バクテリアの遺伝子操作に、選択的遺伝子標的ベクターとしてグループUイントロンを使う
マイケル・カーバーグ、フアタオ・グオ、ジン・ゾン、ロバート・クーン、ジリ・ペルツカ、アラン・M・ロンボウィッツ
Nature(December 2001 Volume 19 Number 12 pp 1162
– 1167)
A・M・ロンボウィッツ lambowitz@mail.utexas.edu
訳 山田勝巳
移動性のグループUイントロン(訳注)は、事実上全てのDNA標的に挿入するようにことができるように標的を変更できる。この論文では、グループUイントロンを新たな標的に向けた場合、大腸菌やその他バクテリアに対し、染色体上の特定の遺伝子を0.1%&#8211:22%の高頻度で破壊できることを示す。 また、このイントロンは、標的染色体を破壊し、その後その染色体にホモのDNA断片を使って組み換えにより修復し、そこに突然変異を導入することを可能にする。 標的の宿主の範囲が広いため、可動グループUイントロンは、広範なバクテリアの遺伝子工学と機能ゲノム学に使うことが出来る。
訳注(河田):イントロンは真核生物の遺伝子にだけある特殊なDNA配列である。 アミノ酸配列を決めている遺伝子DNAの途中に割って入っており、DNAからmRNAに情報が読み取られるときにはその部分だけがバイパスして削除され、意味のある配列同士が連結される。一つの遺伝子に複数のイントロンがあれば、連結するDNAを変える事によって、複数の蛋白質を作ることが出来る。イントロンの意味は確認されていないが、少ない遺伝子で沢山の情報を作り出す工夫の一つと考えられている。例えば人間のゲノムには3万個の遺伝子しかないが、これから10万個の蛋白質を作っているのはイントロンの働きによると考えられている。
コラーゲンの遺伝子には50個ものイントロンが確認されている。ここで議論になっているグループIIイントロンは真核生物のミトコンドリアやクロロプラストの遺伝子に存在する。現在は、外来遺伝子の挿入場所があらかじめ決定できない遺伝子組換えが、この技術を使えば少なくとも細菌レベルではあらかじめ標的を定めることが出来るようになる可能性がある。