収量低下パーセント

 

 

試験平均

 

 

最多5品種平均同士

 

最多収量品種同士

 イリノイ

3.4%

0.0%

0.0%

 アイオワ

-6.6%

-6.3%

-9.1%

 ミシガン

-3.0%

-6.8%

-10.3%

 ミネソタ

-7.6%

-8.2%

-6.8%

 ネブラスカ

-12.1%

-10.8%

-9.1%

 オハイオ

-3.3%

-6.0%

-5.8%

 南ダコタ

-10.2%

-7.4%

-8.9%

 ウィスコンシン

-2.8%

-3.5%

-3.4%

8州平均

-5.3%

-6.1%

-6.7%

 

出典:Performance of Transgenic Soybeans - Northern U.S., E.S. Oplinger, M.J. Martinca, K.A. Schmitz

    州別の詳細については、「Yield Performance of "Roundup Ready" vs Conventional(CN) Soybeans

    in the Northern U.S. 1998」の表1参照。 

 

 

オプリンガーと協同研究者たちは、1998年のRR大豆の収量低下の分析から、彼らの報告を次のような今後の予測と直接的結論で締めくくっている。

 

「大豆農家はRR大豆品種の栽培面積増やそうとするだろうし、雑草管理を容易にするために最大収量を犠牲にするだろう」(Oplinger ら.,1999年)。

 

 

2、種苗会社別の収量低下の評価

 RR大豆の収量低下を評価する第2の方法は、ある種苗会社のある成熟期グループの中で最多収量の在来種と、最多収量のRR品種同士を比較することである。 多くの場合、この二つの品種間の違いは、ラウンドアップの散布で生き残り可能な遺伝物質が導入されているか否かだけである。この比較は、glyphosateの散布に耐性の大豆を作るために必要な遺伝子組み換えによる(植物の)生理学的影響を区別するのに最適である。 その違いがRR大豆の収量低下の原因である。種苗及びバイオテク企業は、大豆の生育能力に不利な影響を与えずにglyphosate 耐性を維持し、病原体や昆虫、ストレスなどの原因に対して抵抗性を持たせる方法を見いだそうとして、今一生懸命である。

我々は南ウィスコンシン(表3と4)、と中部・南部ミネソタ(表5と6)の試験で得られた詳細な栽培試験データを再検討した。 南ウィスコンシンでRR種と在来種の両方を売っている10の種苗会社について、表3に在来種とRR種の最多収量同士の差、在来種とRR種の平均収量の差、在来種とRR種の最少収量同士の比較を示す。 表3、4、5、6、7は大きすぎるので、この文書の終わりに添付する。

 これら10の種苗会社のRoundup耐性種の、南ウィスコンシンでの平均減収量は以下の通りであった。

13、 RR種と在来種の最多収量同士の場合、4.7ブッシェル即ち6.2%。

14、 RR種と在来種の平均収量同士の場合、4.4ブッシェル即ち5.9%。

15、 最少収量同士の場合3.5ブッシェル、即ち4.8パーセント。

これらの調査結果が、表2で報告したパーセンテージと比較して如何に一致しているかに注目すべきである。 8つの州全体にわたる収量の比較、そして南ウィスコンシンおける10の種苗会社の大豆同士の比較も同じ結果である。 テストされた最多収量品種の中では、RR種の収量低下は6-7パーセントである。最多収量品種同士の差は、平均収量の場合と比べ一貫してより大きい。

表4は、南ウィスコンシンで行われた10の種苗会社の大豆の収量の差を%で表す。

 中部ミネソタでの テストで(表5参照)は、RR大豆の収量低下は14の比較で、13.1パーセント、即ち1エーカー当たり平均9.3ブッシェルであった。 ここでも、ある成熟期グループに属する最多収量のRR種と、同一又はごく類似の成熟期グループの在来種の最多収量の比較結果は同じである。 14のケースのうち、3つでは(RR種の)収量低下は20パーセントを超えた。 ミネソタで、最大の収量低下は27パーセント、最低は3パーセントであった。

 表6は南部ミネソタでの同じようなデータを示すが 、ここはさらに多くの品種が売られている主要な大豆生産地域である。 この表でも同様に、同一成熟期グループに属する、RR種と従来種の最高収量の差は一致している。 この地域での平均収量低下はずっと小さく、50データの比較でたった2.8パーセントであった。

収量の差には、同様に収量18パーセント増から15パーセント減まで、ずっとばらつきが大きかった。 このばらつきは、比較された品種の間でいくつかのケースでは、 ラウンドアップ耐性よりもその他の遺伝的特徴の違いが大きかったことを示唆する。今後さらに収量の比較調査を続け、その他の遺伝的違いを明らかにするよう努力すべきであるが、これは個々の種苗会社にコンタクトして、品種同士の違いに関する情報を集める仕事である。

 

 

RR種の生産量障害による経済への影響

7は、RR大豆の植え付けに伴う収量低下による、農場レベルでの経済的影響を示している。この表は除草剤の出費の違いや、その他の雑草管理の面での違いを述べたものではないことに注意すべきである。それは単にRR大豆の植え付けによる二つの比較的計量しやすい、収量低下と技術開発費だけに着目した結果である。

1エーカー当たりのブッシェル数で数えた平均収量の低下は2列目に、そして在来種に対する収量パーセントは3列目に示されている。 収量低下のドル価格換算は、1ブッシェル当たり5.25ドルという大豆価格に基づいている。 「RRシステムによるコスト増」というのは、「収量低下のドル換算値」と1エーカーのRR大豆の作付けに伴う、平均8ドルの技術開発費を足した合計金額である。 最後の列は、総収入にしめる追加コストをパーセントで表す。

8つの州のうち4つで、RR大豆の栽培を選んだ農家は、1エーカー当たり総収入の10%を越えるに等しい追加コストの損害を被った。コスト増はイリノイで最も低く、1エーカー当たり総収入の平均約2.3パーセントであり、最も高いミシガンでは1エーカー当たり50ドル、即ち総収入の12パーセント以上である。

 RR品種の採用に伴うコスト増は、全種子代と除草剤代を足したものと比較してかなり大きいが、それは典型例で1エーカー当たりおよそ45ドルから60ドルになる。 したがって、農民がRR大豆を栽培しようと決断することは、RR大豆の栽培による直接間接の影響を考慮すれば、種子代と雑草管理システムの費用の合計は、ほぼ倍増する結果になるかもしれない。イリノイ州と若干の中西部の農場では、総てのRR品種で収量低下があったにもかかわらず、RR品種は在来種と同等か場合によってはむしろ在来種より良い経済効果を納めた。種苗会社とバイオテク企業がその理由を追求している。 その答えは間違いなく、西部と北部のコーンベルト地帯で、改良された品種を栽培する将来の努力、あるいは、RR品種の遺伝的生産能力をより良く利用するための農法の変更につながるだろう。

 明らかに、RR大豆の経済的影響を完全に評価するには、追加的要因を考慮する必要がある。

1エーカーに使われた除草剤の費用は、栽培方法と畑の条件によって、中西部ではかなりばらつきがある。比較的雑草圧力の低い状態下で大きな成功を納めているRR大豆農家は、年1回の除草剤散布と平均以下のコストですむ事を多くのデータが示唆している。

しかし、ラウンドアップを2回散布し、さらに少なくとも1種類別の除草剤を追加する農家の数が増加しつつある。 こうした農家にとって、在来種を植え総合的雑草管理を行う人と比べて、除草剤によるコスト削減はほとんど、あるいはまったくない。 無数の価格誘因(注:安売り)、容量デスカウント(注:おまけ)、生産物保証(買い取り価格保証)と企業のリベートが、これまで除草剤によるシステムの実際の経費の比較を非常に困難にしてきたし、当分の間こうした比較をする研究者を悩まし続けるであろう。

 

 

3.USDA調査データ

毎年、合衆国農務省(USDA)は、各州で農薬の使用と栽培方法の調査を含む農業資源管理研究 (ARMS)を実行している。 1999年6月25日にUSDAの経済調査部 (ERS) は、「有害生物のための遺伝子組み換え作物」(脚注6)と題する、1996年、1997年、1998のARMS調査データの分析結果を公表した。この短い報告書には、多くの議論と間違った発言をかもした3つの表が含まれている。

ERS 報告の最初の表は、1996年以来の Bt 遺伝子(注:殺虫遺伝子)組み換え品種、及び 除草剤耐性品種の栽培面積の%と、生産量のパーセントを載せている。このデータは地域毎にまとめられ、「総ての調査された州」をカバーするようにまとめられている。

除草剤耐性大豆の場合、RR大豆を植えた面積とsulfonylurea と imidazolinone 耐性大豆の面積が混ぜ合わせられている。 したがって、(この間)除草剤耐性品種を植えた面積の増加の大半がRR品種によるものだと広く考えられているにも係わらず、RR品種の作付け面積の増加を正確に区別することが、この表からは不可能である。

調査されたすべての州で、全除草剤耐性作物の作付けの中の大豆面積の割合は、1996年の7.4パーセントから1998年には44.2パーセントにまで増大した。1999年の収穫期には、国家の大豆の少なくとも50パーセントは RRである(アイオワ州立大学のマット Liebman 博士による個人情報)。

ERSレポートの表2には、遺伝子組み換え品種が植えられた面積での平均収量と、その他総ての品種が植えられた面積との平均収量の比較が載っている。この表には、遺伝子組み換え技術を採用した農場の平均収量と、すべての他の品種を栽培した面積での平均収量を比較したパーセントの差が示されている。 除草剤耐性大豆の場合、収量差は1998年の東部アップランド地域での8パーセント減収から、1998年のプレイリー・ゲートウェイ地域での24.2パーセント増収まで様々である。

表への序文で ERS報告の著者たちは、調査データの平均収量を使って色々な作物の遺伝的能力を比較することについて、いくつかの警告を述べている。

 

(脚注6)この報告はERSの「Issue Center・・Biotech」を通じてインターネットのhttp://www.econ.ag.gov/whatsnew/issues/biotech/ からアクセス出来る。この報告書と分析へのリンクは、Ag Biotech InfoNet Web site のhttp://www.biotech-info.net/t-transgenics.html で「General Discussion and Opinions」のタイトルで見つかる。

著者らは、ラウンドアップ耐性種と在来種の間の遺伝的差異よりも、その他の条件が観察された収量の違いの一部又は全部を説明するかも知れない、と適切に述べている。著者らの結論は以下のとおりである。

 

「従って、調査結果から得られる平均収量と防除剤使用における収量の違いは、結果が多くの他の要因によって影響を与えられることから、必ずしも遺伝子工学技術の利用に帰す事はできない。なぜなら、これらの結果は、潅漑、天候、土壌、肥料、そして病虫害管理、その他の栽培管理技術、栽培者の個性、病害虫の圧力等々、コントロール出来ないたくさんの要因によって左右されるからである。(ERSレポート「病虫害管理のための遺伝子組み換え作物」の中の「平均値を使うについての注意」)

 

我々はERS アナリストに同意する。我々がERS データから引用できる唯一の可能な結論は・・・

 

16、 除草剤耐性品種の栽培面積が増加しつつある(議論の余地無く)。

17、 除草剤耐性品種を栽培している農家の収量は、在来種の栽培農家のそれと比べて、年々大きく変動し、また地域によっても変動する。さらに、

18、 除草剤への依存性は、使用面積で見ればわずかながら増えて来ている。

 

 ERSの報告データからは、どの程度の収量変動が、栽培品種の遺伝的差異に対して、土壌や天候、病害虫の圧力、あるいは管理技術に帰せられるか議論はできない。例えば、RR大豆採用者には高い割合で大面積をカバーする熱心な農家が含まれる傾向がある。農場が大きければ大きいほど、RRシステムが原因の変動の経済的価値も大きくなる。RR採用者はまた、高価な RRの種子をより良い土地に植えようとするかもしれない。 明らかに、RR大豆栽培農家と在来種栽培農家の栽培方法や病害虫管理システムの違いを十分理解するには、より詳細な分析が必要であろう。

 

 

4. 何故RR品種がしばしば在来種より収量が上回るか

ラウンドアップ耐性遺伝子を導入した大豆は、他の要因が同じなら、遺伝的な収穫能力が大きくなる、と誰もどこの種子会社も主張する。さらに、ある地域のある農家のある栽培試験では、RR大豆は同様な在来種よりも収量が上回る(という)。実際、これがRR大豆が農民に人気をあげた主な理由の1つである。 本当に比較可能な条件下で、RR大豆の収量低下の度合いを正しく算出するために、なぜこんなことが起こったのかを理解することが重要である。

 種苗会社は、様々な土壌タイプと成熟期グループの中で、彼らにとって最も良く売れる品種にRR遺伝子とその形質を導入するのにやっきになった。最も良く売れる大豆品種のRRバージョンで高い収量を得るには二つの方法がある・・・

 

19、 以前よりいっそう効果的な雑草コントロール、プラス、又は、

20、 他の除草剤散布や耕起などの雑草管理による作物の損傷をより少なくする。

 

たいていのRR大豆システムで、裁培者は、早い季節に生えてくる雑草の圧力には我慢しなければならない。上手にやるには、雑草が緑色の成長しつつある時期にラウンドアップを使わなければならない。RR大豆で最高の結果を得るには、最初の除草剤散布のタイミングに注意を払わなければならない。もし、雑草の発芽直後に散布したら、雑草はそのまま生育し、季節の後期に雑草圧力によって何らかの収量低下を被るかもしれない。しばしば、農場の雑草を一掃するために、農民はコストを増やし、植物に若干の損害をもたらしてでも、2回目のラウンドアップ散布をしなければならない。 最初の散布を遅らせることによって、2回目の散布の必要性を避けることができるが、これはRR大豆が、ある程度早い時期の雑草と競争するリスクを冒す。 それ故、ラウンドアップだけに頼るRR雑草管理システムは、他のよく管理されたシステムと少なくとも同程度に雑草との競合になる可能性が高い。

畑では、新しい化学の進歩、除草剤耐性品種の出現、そして除草剤製造会社による売り込みと品質保証プログラムなどで、農民は非常に高いレベルの雑草制御を期待されて来た。 1997年以来の(除草剤の)全面的な価格低下が、除草剤散布回数の増加したもう一つの原因である。1998年初めに、モンサントはラウンドアップ の価格をおよそ25パーセント値下げすると発表した。その直後、ジュポン社とアメリカン・シアナミド社も 同程度の、ある場合には競争相手の除草剤の値下げよりもさらに法外な値下げをし、ラウンドアップに市場占有率を奪われるのをくい止めようと戦ったのである。

そして、種子や生産物の選択肢が増へ、除草剤の値段が下がるにつれて、近年非常に積極的かつ一般的には成功する大豆の雑草管理が生まれた、と多くの専門家の意見は一致している。もし雑草による圧力と競争がRR種と在来種の収量の違いを説明しないなら、他に何があるのか?

 RRシステムを使わない多くの農家が、 sulfonylurea あるいは imidazolinone 除草剤を用いている。 多くの大学での大豆の並列栽培試験でも、これらの製品をマニュアル通り使っている。これらの除草剤は、シーズン初期に大豆に若干の発育妨害と障害を起こすことが知られている。このことは1998年に行われた大規模な栽培試験で、アイオワ州立大学が明瞭に記載している(脚注7)。シーズン長期にわたって生育する大豆は、様々な環境や化学物質との相互作用でその能力を減ずられるけれども、早期用大豆除草剤の被害は受けにくい。

 

(脚注7)アイオワ州立大学の雑草管理 ホームページへのアクセスは http://www.weeds.iastate.edu/ から「1998 Weed Research Results Now Online」へ。同州のいくつかの場所で、様々な研究チームが除草剤の効力評価試験を行っている。RR大豆システムに最適な除草剤散布時期を決めるための研究がたくさん行われている。他の除草剤による早期障害が研究者の関心の的であり、農家の間にも関心が広がりつつある。

これらの活性の高い除草剤も、リンの利用率を減らしたり、あるいは植物の免疫反応を妨害するような他のメカニズムによって、ラウンドアップ同様大豆の収量を減らす。 けれども、RRシステムでは(植物に対する)直接の障害、あるいは間接的に土壌生態系や植物の健康への悪影響———などのメカニズムが働くにもかかわらず、他の除草剤による同様の問題を回避するので、RRシステムがしばしば確かに高い収量をあげる。従って、(条件を同じにすれば)RRによる収量低下は、実際には現在の大学の栽培試験で示唆されるよりも幾分大きいあろう。 種々の条件下で、さらに正確に生理学的なRR収量低下の程度をはっきりさせるためには、大学の試験では、総合雑草管理システムと非化学物質システムを使った栽培にまで比較の対象を拡張すべきである。

 

 

雑草管理の詳細における厄介なこと

一般的に、生育時期が良く作物の生育にばらつきが無いほど、大豆がシーズン初期の雑草の圧力や除草剤による障害の影響の受けかたは少ない。

 しかし、除草剤、界面活性剤、殺虫剤、これらの散布方法や時期、天候、耕起方法、土壌条件の間に、あらゆる種類の複雑な相互作用が生じる。これらの相互作用は時々思いがけない問題を発生させる。 湿度が高く冷たい春は、微生物による除草剤の分解を遅らせ、損害を増やす一方、作物の発芽を遅らせ、雑草の管理を難しくする。乾燥した年は、ある種の除草剤の効き目を弱め、まったく新しい一連の相互作用を強化する。 低い土壌pHレベルは、除草剤とある種の土壌殺虫剤が混じったときに問題を起こす。

その上、これらの相互作用は本来的に予測不能である。 その広範な影響と・・・農家の生命線への悪影響・・・は、相互作用が起動状態になってしまえば、しばしば避けることが出来ない。だから農民は、コストが高く収量低下が明らかでも、こうした頭痛の種や周期的にやってくる損失を避けるために、除草剤耐性大豆をこれほど熱心に選んできたのである。それはまた、種苗会社とバイオテク企業が、種(たね)に直接除草剤を散布しても大豆が被害を受けず、しばしば長期間残留する除草剤を前の年に撒いたトウモロコシ畑でも生育出来るように、 IMI (imidazolinone)やSTS ( sulfonylurea )除草剤耐性の大豆種を開発した理由でもある。

 

 

C. 農薬利用におけるラウンドアップ耐性大豆システムの影響

除草剤耐性品種を植えるメリットは、除草剤を散布する時期に柔軟性が増すからである。除草剤耐性の種に余分なお金を払う栽培者は、主な雑草管理手段として、除草剤に大きく依存するよう暗黙の決定をしてきた。だから、輪作や耕起、マルチング用植物(原語:cover crop)の様な非化学物質による農法を含む総合雑草管理システムに比べて、除草剤への信頼感が大きいのは驚くに当たらない。

 RR大豆は新しい技術である。 最初の本格的な栽培は1997年であった。1998年には劇的に拡大して、1999年にはさらに広がると予想される。2回以上RR大豆を植えた土地はまだ比較的少数である。だから、農薬使用による雑草の変化と耐性の重大性と影響に結論をだすのはまだ早すぎる。

 まだ、(そうだという)サインは出ていないが、中西部農民達により、特に velvetleaf と ragweed に対して、除草剤が効きにくくなったと報告されている(脚注8)。1エーカー当たり24オンス(有効成分は0.75ポンド)の割合で 「ラウンドアップ・ウルトラ」 を散布しても、これらの雑草はうまく排除出来ないが、32から48オンス撒けば良い、と多くの農家が報告している。1996年と1997年には、中西部のたいていの地域で、24オンスあればこれらの雑草は十分駆除出来たのである。

 雑草の種類に、おそらく、かなり速く変化が起こっている。そして、RR大豆によって誘発された耐性雑草の最初のケース・・・waterhemp 種で起こった・・・さえ、このあたりかあるいはその周辺にある。 従って、RR大豆が1996 - 1998に得た信頼と利用度が減るかどうかにかかわらず、雑草種の変化と除草剤耐性は増大しつつあり、もっとバランスのとれた多面的戦略による雑草管理システムに戻るまで、増え続けるであろうことは明らかである。

 

 

除草剤に対する依存

 短期的にも長期的にも、除草剤への依存とその使用量の変化を測るのは慎重を要する。単一の除草剤使用量はその除草剤への依存度の信頼できる指標ではない。1エーカー当たりに何ポンド散布されたか分かっても、ある除草剤が1オンスの何分の1かで効果があるのに、他の除草剤は1ポンドよりはるかにたくさん必要、というように紛らわしい。

除草剤の生物学的活性と残留性にも、その毒性同様大いにバラエテイーがある。それで、各商品毎に散布頻度、散布量、それによって起こった変化を徹底して観察するする事なしに、除草剤利用による変化に関して信頼出来る結論に達することは難しい。これらのデータがあれば、除草剤の毒性と残留性のデータと併せて、過去の依存性と除草剤使用によるリスクに関する結論への到達が可能になるだろう。

RR大豆の植えつけが除草剤に対する高い依存性を継続させている間に、 ある農家がRR大豆システムの除草剤「使用量を減らせる」ように出来る2つの方法がある。

 

(脚注8) 例えば、1999年7月4日と7月9の間の農民による数本の投稿参照。AgOnline 、http://www.agriculture.com/scgi/Agtalk/。 「IPM Talk」をクリックし、「reduced rate herbicide」のメッセージ参照。

 

1の方法は、生産者が1エーカー当たり1.5から3.0ポンド散布していた「古い」化学除草剤を、0.75から1.5ポンドのラウンドアップを使うラウンドアップシステムに切り替えること。新製品の低使用量除草剤を使っている農家、又はSTS大豆(スルフォニル・ウレア耐性大豆)を植えている農家は、1エーカー当たり活性成分で10分の1ポンド以下でしばしば優れた効果を達成出来る。

面積当たり、または散布ポンド数で表した除草剤の減量は、除草剤への依存性を減らさずに、より生物学的活性が高く、持続力のある化学物質を少量使うように切り替えることで達成できる。

一例———1998年のRR大豆システムでは、1エーカー当たり平均約1ポンドの除草剤活性成分が必要であった。この使用レベルは、スルフォニルウア除草剤を使っている農場の在来種に必要な除草剤の10倍から20倍大きく、スルフェントラゾンのような新しい低用量除草剤より数倍以上、少なくても5倍以上の活性成分を含んでいる。従って、RR大豆が除草剤使用量を減らす、といういかなる主張も「・・・何に比べて減ったのか??」という言葉なしには、不完全なのである。もし、目的が除草剤を減らすことであるなら、農家が選択すべき、これより遥かに良く、そして安価な方法がある。

 

 

増加傾向にある使用量

 1999年の現場(農場)での経験は、この年の1エーカー当たりのラウンドアップ使用量が、おそらく1998年の15%から25%ふえるであろうことを強く示唆している。 1998年のUSDAのデータは、大豆に対する収穫年当たりのラウンドアップ平均使用量は0.92ポンドで、1エーカー当たり年1.3回の散布があったたことを示している。 1999年に、使用量はおそらく平均1.6回、エーカー当たり平均1.2ポンドに増えそうである。

このラウンドアップ使用レベルを全体的な視野で見ると、1998年にはラウンドアップが使われなかった大半の大豆畑では、0.5ポンド以下の除草剤しか使われなかった。 多分15パーセントから20パーセントの面積では、たった0.25ポンド以下であった。これらのシステムと比較すると、RR大豆は大きく除草剤に依存している。さらに、雑草種の変化、耐性、除草剤の値下げと攻撃的な除草剤売り込みのために、 ラウンドアップ 使用量は、今後数年間に、急激に増加し、農民が新たな解決策を求めざるを得なくなる期間を縮めることになるだろう。

次に来るのは、大豆農家の64,000ドル問題である。 どこの企業または公共研究機関が、大豆の雑草管理という難問の核心に切りこんだ答えを見いだすかどうかは、まだ分からない。現在の経済状態と政策風土の中では、この肝要な仕事は農業者自身に残されているかもしれない。

 

 

3  ラウンドアップ耐性(RR)大豆と在来種大豆の種苗会社別収量比較

   南ウィスコンシンに於ける1998年の栽培試験

 

 

会社名

 

 

品種

 

成熟期

グループ

 

収量

収量差:

在来種に対するRR種

エーカー当たり

ブッシェル

収量低下

 Asgrow

 最多RR

 最多在来

 

AG 2301

A 2553

 

2.3

2.5

 

73

77

 

-4

 

-5.2%

 

平均RR

平均在来

-

-

70

77

-7

-9.1%

最少RR

最少在来

AG1901

A 2553

1.9

2.5

68

77

-9

-11.7%

 Cole

最多RR

最多在来

 

Dyna-Gro 3266RR

Dyna-Gro 3252

 

2.5

2.5

 

73

 74*

 

-1

 

-1.4%

 

平均RR

平均在来

-

-

-

-

69.3

71.8

-2.5

-3.5%

最少RR

最少在来

DSR-293/RR

DSR-277

2.8

2.8

68

71

-3

--4.2

 

 Dekalb

最多RR

最多在来

 

RR2300

CX253

 

2.3

2.5

 

72

76

 

-3

 

 

-5.3%

平均RR

平均在来

-

-

-

-

68.1

72.7

-4.5

-6.2%

最少RR

最少在来

CX256RR

CX230

2.5

2.3

65

69

-4

-5.8%

 

 Golden  

 Harvest

  最多RR

 最多在来

 

 

X198 RR

X251

 

 

1.9

2.4

 

 

70

76

 

 

-6

 

 

-7.9%

 

  平均RR

 平均在来

-

-

-

-

68

68.7

-0.7

-1.0%

 最少RR

 最少在来

-1238RR

-1184

2.3

1.8

 

67*

65*

2

3.1%

Kaltenberg

最多RR

最多在来

 

KB 215RR

KB 248

 

2.1

2.4

 

68

75

 

-7

 

-9.3%

平均RR

平均在来

-

-

-

-

67.5

72.5

-5

-6.9%

 最少RR

 最少在来

KB 249RR

KB 214

2.4

2.1

67

69

-2

-2.9%

 

 

 

 

 

 

(表3-続き)ラウンドアップ耐性(RR)大豆と在来種大豆の種苗会社別収量比較

   南ウィスコンシンに於ける1998年の栽培試験

 

 

会社名

 

 

品種

 

成熟期

グループ

 

収量

収量差:

在来種に対するRR種

エーカー当たり

ブッシェル

収量低下

 M/W Genetics

 最多RR

 最多在来

 

G 2445RR

G 2380

 

2.4

2.3

 

69

77

 

-8

 

-10.4%

 

平均RR

平均在来

-

-

-

-

68

75

-7

-9.3%

最少RR

最少在来

G 2210RR

G 2711

2.2

2.7

67

73

-6

-8.2%

 

 Pioneer

最多RR

最多在来

 

92B71

92B61

 

2.7

2.6

 

69

69

 

0

 

0.0%

平均RR

平均在来

-

-

-

-

68

75

-7

-2.0%

最少RR

最少在来

92B01

92B23

2

2.2

64

66

-1.3

-3.0%

 

 Stine

最多RR

最多在来

 

2091-4

2499-0

 

2

2.4

 

 68*

76

 

-8

 

-10.5%

平均RR

平均在来

-

-

-

-

67

71.6

-4.6

-6.4%

最少RR

最少在来

1980-4

2500

1.9

2

65

68

-3

-4.4%

 Terra

最多RR

  最多在来

 

E 1980RR

E248

 

1.9

2.4

 

72

77

 

-5

 

-6.5%

 

平均RR

平均在来

-

-

-

-

68.7

76

-7.3

-9.6%

 

最少RR

最少在来

TS 253RR

TS 277

2.5

2.7

66

75

-9

-12.0%

 

 

 

     10社平均  最多収量 在来対RR

          平均収量 在来対RR

         最少収量 在来対RR

 

-4.7

-4.4

-3.5

 

-6.2%

-5.9%

-4.8%

 

 

* 同一の圃場で2種類以上の品種が栽培された。

 

出典:ベンブルック・コンサルテイング・サービスの収集データ。「南部地域に於けるウィスコンシン

   大豆栽培試験(1998年)」の表6より。

 

 

 

 

 

 

4  種苗10社によって販売された、在来品種に対するRR大豆の収量低下:

    1998年南ウィスコンシン地域栽培試験結果

 

 

 

会社名

 

在来種の最多収量品種と比較した減収%

最多RR

平均RR

最少RR

 Asgrow

-5.2%

-9.1%

-11.7%

 Cole

-1.4%

-3.5%

1.5%

 Dairyland

-5.5%

-5.0%

-4.2%

 Dekalb

-5.3%

-6.2%

-5.8%

 Golden Harvest

-7.9%

-1.0%

3.1%

 Kartenberg

-9.3%

-6.9%

-2.9%

 M/W Genetics

-10.4%

-9.3%

-8.2%

 Pioneer

0.0%

-2.0%

-3.0%

 Stine

-10.5%

-6.4%

-4.4%

 Terra

-6.5%

-9.6%

-12.0%

 

10社平均

 

 

-6.2%

 

-5.9%

-

4.8%

 

出典:ベンブルック・コンサルテイング・サービスの収集データ。「南部地域に於けるウィスコンシン

   大豆栽培試験(1998年)」の表6より。

 

 

 

 

 

 

5 会社別、成熟期別のRR大豆と在来種の最多収量の比較:ミネソタ州中部における

   1998年の栽培試験結果

 

 

会社名

 

品 種

 

成熟期

 

収 量

 

収量差:在来種に対するRR

 

エーカー当り

ブッシェル数

 

収量低下%

Croplan

 RR種

 在来種

 

RT1557

L1475

 

9/17

9/18

 

58

60

 

-2

 

-3.3%

Dairyland

 RR種

 在来種

 

DSR-152/RR

DSR-180/STS

 

9/20

9/20

 

61

69

 

-8

 

-11.6%

Kruger

 RR種

 在来種

 

K-14RR

K-1990

 

9/21

9/20

 

62

70

 

-8

 

-11.4%

 

KSC/Challenger

 RR種

 在来種

 

K-10RR

K-1414

 

9/15

9/17

 

57

69

 

-12

 

-17.4%

Mustang

 RR種

 在来種

 

M-111

M-1160

 

9/17

9/18

 

61

70

 

-9

 

-12.9%

 

Mustang

 RR種

 在来種

 

-144

-1167

 

9/20

9/19

 

63

66

 

-3

 

-4.5%

 

Pioneer

 RR種

 在来種

 

91B52

9163

 

9/18

9/18

 

59

63

 

-4

 

-6.3%

 

Prairie Brand

 RR種

 在来種

 

PB-1790RR

PBR-169+

 

9/21

9/21

 

63

73

 

-10

 

-13.7%

 

Ramy

 RR種

 在来種

 

1555RR

1525

 

9/19

9/19

 

55

61

 

-6

 

-9.8%

 

Sands

RR種

在来種

 

EXP 1557RR

EXP 1444

 

9/19

9/19

 

55

61

 

-6

 

-9.8%

 

Stine

RR種

在来種

 

1794

1680

 

9/21

9/21

 

57

73

 

-16

 

-21.9%

 

Terra

RR種

在来種

 

E1181RR

TS107

 

9/17

9/17

 

62

65

 

-3

 

-4.6%

 

Wensman

RR種

在来種

 

W2118RR

W3148

 

9/17

9/18

 

60

77

 

-17

 

 

-22.1%

 

Yield King

RR種

在来種

 

K-191RR

K-1943+

 

9/22

9/22

 

55

75

 

-20

 

-26.7%

 

 

               RR種平均

               在来種平均

 

59.3

68.6

 

-9.3

 

-13.1%

 各会社とも両種は成熟期の最も近いものを選択。出典:「Variety Traials Results」Crookston, Moorhead, Sheliy から

 ベンブルック・コンサルテイング・サービスが収集。http://www.extension.edu/Documents/D/C/Other

 

 

 

 

 

6-1 会社別、成熟期別のRR大豆と在来種の最多収量の比較:ミネソタ州南部に

       おける1998年の栽培試験結果

 

会社名

 

品 種

 

成熟期

 

収 量

 

収量差:在来種に対するRR

 

エーカー当り

ブッシェル数

 

収量低下%

Asgrow

 RR種

 在来種

 

AG2201

A1 923

 

9/19

9/18

 

64

59

 

5

 

8.5%

Asgrow

 RR種

 在来種

 

AG2301

A2247

 

9/21

9/21

 

60

66

 

-6

 

-9.1%

Dahlman

 RR種

 在来種

 

818RR

Russel

 

9/15

9/16

 

61

57

 

4

 

7.0%

 

Dairy Land

 RR種

 在来種

 

DSR-241/F

DSR-180/S

 

9/19

9/19

 

64

62

 

2

 

3.2%

Dekalb

 RR種

 在来種

 

CX191RR

CX205

 

9/20

9/20

 

65

68

 

-3

 

-4.4%

 

Dyna Gro

 RR種

 在来種

 

3173RR

3188

 

9/20

9/20

 

60

63

 

-3

 

-4.8%

 

Golden Harvest

 RR種

 在来種

 

165RR

H-1184

 

9/19

9/19

 

67

66

 

1

 

1.5%

 

Golden Harvest

 RR種

 在来種

 

H-1207RR

H-1214

 

9/21

9/21

 

60

63

 

-3

 

-4.8%

 

Great Lakes

 RR種

 在来種

 

GL2000RR

GL2451

 

9/24

9/24

 

64

65

 

-1

 

-1.5%

 

Kaltenberg

 RR種

 在来種

 

X160RR

KB221

 

9/20

9/20

 

63

64

 

-1

 

-1.6%

 

Kaltenberg

RR種

在来種

 

KB209RR

KB208

 

9/22

9/21

 

64

68

 

-4

 

5.9%

 

Kaltenberg

RR種

在来種

 

KB159RR

KB248

 

9/23

9/24

 

63

65

 

-2

 

-3.1%

 

Kruger

RR種

在来種

 

K-24APR

K-2242

 

9/20

9/20

 

65

64

 

1

 

1.6%

 

Kruger

RR種

在来種

 

K24RR

K-2303

 

9/21

9/21

 

65

65

 

0

 

 

0.0%

 

 

 

 

 

 

6-2 会社別、成熟期別のRR大豆と在来種の最多収量の比較:ミネソタ州南部に

       おける1998年の栽培試験結果 (続)

 

会社名

 

品 種

 

成熟期

 

収 量

 

収量差:在来種に対するRR

 

エーカー当り

ブッシェル数

 

収量低下%

KSC/Challenger

 RR種

 在来種

 

K-22RR

K-2125

 

9/19

9/20

 

62

69

 

-7

 

-10.1%

KSC/Challenger

 RR種

 在来種

 

K-191RR

K-2343

 

9/21

9/22

 

65

69

 

-4

 

-5.8%

Latham

 RR種

 在来種

 

406RR Brand

410 Brand

 

9/17

9/18

 

60

64

 

-4

 

-6.3%

 

Latham

 RR種

 在来種

 

EX-656RR

660 Brand

 

9/20

9/20

 

63

67

 

-4

 

-6.0

Latham

 RR種

 在来種

 

EX-426RR

621 Brand

 

9/23

9/22

 

65

67

 

-2

 

-3.0%

 

Mustang

 RR種

 在来種

 

M-208

E-201

 

9/20

9/19

 

59

62

 

-3

 

-4.8%

 

Mustang

 RR種

 在来種

 

M-202

M-2218

 

9/22

9/22

 

64

66

 

-2

 

-3.0%

 

Mycogen

 RR種

 在来種

 

5214

J-251

 

9/22

9/21

 

60

68

 

-8

 

-11.8%

 

Northstar

 RR種

 在来種

 

2023RR

2302

 

9/18

9/19

 

57

63

 

-6

 

-9.5%

 

PBR

 RR種

 在来種

 

PBR-1997RR

PBR-218

 

9/21

9/21

 

67

63

 

4

 

6.3%

 

PIoneer

RR種

在来種

 

92B05

9163

 

9/15

9/15

 

66

56

 

10

 

17.9%

 

Pioneer

RR種

在来種

 

92B21

92B23

 

9/19

9/19

 

65

64

 

1

 

1.6%

 

Prairie Brand

RR種

在来種

 

PB-2124R

PB-197

 

9/21

9/21

 

67

66

 

1

 

1.5%

 

Prairie Brand

RR種

在来種

 

PB-2090RR

PB-235

 

9/24

9/24

 

67

66

 

1

 

 

1.5%

 

 

 

 

 

 

6-3 会社別、成熟期別のRR大豆と在来種の最多収量の比較:ミネソタ州南部に

       おける1998年の栽培試験結果 (続)

 

会社名

 

品 種

 

成熟期

 

収 量

 

収量差:在来種に対するRR

 

エーカー当り

ブッシェル数

 

収量低下%

Profiseed

 RR種

 在来種

 

4201

2557

 

9/21

9/22

 

67

69

 

-2

 

-2.9%

Profiseed

 RR種

 在来種

 

4249

2413

 

9/24

9/24

 

57

67

 

-10

 

-14.9%

Ramy

 RR種

 在来種

 

1995RR

2195

 

9/20

9/21

 

60

66

 

-6

 

-9.1%

 

Ramy

 RR種

 在来種

 

2195RR

2198

 

9/22

9/22

 

63

72

 

-9

 

-12.5%

Ramy

 RR種

 在来種

 

2085RR

2550

 

9/23

9/23

 

65

66

 

-1

 

-1.5%

 

Renze

 RR種

 在来種

 

R1909R

R2098

 

9/20

9/20

 

64

66

 

-2

 

-3.0%

 

Renze

 RR種

 在来種

 

R2009R

R2097

 

9/23

9/22

 

65

65

 

0

 

0.0%

 

Sands

 RR種

 在来種

 

EXP 9619R

EXP 2027

 

9/21

9/20

 

67

61

 

6

 

9.8%

 

Sands

 RR種

 在来種

 

Sol 245RR

EXP 2435

 

9/23

9/24

 

63

71

 

-8

 

-11.3%

 

Sansgaard

 RR種

 在来種

 

S-2100RR

S-190X

 

9/18

9/18

 

61

67

 

-6

 

-9.0%

 

Sansgaard

RR種

在来種

 

S-245XRR

S-199X

 

9/20

9/20

 

62

61

 

1

 

1.6%

 

Sansgaard

RR種

在来種

 

S-233XRR

S-237X

 

9/23

9/22

 

62

72

 

-10

 

-13.9%

 

Stine

RR種

在来種

 

1991-4

1970

 

9/21

9/21

 

66

65

 

1

 

1.5%

 

Terra

RR種

在来種

 

E-1481RR

E1 58

 

9/16

9/16

 

60

64

 

-4

 

 

-6.3%

 

 

 

 

 

 

6-4 会社別、成熟期別のRR大豆と在来種の最多収量の比較:ミネソタ州南部に

       おける1998年の栽培試験結果 (続)

 

会社名

 

品 種

 

成熟期

 

収 量

 

収量差:在来種に対するRR

 

エーカー当り

ブッシェル数

 

収量低下%

Terra

 RR種

 在来種

 

E2081RR

TS194

 

9/20

9/19

 

60

66

 

-6

 

-9.1%

Thompson

 RR種

 在来種

 

T-3178RR

EX7217

 

9/15

9/16

 

58

60

 

-2

 

-3.3%

Thompson

 RR種

 在来種

 

T-3215RR

T-3222

 

9/21

9/21

 

66

68

 

-2

 

-2.9%

 

Thompson

 RR種

 在来種

 

T-3208RR

EX7705

 

9/23

9/24

 

63

65

 

-2

 

-3.1%

Wensman

 RR種

 在来種

 

W2178RR

W3148

 

9/16

9/15

 

63

63

 

0

 

0.0%

 

Wensman

 RR種

 在来種

 

W2198RR

W3207

 

9/21

9/21

 

65

71

 

-6

 

-8.5%

 

Yield King

 RR種

 在来種

 

K-19FRR

K-2323STS

 

9/20

9/21

 

65

59

 

6

 

10.2%

 

Yield King

 RR種

 在来種

 

K-20RR

K-2525A

 

9/23

9/22

 

64

70

 

-6

 

-8.6%

 

 

                RR種平均

                在来種平均

 

 

63.2

65.2

 

-2.0

 

-2.8%

 

各会社とも両種は成熟期の最も近いものを選択。

出典:「Variety Traials Results」Crookston, Moorhead, Sheliy からベンブルック・コンサルテイング・

サービスが収集。http://www.extension.edu/Documents/D/C/Other にアクセス可能。

 

 

 

 

 

 

7 1998年のRR大豆の収量低下による農場レベルの経済的損失:

          最多収量在来種に対する最多収量RR

 

 

種苗

会社数

平均収量低下

エーカー当り

ブッシェル

平均収量

低下%

収量低下

(ドル換算)

RRシステムによる追加コスト

(ドル)

総収入にしめる追加コストの割合

 

 

州の栽培試験比較結果

 

 

 

 

 

 

ミネソタ:中部

14

-9.3

-13.1%

48.75

56.75

15.8%

ミネソタ:南部

50

-2.0

-2.8%

10.61

18.61

5.4%

ウィスコンシン

:南部

 

10

 

-4.7

 

-4.7%

 

24.68

 

32.68

 

8.3%

 

 

 オプリンガーのデータの

     まとめ

 

 

 

 

 

 

イリノイ

-

0

0.0%

0.00

8.00

2.3%

アイオワ

-

-6

-9.1%

31.5

39.50

11.4%

ミシガン

-

-8

-10.3%

42.0

50.00

12.2%

ミネソタ

-

-5

-6.8%

26.25

34.25

8.8%

ネブラスカ

-

-6

-9.0%

31.50

39.50

11.4%

オハイオ

-

-4

-6.0%

21.00

29.00

8.0%

南ダコタ

-

-5

-9.0%

26.25

34.25

11.6%

ウィスコンシン

-

-3

-3.4%

15.75

23.75

5.2%

 

大豆価格を1ブッシェル当たり5.25ドル、RRシステムの開発費を平均8.00ドルと仮定

出典:州別栽培試験とOplingerら(1999)からベンブルック・コンサルテイング・サービスが集計

 

 

 

 

 

文献

 

Benbrook, C, 1999. World Food System Challenges and Opportunities: GMOs, Biodiversity, and

Lessons from Americas Heartland, Paper presented January 27, 1999 at the University of Illinois World Food Sustainable Agriculture Program. Accessible in Adobe Acrobat format on Ag BioTech InfoNet at http://www.biotech-info.net/costs.html#cost_returns.

Benbrook, C., Groth, E., Hansen, M., and S. Marquardt, 1996. Pest Management at the Crossroads,

Consumers Union, Yonkers, New York.

Drinkwater, L.E., Wagoner, P, and M. Sarrantino, 1998. Legume-based cropping systems have

reduced carbon and nitrogen losses, Nature, Vol. 396: 262-265.

Hager, A., and M. McGalmery, 1998. Corn Herbicide/Insecticide Interactions, Univeristy of illinois

Cooperative Extension. Accessible at

http://spectre.ag.uiuc.edu/cespubs/pest/articles/v983f.html.

Oplinger, E. S. Oplinger, Martinka, M.J., and K. A. Schmitz, 1999. Performance of Transgenic

Soybeans in the Northern U.S., Accessible in Adobe Acrobat format at

http://www.biotech-info.net/herbicide-tolerance.html#soy.

Owen, M., 1999. North American Developments in Herbicide Tolerant Crops, Paper presented at the

1997 British Crop Protection Conference, Brighton, England. Accessible

at http://www.weeds.iastate.edu/weednews/Brighton.htm.

Tilman, D., 1998. The greening of the green revolution, Nature, Vol. 396: 211-212.

Wyse, D, 1994. New Technologies and Approaches for Weed Management in Sustainable Agriculture

Systems, Weed Technology, Vol. 8: pages 403-407.

 

Soybean Yield Trial Data :

Minnesota: James H. Orf , Philip J. Schaus, Leland L Hardman, and Arthur S. Killam,

1998 Soybean Variety Trial Results, Minnesota Agricultural Experiment Station,.

Department of Agronomy and Plant Genetics, University of Minnesota, St. Paul, MN

55108. Accessible on the Internet at

http://www.extension.umn.edu/Documents/D/C/DC7349.html.

Wisconsin: Oplinger, E.S., Martinka, J.M., Schmitz, K.A., and C.R. Grau, 1999. 1998 Wisconsin

Soybean Variety Tests, Department of Agronomy, College of Agricultural and Life Sciecnes,

Univeristy of Wisconsin-Madison. Accessible in Adobe Acrobat format on the Internet at

< http://www.uwex.edu/ces/soybean/>.

 

 

 

訳者あとがき

 

Dr. Charles Benbrookは、以前アメリカ科学アカデミー農業委員会委員長をつとめた、アメリカ農業の病害虫専門家である。1980年代にアメリカで行われた食品の安全に関する、憲法のいわゆるデラニー修正条項作成の討論にも参加した。現在は、独立してアメリカ消費者連盟のアナリストとして活躍している。これまで、遺伝子組み換えは、従来の品種よりも病害虫に強く収量も良い、という宣伝が盛んに行われてきたが、ほとんどがメーカーサイドのデータであったり、科学的根拠に欠けるものが多かった。この「ベンブルック報告」はかつてない規模で、厳密に科学的に管理された条件下で、大学独自に行われた収量調査データを整理した、という点で画期的である。除草剤耐性遺伝子組み換えが様々な作物に適用されつつある現在、この冷静な、かつアメリカ農業の未来に懸念を抱く科学者の提言に、消費者ばかりでなく生産者にも是非耳を傾けて欲しいと思い、全訳した。  (河田昌東)

 

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