米国BSE:一次検査陽性第1号はシロと確認、だが第2号発見、擬似陽性はどれほど出るのか

農業情報研究所(WAPIC)

04.7.1

 米国農務省(USDA)が6月30日、25日にスクリーニング検査(一次検査)でBSE陽性の結果が出た牛について、最終確認のための免疫組織化学検査の結果は陰性であったと発表した(Statement By Deputy Administrator Dr. John Clifford For The Animal And Plant Health Inspection Service)。また、同日行われた電話会見で、スクリーニング検査で29日、新たな陽性牛が発見されたことも明らかにされた。会見に臨んだ動植物検疫局(APHIS)のジョン・クリフォード博士は、「スクリーニング検査の未確定の結果は、米国にもう一頭のBSEのケースを発見したことを意味しない。これは、最初の未確定だったケースが陰性と確認されたことで、既に例証されている」と強調した(Transcript of Remarks by Deputy Administrator Dr. John Clifford for the Animal Plant Health Inspection Service Technical Briefing - Washington D.C. - June 30, 2004)。APHISは、スクリーニング検査のために採用された簡易検査(ラピッド・テスト)は非常に敏感で、間違って陽性と出る場合が多いと最初から喧伝していた。しかし、これでは米国牛肉の輸入再開の道を探っている日本政府も含めた関係者や市場は混乱するばかりだ。一体どれほどの「擬似陽性」が出るのだろう。ある程度の見当はつかないものか。

 米国が使ったバイオラッド社検査(エライザ法)は日本で使っているものと同じである。日本では、今までのスクリーニング検査で陽性と出たのは120頭、そのうち確認検査で陽性と確認されたのは10分の1以下の9頭である。この例に従えば、スクリーニング検査で陽性とされる牛の大部分は、確認検査で陰性ということになる。APHISが言うように、ラピッド・テストで陽性と出たからといって、いちいち大騒ぎするなということになる。だが、検査のやり方やBSE発生状況は日米で異なるかもしれない。日本の数字を、そのまま当てはめるわけにはいかない。

 欧州委員会は03年、EUで使用されるBSE検査の評価に際して、バイオラッド法でどれほどの率の擬似陽性が出るのか計測した。だが、その結果は公表されていない。ただ、NewScientist.comが伝えるところによると、産業筋は、ドイツとべルギーで使用した実際の経験から、最初の1,000の検査で1つの擬似陽性が出ると見てきたという(Second US cow tests positive for BSE,NewScientist.com,6.28)。だが、EUや日本は、最初の検査で陽性と出た場合、もう一度検査を繰り返す。それでも陽性と出た場合に、初めて確認検査に送る。そうすると、擬似陽性の率は、およそ10万分の1に減るという。この場合、スクリーニング検査で陽性となったものは、ほとんどが確認検査でも陽性ということになる。だが、米国の検査が同様に行われているのかどうかは分からない。先の会見でも、最初の検査で陽性になったらすべて確認検査に送るのかという質問が出たが、クリフォード博士ははっきり答えなかった。多分そうなのだろう。とすれば、擬似陽性の率は非常に高くなるわけだ。

 NewScientist.comによると、さらに、バイオラッドのライバル社、エライザ検査を作るスイスのプリオニクス社の担当者は、実際のBSE発生率が擬似陽性発生率よりもずっと低い場合には、ラピッド・テストによる陽性の大部分は擬似陽性になると言っている。日本のスクリーニング検査で陽性となったものの10分の1しか陽性と確認されていないのは、これによって説明できる。だが、米国のBSE発生率がどの程度かはまったく分からないから、この考えを米国に適用するわけにもいかない。

 結局、米国当局者が期待するように、スクリーニング検査で陽性と出てもほとんどは陰性と確認されることになるのかどうか、今のところ判断の手立てはないということのようだ。しばらくは混乱が続くのを覚悟しなければならない。その上、スクリーニング検査の結果が出てから確認検査の結果が出るまでの時間がかかりすぎる。米国の検査体制は一体どうなっているのか、改めて疑念がわく。それでは検査の公正さ、厳正ささえ疑われる。会見では、牛肉業界とUSDAにはとかく「癒着」の噂がある、確認検査を、例えば昨年12月の最初のケースの場合のように英国に依頼するなど、外部機関で行うべきではないかという質問も出たが、クリフォード博士は言下に否定した。

 

 

 

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