「有機農業推進協会会報第17号」より転載
2003年7月30日
遺伝子組み換え大豆の花粉が飛散する!緊急の行動を!!
魚住道郎
今年は全国で1か所、茨城県谷和原(やわら)村でモンサント杜の遺伝子組み換え大豆が、周囲への説明や、同意、報告もないままに作付けられていました。先般7月23日にこの作付けについて「遺伝子組み換えいらないキャンペーン」と「つくば環境と人権のための市民会議」の共催で全国集会が現地谷和原村公民館で開かれ、生産者、消費者、生協関係者など約200名の参加のもと、作付け畑の現地見学も行われました。
現地の大豆畑に到着して、皆一様に衝撃を受けました。周りの一般の畑と境界はなく、近くには普通の大豆畑もあります。すでに大豆はつぼみをもち、一部は開花状態でした。作付け者や関係者に即刻刈り取り処分を申し入れましたが、処分期限の7月25日になっても相手側は対応しませんでした。そこで再び26目の午前中に不織布のシートで覆うことを作付け者に申し入れ、同意を得られたものの強風で実行不可能。しかしこの間にも強風で花粉は周囲に飛散している状況でした。その後「遺伝子組み換え作物いらない! 茨城ネットワーク」で参加した人達が解散直後、組み換え大豆を土中に鋤き込む行動が一部の人達で実行されました。それは、花粉の飛散を一刻も早く止めなければならないという悲痛の決断であったと思います。
このことは一部マスコミにも取り上げられましたが、事実が正確に伝わっていないことや警察も動き出したこともあり、全国集会(次頁掲載)を持つことに至りました。大豆の花の花粉の飛散はGM作物による遺伝子汚染の始まりです。国内には各地で特産の大豆があり、かけがいのない先祖からの贈り物です。それらの種子に混入、汚染があればもう取り返すことは出来ません。モンサント杜の思うつぼです。このことは、シュマイザー氏の一件でも解るとおりです。(シュマイザー氏については、7月3目東京で行われた講演の記録要旨を下記に掲載します)
どうしてもGM作物の上陸、及び国内研究機関による作付けを阻止しなければなりません。梅雨明け前後で大変お忙しいこととは思いますが、現地にご参集下さい。
●組み換え遺伝子汚染についての緊急全国集会
8月3日(日)午後1時〜
主催 「遺伝子組み換え作物いらない!茨城ネットワーク」
連絡先 常総生活協同組合
tel:0297-48-4911 fax:0297-45-6675
場所 スターツ総合研修センター体育館
茨城県筑波郡谷和原村絹の台4−2−1 0297−52−5111
内容 @バイオ作物懇話会、農林水産省、日本モンサント、全農、他に出席要請して事後措置の確認など行う A今回の事態を教訓に、組み換え作物の国内栽培に対する国民的な議論と判断づくりに向けての討議 Bその他
パーシー・シュマイザー氏の講演要旨(於 東京 2003.7.3.)
私は1947年から農家を営み、カノーラ、オーツ麦、豆を作っている。また、50年来カノーラの自然育種を行い、地域に合う耐病種子の開発者として知られる。すでにGMOを導入したことでカナダ・米国で起こっていることを伝えたい。日本で作付けすれば同じことがおこる。1998年、モンサント杜は私に対してモ杜のGMカノーラを違法に入手し、ライセンスなしで栽培したと特許侵害で告訴をしかけてきた。私と妻は、50年以上かけて作った種子がモ杜のGMO種子で汚染されたのではないか、モ杜が賠償すべきだと、モンサントに立ち向かう決意をした。ところが、連邦裁判所の予審では、その畑にできた種子は、モ杜に所有権が移転すると述べ、この主張を認める判決が出された。上告したが、二審でもモ杜が勝訴。そこでまた最高裁に上告、2004年1月に法廷が開かれる。この裁定は、カナダ農民のみならず世界の農民に影響するだろう。特許法は世界申で適用されるからだ。
GM種子を購入した農家にはモ杜との契約書にサインが求められる。契約書は、農家の権利を剥奪する内容となっている。@自分の種子を使ってはならない、A毎年、モンサント杜から種子を購入すること、Bすべての化学肥料、農薬をモ杜から買わなければならない、C違反して、モ杜から受けたことをマスコミにも友人にも話してはいけない、D年間1ヘクタールあたり40ドルのライセンス料を払うこと、Eモンサント・ポリスが3年間畑に来ることを認め、F畑、倉庫、税金支払いの記録を見せなけれぱならない。
GM種子を使っていない農家にモ杜から賠償請求書がある日突然届く。「GM種子を育てている証拠を持っている。農地の大きさに応じて○○万ドル支払いなさい。そうしなければ訴訟を起こす。この手紙のことを誰にも言ってはいけない。」と書いてある。
「近隣農家がライセンスなしにGM生産しているようなら、モ杜に通報してください。通報したら皮ジャケットをプレゼントします」といったモ杜のパンフ・広告が撤かれている。通報を受けると2人のモンサント・ポリスがやって来る。農家は相互不信に陥り、コミュニティが崩壊してしまう、これが一番問題だ。これは、農家が怯えきってモ杜に反抗しないようにするためだ。多国籍企業は政府を超えて農民を支配する存在になる。
導入して2,3年後に起きたことは、@品質が悪い、A収量が、大豆では15%減、B農薬の使用が3倍に増え、スーパー雑草が現れた、C純粋な種子が汚染され、カナダにはGM汚染されていないものはなくなり、有機農家はもう大豆とカノーラは栽培できなくなった、D市場を失った。
北アメリカで農民に対してモ杜は、550件もの訴訟を起こしている。それらがこの一人の農民対巨大企業との闘いの判決を待っている。昨年12月、カナダ最高裁で高度生命体には特許は認められないという判決がでた。農民の所有権と大企業の知的所有権のどちらが上にあるかの裁定が下されるだろう。 (「食・農ネットニュース」より要約、文責・白根)