アジア諸国は植物資源を売り渡すのか
ニュース・レポート 2001年3月19日
山田勝巳 訳
アジアのNGOと農民団体連合(2)向けの最近出たレポート(1)の中で、巨大農業化学企業が圧倒的強さを誇る300億ドル種子業界が、アジアの農業研究を支配すべく、動き出していると報じている。この最近の調査で、アジア各国は種子の知的所有権法に関し多国籍企業を益する要項でUPOV(3)会議の線に沿った形で調整しようとしていることを示している。 企業は同時に別の法的手段を用いて彼らの知的所有権が農業生物多様性であるとして保護するよう主張をしている。
アジアの農家は自分の種は自分で採種してきた(4)。しかし多国籍企業は、一代交配と遺伝子操作の種で非常に儲けの大きい市場を狙って、割り込もうと必死である。
市場を占有するためにアジア政府に対してUPOV方式の品種保護法(TRIPと呼ぶ)を、WTOの知的所有権ルールの具体化という形で導入するようロビー活動を行っている。
「アジア諸国はTRIPSの独立条項を実現して、外国の私的投資を誘致しようとしている。これを使って国内の公的研究機関の研究開発を増強し、これら企業による独占体制から少しでも守れるのだということを農民に示そうとしている。 しかし、これは、裏切りだ。投資のために当てにしている金は、シンジェンタやモンサントのような数社のライフ・サイエンス企業が牛耳っているものだ。 UPOV方式の植物品種保護はこれらの企業が市場を分け合うための道具であって、決して研究を進めるためのものではない。」と報告書の研究者デブリン・クイェックはいう。
報告によると事実上全てのアジア諸国がこの独特な植物品種保護システムをWTOの指示に従って起草している。しかし、世界的な知的所有権ルールに沿うようにとの工業国の圧力で、大方のシステムはUPOVをモデルにしている。
例えば、欧州議会がこのほど承認したバングラディッシュへの援助パッケージの中では、2006年までにUPOVに加入するよう義務づけている。
「こんな事は言語道断だ。」バングラディッシュで農民の種子と生活を向上するために働いているNGO,URBINGのファハッド・マズハーは怒る。「UPOVをバングラディッシュに強制することは、ここの生物多様性を完全に抹消することだ。この法律で保護を受ける企業は食料を支配して、自ら育種して種を生産していた農民を更に、今まで以上に、社会から取り残すことになる。」
このレポートは、アジアでUPOV方式の植物品種保護法の制定を急ぐ背後にある大きな皮肉を浮き彫りにしている。企業が関心あるのは、植物に最大限の特許保護を与えることで、「アジア政府がPVPを施行することを受け入れたら最後、植物や動物の特許システムへの道を開く更なる近道になってしまう。それを握られたら、特許の前に立ちはだかる生物多様性に関わるモノや知識は何もなくなる。」とクイェクは話す。
注(1)知的所有権:アジアにおける究極の研究開発支配 3月21日 電子版はHTML とPDF で入手できます。http://www.grain.org/adhoc.htm
注(2)連絡先:BIOTHAI: biothai@pacific.net.th 又は、tel(66-2)952-73-71 KMP:kmp@quickweb.com.ph,
MASIPAG: masipag@mozcom.com, PAN Indonesia: biotani@rad.net.id,
UBINIG:ubinig@citecho.net, GRAIN:info@grain.org, Devlin Kuyek:intku@hotmail.com
注(3) 新品種保護同盟(Union for the Protection of New
Plant Varieties) ジュネーブの世界知的所有権機構に所属するUPOVは、主に工業国によって構成されており植物品種の特許権を付与している。
注(4)例えば、インドでは少なくとも60%、フィリピンでは80%以上の種子供給を農民が担っている。