反GMイネ生産者ねっとNo.457
03.10.22
農業情報研究所(WAPIC)
米国:モンサント等、繰り返されるGM作物実験規制違反監視強化へ
米国農務省の動植物健康検査局(APHIS)は17日、遺伝子組み換え(GM)作物の野外実験に関する規制を遵守させるための措置を拡充・強化すると発表すると同時に、1990年から2001年までの規制遵守状況に関する調査結果も発表した。
規制遵守状況に関する調査によると、1990年から2001年までに規制された7402のGM作物野外実験のうち、115が規制に違反していた。違反の率は2%と少ないが、バイテクの適用対象が増え、複雑化している現状を踏まえ、野外実験の監督・監視を一層強化する必要があると言う。APHISのバイテク規制課(BRS)は、バイテク企業や大学研究機関等の団体の規制遵守を確保するための完全な専用プログラムを策定する。プログラムを担当する新たな班の専門家は、あり得るすべての違反を完全に評価するための基準を使用することにする。これら専門家とAPHISの検査官は標的を定めて野外実験検査を実行する。実験作物の種類に応じ、APHISは、一栽培シーズンに最低5回は実験サイトの検査を行なうこととする。薬品生産用・工業品生産用GM作物に関しては、既に類似の検査強化が行なわれているが、その他の一般GM作物についてもそれに近い検査の強化が行なわれることになる。
APHISの発表し応じ、モンサント社も自社の規制遵守プログラムとその執行状況に関する報告を発表した。規制は極めて厳格に守られていると主張している。同社の1990年から2001年の間の違反件数は44件で、違反全体の40%と最大数の違反を犯しているが、その76%はモンサント社の監視が確認したもので、1万2000の実験サイトの0.4%で違反があったに過ぎないと、同社の規制遵守プログラムが順調に機能しているというのである。
しかし、罰金を課された重大違反も度重なっており、罰金累計は、1997年以来、6万9,550ドルになる(モンサント発表の数字から計算)。違反の結果が近隣植物の重大な遺伝子汚染が広がったり、食品汚染につながるのは防げたとAPHISも認めているが、少ない率とはいえ違反が続くことは、重大な結果につながる恐れがある。
APHISが列挙する重大違反事例のいくつかを次に示す。
●1995年:ハーベイ・キャンベル及び関連会社
環境放出の許可を取得せず、その申請もすることなく、カリフォルニアで除草剤耐性GMコットンを栽培。綿の移動の許可は取ったが、GM種子受取人の名前や住所は正確に伝えなかった。実験場周辺の40フィートの境界非GMコットンを収穫、動物飼料として使われる油として搾られた。APHIS検査官が現場を訪問、GMコットンすべてを破壊した。花粉交雑の結果、境界非GMコトンは多少のGM物質を含みえたが、油のGM蛋白質はゼロになったと考えられる。
500ドルの罰金。
●1998年:ハワイ大学
許可条件に反し、ウィルス抵抗性GMパパイヤ15本が実験圃場での栽培を許された。植えられてから3ヵ月から5ヵ月の段階でAPHISが知らされた。15本からの花粉が非GM種と交雑した可能性があった。監視官が調査のために現場に派遣され、最も近いパパイヤの木は4分の1マイル離れたところにあり、交雑を防ぐに適切な距離と判断した。15本は直ちに伐採、花粉を含むすべての部分は除去。
500ドルの罰金と書面警告。
●1998年:モンサント
APHISに無断で、プエル・トリコで3、イリノイで1のGM作物野外実験。害虫抵抗性作物、除草剤耐性作物が実験された。また、APHISに知らせることなく、規制GM物質を移動させた。すべてのGMコーン種子は貯蔵されるか、新たに許可を得て栽培。許可のない圃場のものは破壊。
2500ドルの罰金。
●2001年:モンサント
害虫抵抗性GMコーンの野外実験の翌年のコーン自生の監視を怠った。自生コーンの花粉が商用栽培区域に放散するのを放任した。コンサルタントや労働者が以前の実験サイトに栽培されたことをモンサントに知らせたが、モンサントは即時の行動、あるいはAPHISへの状況報告を怠った。前年の実験サイトのすべてのコーンを破壊。隔離距離内のすべてもコーンを買入れ、破壊した。
1万2500ドルの罰金。
●2001年:モンサント
コットンの境界植物帯が条件に従わず、小さすぎた。違反が発見されると、モンサントは直ちに破壊。2万5000ドルの罰金。テネシー大学等協力者も罰金支払い。
2002年には、薬用作物実験サイトに翌年自生したコーンから食用に供される大豆が汚染さえるプロディジーンの大事件も起きた。プロディジーンは25万ドルの罰金を払ったほか、汚染された50万ブッシェルの大豆の移動・破壊費用を払わねばならなかった。
これらは米国で発覚した違反事例の一部に過ぎない。世界には実験指針もない国も多いし、立派な実験指針はあっても監視体制などまったくできていない国もある。そこで何が起きているか、想像するのはたやすいことだ。モンサントのフィリピンでの無許可実験の例はずっと前だが触れておいた。米国の例は、開発企業や大学を全面的には信頼できないことの明証である。
詳しくは、WAPICのHPをごらんください。
http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/GMO/news/03102101.htm