遺伝子組換えいらないキャンペーン・ニュース56号原稿

 

安全審査のやり方に問題あり

遺伝子組換え情報室

河田昌東

2002219日、厚生労働省の食品衛生バイオテクノロジー部会は、モンサント社から出された追加報告書を審議し、すでに安全性審査を終了している2件の組換え体の安全性を再確認した。2件とはモンサント社の主力商品で、世界で最も沢山作られているラウンドアップ耐性大豆(40-3-2系統)と同じ除草剤耐性のトウモロコシ(NK603系統)である。大豆は1996年に食品と家畜飼料が認可され、トウモロコシは1999年にモンサント社から申請が出され、安全性審査が終り認可されている。

 

除草剤耐性大豆は96年認可当時には挿入DNAが正確に一コピーしかないと言いながら、20005月に新たに挿入遺伝子の断片が2個発見され、さらに昨年8月にはベルギーの農業研究所によって、更に別のDNA断片が発見され、組換え技術そのものの信頼性に疑問を持たれていた。そのたびにモンサント社は「挿入DNAに新たなリーデイングフレームはなく、新たなRNAも蛋白質も作られていない」と安全性を強調し、政府もそれを追認してきたいきさつがある。ところが、今回、モンサント社の追加資料では、「従来より感度の高い分析法を用いた結果、新たに2次転写物が確認された」という。2次転写物とは当初とは違ったmRNA(メッセンジャーRNA:DNAのコピーで直接アミノ酸配列の鋳型になるRNA)のことである。従来、モンサント社は挿入され機能している除草剤耐性遺伝子(CP4EPSPS)蛋白質のためのmRNAだけが作られ、その他のRNAは作られていないとし、それが安全性評価の1つのハードルだったはずである。 所が、今回新たに別のmRNAが作られている、という。詳細は不明だが、CP4EPSPS遺伝子の終止信号であるNOS3’配列を超えてもっと先まで転写が起こり、本来のものより長いmRNAが出来ているようだ。終止信号で止まらない転写を「リードスルー」という。リードスルーの先にあるのは前述のDNA断片である。この場所は、遺伝子を挿入する際に宿主大豆のDNAと外来DNAの間に複雑な組換えが起こり、全く新しいDNAの配列が出来ている。前述のベルギーの農業研究所の指摘はその存在であった。もし、この新たなmRNAが蛋白質を作れば、CP4EPSPS蛋白質と、この新たな配列を鋳型にした別の蛋白質が連結した長い「雑種蛋白質」が出来ることになる。この蛋白質は、既存のどの蛋白質とも違い、全く新しい安全性確認が必要となる。今回は、長いRNAはあったが、それから出来るはずの長い蛋白質は検出されなかった、という。「だから安全性は確認された」で果たして良いのだろうか。

 

はじめに不完全なデータで安全性審査を済ませ、何年も経ってから新たな事実が出た、として追加申請をする、こうした小出しの安全性審査には問題がある。そもそも、最初の安全性審査ではDNAが一コピーしか挿入されていないことが、安全の1つの証拠だったはずである。リードスルーmRNAの非存在も同様に安全性確認の根拠だった。このスタイルで行けば、危険な蛋白質が検出され、あるいは事故が起こって初めて「これは問題だ」とならざるを得ない。その時には、すでに世界中の何億人もの人間と家畜が膨大な量の除草剤耐性大豆を食べてしまった後である。

勿論、先端技術である限り、技術の進歩とともに安全性の確認も厳しくなるのは避けられない。しかし、この例で分るようにあらかじめ予想可能なことが後から確認される、ということは技術の未熟さを示すと同時に、安全性審査の体制に問題があることを意味するのではないだろうか。

 

同様の事実は、除草剤耐性トウモロコシNK603でも指摘され、やはり、NOS3’を超えた長いmRNAが検出されているが、それから出来る蛋白質が検出できなかった、として安全性を確認した。NK603の場合はさらに、当初の挿入DNAから予想されるCP4EPSPS蛋白質と比べて、214番目のアミノ酸がロイシンからプロリンに変わっていることが明らかになった。

これも、除草剤耐性蛋白質の機能に大きな影響を与えない、として問題にはしなかった。このアミノ酸の変化は、パーテイクル・ガン法で外来遺伝子を挿入する際に、DNAの配列が変化したことによるとしている。そもそも、導入によってアミノ酸の変化が起こる可能性は我々が当初から主張していたものである。尚、このアミノ酸の変化も実際にトウモロコシの中のCP4EPAPS蛋白質を分析したものではなく、DNAの塩基配列からの想像に過ぎない。こうした、後から次々に出てくる問題が、もし最初から出ていたら、安全審査が通ったかどうか。「新たな知見」といえば聞こえが良いが、企業データだけに頼る安全審査に問題があることを告白したようなものである。

 

この2件の審査で明らかになったのは遺伝子組換えで広く使われている遺伝子終止信号NOS3’の終止機能が不完全だと言うことである。NOS3’は現在ほとんどの組換え遺伝子で使われており、他の多くの組換え体でも同じ問題が起こっている可能性がある。組換え体によっては、2次転写物から未知の人工的な蛋白質が作られている可能性もある。問題が起こる前にNOS3’の利用中止が必要である。従って除草剤耐性トウモロコシNK603は認可すべきではない。

 

 

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