反GMイネ生産者ねっとNo.578

農業情報研究所HPより

 

1.04/06/17

  EU規制委員会、またもGMO承認に失敗

  モンサント社の油料種子ナタネ

2.04/06/22

  米国、ブルキナ・ファソGM作物売り込み

  西アフリカ会議

3.04/06/23

  バイオテクノロジー西アフリカ会合

  出席4元首はGMO利用に好意的だが慎重

 

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1.04/06/17 農業情報研究所

EU規制委員会、またもGMO承認に失敗

モンサント社の油料種子ナタネ

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EU各国の専門家で構成される規制委員会が16日、モンサント社の遺伝子組み換え(GM)食品−除草剤耐性油料種子ナタネ、GT73−の輸入の承認に失敗した。欧州委員会は、GMスウィートコーンの輸入・販売承認を自ら決定、GMO新規承認のモラトリアムを解除したばかりだが、またもや同様のプロセスを辿ることになると予想される。欧州委員会は、改めて承認案を決定機関である閣僚理事会に提出するが、スウィートコーンの場合と同様、3ヶ月以内に理事会が賛否どちらかを決定できなければ(否決されれば手続はそこで終わる)、再び欧州委員会の決定に委ねられる。

 

 今回の規制委員会には、5月1日に新たにEUに加盟した10ヵ国が初めて参加した。従って、これら諸国がどのような意志を示すか注目されたが、承認に賛成したのはチェコ、ラトビア、スロバキア、反対したのはキプロス、エストニア、ハンガ

リー、マルタ、リトアニア、ポーランドで、反対が多数となった。人口などに応じて票数を割り振られた各国の投票による特定多数決で決定されるが、承認賛成は上記3ヵ国とベルギー、フィンランド、フランス、オランダ、ポルトガル、スウェーデンで計43票、反対は上記6ヵ国にオーストリア、デンマーク、ギリシャ、イタリア、ルクセンブルグ、英国で計57票、棄権24票(ドイツ、アイルランド、スペイン、スロベニア)となり、承認も、否決も決定できなかった。

 

 スウィートコーン承認に反対したフランスが賛成にまわり、賛成した英国が反対にまわるという大きな変化があったが、これはそれぞれの国のリスク評価機関の意見を反映するものだ。

 

 「地球の友」によれば、公開されなかったモンサント社のラット飼育実験では、肝臓重量が15%増加していた。通常はGM推進派の英国の政府科学アドバイザ−は、ここに観察されたあり得る悪影響の満足な説明を要求した。また、モンサント社は、輸入されたこのナタネの種子が環境中に逃げ出し(例えば輸送中にこぼれて)、野生化する可能性に関して、いくつかの政府を満足させられなかった。英国当局は、適切なモニタリング計画と、これが起きた場合の緊急対応計画を作成するように、繰り返しモンサントに求めたという。

 

 これらの問題にモンサントが答えないかぎり、閣僚理事会も同様な結果になるだろう。

 

 

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2.04/06/22 農業情報研究所

米国、ブルキナ・ファソGM作物売り込みの西アフリカ会議

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 AFP等の報道によると、西アフリカ・ブルキナ・ファソで、米国政府の後援で、遺伝子組み換え(GM)種子を売り込むための3日間の会合が開かれる。地域の大部分の国は、なお人々の健康や環境へのあり得る影響を恐れているが、ブルキナ・ファソは昨年、一定地域でのGMワタ栽培栽培を許可、GM作物実験を受け入れた最初の国となった。

 

 同国の農業大臣・サリフ・ディアロは、「バイオテクノロジーの前進に加わらないのは記念碑的な間違いだ」、「世界の綿花市場の半分はGM綿花だ。アフリカは、手をこまねいて後塵を拝してはならない」と鼻息が荒い。

 

 会合には、西アフリカ経済共同体(ECOWAS)の15のすべての加盟国から、4人の国家元首を含む300人から400人の代表が招かれているという。情報ギャップを埋め、バイオテクノロジー、特にGM技術をめぐる「先入観」と闘うために、米国政府の要請基づき、ブルキナ・ファソ政府が会合を組織した。

 

 ブルキナ・ファソは、国の作物の半分を毎年破壊すると言われる綿実蛾幼虫を殺すモンサント社のBtワタの実験を受け入れた。大規模商用栽培を許可するかどうか決めるまでに数年かかると予想されるこの実験は、このGM種子が国の乾燥気候に耐えられるかどうかを確かめることを目的としている。農相は、年々の50万トンをはるかに超える200万トンを生産できるようになると言う。

 

 しかし、著名なGM農業反対運動家のファーザー・モーリス・ウデットは、ブルキナ・ファソ農民は、GM作物の栽培によって外部依存を一層強める一方、それによって得られる利益は不確実だ警告する。GM種子は非常に高価な上に、雨が降らなかったら農民はどうすることもできないというのである。

 

 また、グリーンピースの専門家・エリック・ゴールは、モンサントは一回限りで使用できる種子を販売する恐れがあり、現在農民が行っているような前年の生産から貯えられた種子を利用できず、毎年購入しなければならなくだろうと言う。

 

 それにしても、4倍にも増える生産をどこに売り捌くつもりなのか。ブルキナ・ファソの綿花は、国の所得の60%を稼ぎ出し、400万人の雇用を生み出す。だが、現在の生産でも世界市場における価格低迷から来る苦境に喘いでいる。米国の綿花補助金が世界価格を押し下げ、国の中枢産業を危機に陥れていると、その廃止と損害賠償を求めてカンクンWTO会合を抱懐に追いやった主役が、この国を含む西アフリカ4ヵ国であった。

 

 ブラジルのWTO提を受けたWTO紛争処理委員会は、輸出信用の補助金的要素も含む米国綿花補助金が世界市場価格を圧迫しており、WTO協定違反であるという裁定を下した。まだ当事国に伝えられたばかりで、裁定の詳しい内容は8月まで分からない。だが、米国は完全に合法とし、専ら法的問題が論議される上級委員会に上訴する構えを見せている。ディアロ農相は、「危険」は豊かな国が与える補助金だではなく、我々の生産量の低さにも結びついていると言うが、この状況で生産量を増やしても、「危険」は解消されるどころか、ますます高まる恐れさえある。

 

 そのなかでGM作物導入に走るブルキナ・ファソの行動は不可解というほかないし、それを売り込む米国政府やモンサントは、ブルキナ・ファソの将来などどうでもよく、自国・自社の利益しか考えていないというほかない。GM作物の導入など考える前に、解決しなければならない根本的問題がある。貧しい人々と環境をすべて踏み潰すアグリビジネスと米国政府の驀進をどう食い止めるのかということだ。

 

 

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3.04/06/23 農業情報研究所

バイオテクノロジー西アフリカ会合

出席4元首はGMO利用に好意的だが慎重

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遺伝子組み換え作物(GMO)を売り込もうとする米国の肝いりで開かれた西アフリカ会合で出席した4元首は、いずれもその利用に好意的だが、同時に非常に慎重な姿勢も見せた。

 

 AFP等の報道によると、マリのアマドゥ大統領は、農業の能力を増強し、アフリカの換金作物の競争力を高めるバイオテクノロジーに関連した「利点」を強調しながらも、「我々の義務はわが国民に食糧安全保障だけでなく、食品安全も提供することだ」と言明した。彼は、「我々は、革新に向けての跳躍を拒否してはならないが、依存の同義語であってはならないバイオテクノロジーで最も重要なことは、リスクを最小限にすることだ」と述べた。

 

 ニジェールのママドゥ大統領は、「バイオテクノロジーが農業に革命をもたらしてきたこと、アフリカ農業の能力を改善するために利用できることは確かだ」と認める。いかし、「革命的だが未だ十分に解っていないこの革新の環境的・経済的・社会的影響を完全に知るためには、(バイオテクノロジー)は仔細に研究されねばならないというのが基本と思われる」と言う。ニジェールは、ブルキナ・ファソで実施中のBtワタの実験の結果を注視しているという。

 

 ブルキナ・ファソのコンパオレ大統領は、「アフリカは人類の揺りかごだが、今日、人々の進歩と福祉を確保する不可欠な発見をなすという点で遅れをとっている」と強調、ガーナのクフォー大統領も、「わが政府はバイオテクノロジーに魅了されており、失うべき時間はない」と呼応した。彼は、過剰な農業開発のために国の「肥沃な土壌」が侵食され、薄くなるのを恐れている。

 

 だが、ブルキナ・ファソ大統領も、「農業における科学と技術の応用が生み出す希望は、恐怖と論争を伴っている」と認めた。彼は、が、「基礎食料の供給を確保するための努力において、バイオテクノロジーのアフリカでの利用は、バイオセキュリティーの完全な理解と手を携えて進まねばならない」と言明した。

 

 米国は、耕耘、播種、病害防除、干ばつ管理などのための新たな技術を展示、GMO推進に限られない技術移転や研究資金提供を約束した。だが、肝心のGMO売り込みに関しては完全に成功したとはいえないようだ。

 

 

 

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