GMイネ生産者ねっとNo.498

農業情報研究所(WAPIC)

 

1.04.1.13

  ドイツ、GM作物・食品承認へ

  政府与党が栽培・販売承認法案に合意

2.04.1.15

  世界のGM作物栽培

  7千万haに迫る

  03年の世界での栽培状況

3.04.1.16

  カナダ農業省

  モンサントとのGM小麦共同開発断念へ

  GM食品世界制覇の野望を挫く?

 

 

ドイツ、GM作物・食品承認へ、政府与党が栽培・販売承認法案に合意

 

ドイツ政府与党の社会民主党と緑の党が、遺伝子組み換え(GM)作物・食品のドイツにおける栽培と販売を許す法案の内容に合意した。法案は、GM作物の栽培を望む農民のためのフレームワークを確保するとともに、消費者が食品購入にあたって選択できるように保証するものである。法案は2月の閣議で承認される。

 

 法案はGM食品が明確に表示されるように義務付けている。しかし、組み換え成分が検出されない場合には、GM飼料で飼育された動物と同様、消費者はGM食品と知ることはできない。また、どんなGM作物が、どこで、どのような条件で―非GM作物を汚染の可能性から護るための障壁など―栽培できるかやルール違反の場合の補償も定める。

 

 緑の党のキュナースト農業・食糧相は、法案は、社会民主党の当初の意図に反し、バイオテクノロジーの促進を狙ったものではないと強調している。遺伝子操作は、消費者保護、倫理的価値、環境的側面に留意されるかぎりでのみ奨励されるという。彼女は、98年秋以来の新規承認の事実上のモラトリアムは、今夏のGMコーンの承認によって解除され、秋にはヨーロッパのスーパーの店頭に並ぶだろうと言う。新たなGM作物・承認の権限はEUにあり、EU各国にはない。このような状況下、緑の党は現実的な選択を行ったものと思われる。

 

 ただし、彼女自身は、GM食品は必ずしも必要がないと考えており、消費者の反発も依然として強いことから、ドイツのビジネスも販売には懐疑的という。承認により、農民が一気に栽培に走ることもなさそうだ。

 

 

世界のGM作物栽培、7千万haに迫る―03年の世界での栽培状況

 

農業バイテク企業を主要なスポンサーとする遺伝子組み換え(GM)作物普及国際団体・ISAAAが、2003年のGM作物の世界における栽培状況に関する報告を発表した。GM作物が栽培された総面積は前年によりも15%増加、6千770万haになったという。

 

 この面積には、2003年に初めて公認されたブラジルでのGM大豆300万haも含まれるが、実際にはこれを大きく上回る可能性もある(ISAAAの数字はGM種子の販売量に基づく推計で、実際の栽培面積に合致するものではない。ブラジルでの栽培はほとんどアルゼンチンからの密輸種子とその栽培により自家採取された種子によるものである)。事実上の新規栽培国はフィリピン(GMコーン)だけであるが、ブラジルもこれに加えた世界における公認栽培国は前年の16ヵ国から18ヵ国に増えたことになる。前年は16ヵ国の600万の農民が栽培したことになっていたが、2003年には18ヵ国の700万農民がGM作物を栽培したとされる。うち、途上国農民が85%を占める。

 

 02年には、米国・アルゼンチン・カナダ・中国の4ヵ国の栽培面積が99%以上を占めたが、03年はブラジル、南アフリカが栽培面積を大きく増やし、これと前記4ヵ国で99%以上を占めることになった。オーストラリア、インド、ルーマニア、ウルグアイで5万ha以上が栽培され、他の8ヵ国の栽培面積は5万ha以下と推計される。ヨーロッパに関しては、スペインにおける害虫抵抗性Btコーンの栽培が前年の2万5千haから32万haへと33%増加した。ルーマニアではGM大豆の面積が50%増加、7万haとなり、ブルガリアは数千haでの除草剤耐性トウモロコシ栽培、ドイツは小面積でのGMトウモロコシ栽培を継続した。

 

 ただし、主要作物は依然として大豆、トウモロコシ、ナタネ、ワタに限られている。最も栽培面積が大きいのは引き続きGM大豆で、前年より13%増加、4千140万haになった。世界の大豆栽培総面積の55%(前年は51%)を占める。GMトウモロコシは、二つの新品種の発売と新たな国におけるその栽培許可により、前年より25%増えた。その総面積は1千550万haで、トウモロコシ総栽培面積の11%になる。GMナタネ栽培面積は20%増加で360万ha(総面積の16%)、GMワタ栽培面積は6%増加、720万ha(21%)となった。

 

 主要6ヵ国のGM作物栽培面積とその対前年増加率、GM作物世界栽培面積に占める比率(シェア)は次のとおりである(ただし、ブラジルのシェアは世界のGM大豆総面積に対する比率)。 

 

         米国  アルゼンチン カナダ  ブラジル   中国   南ア

        ----------------------------------------------------------------

面積(百万ha) 42.8    13.9    4.4     3      2.8    0.4

----------------------------------------------------------------

増加率(%)   10     3      6       -      33     33

----------------------------------------------------------------

シェア(%)   63    21       6       4       4     1

 

 なお、中国での栽培はGMワタだけで、同国のワタ面積の58%を占める。オーストラリアのGM作物栽培面積は長期にわたる干ばつのために僅かに減少、10万haにGMワタが栽培された。インドはGMワタ(Bt)栽培が始まって2年目であるが、面積は倍増、10万haになったとされている。

 

 

カナダ農業省、モンサントとのGM小麦共同開発断念へ

GM食品世界制覇の野望を挫く?

 

12日のカナダ・Portage Daily Graphic に報道によると、カナダ農業省は生産物販売の見通しが見えないなか、モンサント社と連携して開発した遺伝子組み換え(GM)小麦(除草剤抵抗性ラウンドアップ・レディー小麦)に関する97年以来の長期プロジェクトを断念する。

 

 規制当局はなおリスクと便益の評価を続けるが、農業省は、このバイテク小麦の最初の株に対する科学的期待が実現しそうもないという判断を固めたらしい。農業省のジム・ボウル氏がこの作物にはこれ以上の投資はしない、もうモンサントとのラウンドアップ・レディー小麦の開発はしないと語った。また、この決定はカナダの小麦消費者がこれを受け入れるかどうかの懸念を反映するものなのかと問われ、「そうだ、私はそう思う」と答えた。ただ、モンサントとの決定的訣別ではなく、多年をかけて開発した遺伝物質へのモンサントのアクセスは認めるという。

 

 モンサント社のスポークスマンは、目的は達成されたし、さらに拡張する理由もないとして、この協同の停止の影響は小さいことを強調している。この小麦の商品化の希望は棄てていないが、カナダの小麦市場を混乱させるようなことはしないと言う。

 

 今まで、大規模に商品化されたGM作物は、主として飼料用の大豆・トウモロコシ、搾油用のナタネ、食用中心ではないワタに限られてきた。しかし、GM小麦が大規模に栽培されれば人間の基礎食糧がGM製品になり、その栽培面積も巨大であることから、その開発と承認はバイテク企業の農業・食糧支配が確立するかどうかの分かれ目となる重要な意味をもっていた。内外の消費者の抵抗は強く、大抵の除草剤では退治できない「スーパー雑草」の発達に対する懸念も強かった。カナダ主要生産地域の小麦の販売・貿易を一手に取り仕切るカナダ小麦ボードも、顧客はこれを望んでいないとし、昨年、モンサント社に承認申請を取り下げるように要求していた。

 

 収益を大幅に悪化させたモンサント社の生き残りをかけた商品であるから、商品化の望みは容易に棄てないだろう。だが、カナダ農業省の決定は(といっても正式決定となるかどうかはなお不明だが)、GM作物・食品の世界制覇がなるかどうかのカギは消費者が握っていることをはっきり見せつけたように見える。

 

 

 

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