反GMイネ生産者ねっとNo.534
農業情報研究所(WAPIC)
1.オーストラリア
カノーラ大規模実験承認
GM汚染の責任を誰が取るのか
2.地球の友とグリーンピース
EU諸国政府にGMライス輸入拒否を要請
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04/03/24 農業情報研究所
オーストラリア:カノーラ大規模実験承認へ
GM汚染の責任を誰が取るのか
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オーストラリア・ニュー・サウス・ウエールズ州(NSW)の遺伝子組み換え(GM)諮問委員会がGMカノーラの大規模栽培実験にゴーサインを出すという。モンサント、バイエル両者が申請しているオーストラリアでは最初のタイプのGMカノーラの実験で、栽培面積は3500haにもなる。
自然保護委員会を代表する委員の Jo Imming は、責任と汚染の問題への取り組みがないと怒り、この決定の裁決前に席を立った。彼女によると、近隣農場が汚染された場合の法的責任の問題を取り上げようとしたが、会合はこれについての議論を封じてしまった。委員の大多数は、「コモン・ロー」に従わねばならないと考えているという。
これを受け、NSWのマクドナルド農相は、議会で、農民が汚染の可能性に対する法的保護を与えられるまでは、NSWで一切のGM食用作物の栽培は認めないと語った。しかし、彼は、連邦政府とカナダ・米国・ニュージーランドの政府はコモン・ローで農民を十分に保護できると認めてきたと言い、政府あるいは開発企業が汚染が起きた場合の法的責任を負うのかどうかについて何も語らなかった。
「憂慮する農民ネットワーク」は、農民が責任を負わされないように保証すると言いながら、コモン・ローで責任問題を扱うと言う農相声明は矛盾していると言う批判を発した。生産者と購入者の契約協定の下では、「非GM」またが「GMフリー」の保証に誤りがあると公正取引法に基づいて証明された場合には、農民が責任を負うとされており、コモン・ローでは農民が責任を負うことになるからである。実験による汚染からくる生産者の損害の責任は、生産者自らが負わねばならないことになる。このような理不尽を避けるためには、GM農業と非GM農業の「共存」を確保する措置と汚染が生じた場合の責任を明確に定める特別法規が必要というのが Jo Imming やネットワークの主張である。
同じネットワークの「非GM農民」は次のように分析する。
完成品に含まれるGMDNAが1%未満ならば、この製品に非GMと表示することは許されている。だが、この表示のための基準と市場の現実は異なる。市場は、「非GM」または「GMフリー」の表示は、GM汚染がゼロである受け止めるのが現実であり、事実、有機市場のみならず、多くの購入者は、そのような非GM品を要求している。「非GM」に関する法的見解は、「公正取引法は、消費者製品に関連してなされる間違った、誤解を招く、虚偽の表示を禁止している。”non”の定義は”no”または”free-of”と類似だ」と言い、オーストラリア競争・消費者委員会も、「GMフリー」作物はGM作物のいかなる痕跡も含んではならないと言う。
にもかかわらず、遺伝子技術穀物委員会(GTGC)は、「カノーラ」を「承認されたGM事象(events)を含むかもしれないか、含まないかもしれない」、「非GMカノーラ」を「GMの偶然の存在は市場の基準以内」、「GMフリー・カノーラ」を「GMの偶然の存在が’ゼロ’の市場基準」と定義している。これは法的定義と市場の受止め方を完全に無視しているわけだ。
GTGCの定義による「カノーラ」、「非GMカノーラ」、「GMフリー・カノーラ」の「共存」措置(すなわちGMカノーラによる汚染を基準以内に抑える汚染防止措置)が取られたとしても、「偶然の汚染」(事故による汚染、技術的に不可避な汚染、汚染が起きると分かり・科学的の証明されており、十分な予防措置が取られていないならば偶然とはみなされない)が起きれば、非GM、GMフリー農家は損害をこうむり、「偶然の汚染」でないと立証しないかぎり、損害を自ら背負うことにならざるを得ない。それどころか、カナダのシュマイザー氏のように、バイテク企業の特許権侵害で、逆に訴えられる事態さえ生じかねないわけだ。
それにもかかわらず、特別立法でこの問題に取り組んでいるのは、主要国ではオーストリアとドイツだけだ。オーストリア法では、偶然の汚染に際してはGMO放出企業が健康・財産・環境のすべての損害に責任を負い、原状回復をせねばならず、十分な責任保険をかける義務も課される。ドイツ法は、バイテクで創出された生物の特性により引き起こされる財産または人間の健康への損害に責任を課す。
EUは、共存措置の一環として、各国に適切な国内法の検討を要請したばかり、米国、カナダ等は、上記のとおりだ。カルタヘナ議定書がこの問題で国際的基準を採択するのは当分先のことだろう。
それにしても、オーストラリアやEUが「共存」問題に取り組んでいるのは、日本や米国に比べればまだましだ。日本は、5%基準の表示規則を設けながら、そして多数のGM作物の一般圃場栽培を承認して何時でもそれが始められる状態にありながら、近隣作物の汚染を5%以下に抑えるための「共存」措置さえ設けていない。したがって、「責任」問題など意識にも昇らない。2月に農林水産省所管の独立行政法人のための「第1種使用規程承認組換え作物栽培実験指針」でようやく汚染防止措置が定められたが、責任問題は汚染など起こりえないと完全に無視された。しかし、汚染が100%起こらないというのは、科学的常識に反する。人間がすることには、常に過誤も伴う。米国でも多くの実験で、規制違反が発覚している。まして、この指針の対象とならない研究開発施設、一般栽培では何が起きるか分からない。この状態では、農家や消費者には実験も含めたGM作物栽培の全面禁止以外に選択肢がないではないか。この状態は、農業バイテクの唱導者にとっても決して望ましいものではないはずだ。
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04/03/25 農業情報研究所
地球の友とグリーンピース
EU諸国政府にGMライス輸入拒否を要請
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ドイツに本拠を置くバイエル社が除草剤耐性ライスのEUへの輸入許可を申請している。22日、地球の友・ヨーロッパとグリーンピースが、世界で最も重要な必需食料品が多国籍企業の支配下に落ちると、EU諸国政府にこの申請の拒否を要請する共同声明を出した。
以下はその全文を訳したものである。
EU各国は、3月28日・日曜日までに、会社自身の除草剤・グリフォシネート・アンモニウムに耐性を持つように組み換えられたGMライス(LL Rice
62)をEUに輸入するためのドイツに本拠を置くバイエル・クロップサイエンス社の申請に反対しなければならない。企業がヨーロッパでGMライスの認可をもとめたのはこれが初めてである。地球の友とグリーンピースは共に、このライスのEUによる承認は途上国に危険信号を送ることになり、世界で最も重要な必需食料品の一つの企業支配につながり得ると主張する。現在、25億の人々がコメを基本食料として生活している。
今日のブリュッセルでの記者会見では、国際的に著名な食糧安全保障の専門家であるインドのシャルマ氏が地球の友とグリーンピースに加わった。シャルマ氏は、コメ、アジアの基本食料は、着実にヨーロッパと米国に本拠を置く多国籍企業の支配下に置かれつつあり、これら企業は不公正な特許慣行と食料の遺伝子操作を利用していると指摘した。彼は、途上国におけるヨーロッパと米国の企業によるさらなる「白昼の遺伝資源略奪」の危険に警告した。
地球の友とグリーンピースは、世界の食料供給への脅威とともに、このコメに関して、いかなる長期的研究も深刻な健康影響の可能性を検討していないことを憂慮する。
バイエル社は、GMライスのアレルギー成分の量が増えることを観察したが、いかなる説明も提供されていないし、さらなる研究も行われなかった。04年1月28日にこのコメに関する肯定的リスク評価を与えた英国当局は、EUの外部でのこのコメの栽培の環境影響を考慮しなかった。バイエル社は、輸入米が撒き散らされる可能性やそれによる現在コメを栽培しているEU5ヵ国(イタリア、ギリシャ、スペイン、ポルトガル、フランス)へのあり得る影響に関するいかなる情報も提供していない。
グリーンピースの Eric Gall は、「GMライスはコメの生物多様性への、したがってアジアの無数の農民の生計への重大な脅威になる。ヨーロッパのコメ生産地域を汚染するリスクがあるだけでなく、その安全性をめぐる基本的問題が答えられていない。EU諸国には重大な責任があり、GMライス輸入許可を速やかに拒否すべきだ」と語った。
地球の友の Geert Ritsema は、「我々は人類の主要必需食料への企業の攻撃に直面している。ヨーロッパへのGMライスの輸入を許せば、多国籍企業が途上国においてこのコメの持続不能な栽培を促進することを許すことになる。世界の最も重要な必需食料がバイエルのような企業の手に落ちるのは危険であり、前例のない動きだ」と語った。
バイエル社のGMライスの食品安全性と環境リスクについての詳細な説明は、
http://www.foeeurope.org/press/2004/ricebriefingfinal2.pdf
で見ることができる。