2003年9月20日
農業情報研究所(WAPIC)
GM過剰依存による雑草の除草剤耐性発達に警告
栽培慣行変更を
米国ノース・ダコタのBismark Tribune紙の9月14日付の記事(Scientistsworry about weed resistance to herbiside)が、世界で最もポピュラーな除草剤・ラウンドアップ(一般名:グリフォサート)に抵抗性をもつ雑草の発達を恐れ、一部科学者が新たな栽培慣行を要請していると伝えている。この除草剤は、これに対する抵抗性を付与した遺伝子組み換え(GM)大豆・コーン・ワタなどとセットで販売されており、特に米国では、大豆の80%、ワタの30%がグリフォサート耐性GM品種となっている。このような作物の広大な拡散と常時栽培が、雑草との交雑を通じて除草剤の効かない雑草
を広めることが懸念されているわけだ。
グリフォサート耐性雑草発生の事例は、以前から世界各地で報告されている。米国では、2000年、デラウエア大学の研究者が、一部の大豆畑でスギナモ(mare's tail)がグリフォサート耐性になっていると報告、その後、インディアナ、ケンタッキー、メリーランド、ニュージャージー、オハイオ、アーカンサス、ミシシッピ、テネシーでも同様な例が報告されている。さらに、アイオワ、イリノイ、ミズーリでは、ベルベットリーフ(仙女の舞)やウォーターヘンプなどの繁茂の激しい雑草にもグリフォサートが効かなくなっていることが発見された。
この記事によると、ワシントン州立大学の環境毒性学者・アラン・フェルソットは、雑草は自然に除草剤耐性を発達させるもので、ラウンドアップ・レディー大豆からの抵抗性遺伝子が移ったという考えを否定している。これは当然あり得ることだ。同じ除草剤を長年使いつづければ、雑草は抵抗性を身につけるだろう。農薬の宿命だ。
しかし、一部科学者は、グリフォサートが将来にわたり除草剤としての有効性を保つために、栽培慣行を改めるように要請しているという。西オーストラリア大学の雑草抵抗性専門家のステフェン・パウルズは、ラウンドアップ・レディー大豆の栽培の削減を勧めている。デラウエア大学の雑草学者・マーク・ヴァンゲセルは、それほどではなくても、ラウンドアップ・レディー作物と通常作物の輪作を勧めているという。
モンサント社の大豆技術マネージャーのグレグ・エルモアは、こうした例は少数の例で、一般化はできないとしながらも、農民は雑草除去のための耕起に戻ったり、別の除草剤との併用を考えることも可能だと言う。シンジェンタ社はマーク・ヴァンゲセルの考えに同意している。シンジェンタのスポークスマンは、問題は現実のものとなり、大きくなっていると認め、「抗生物質同様、一つのタイプの解決策への過剰な依存は、この解決策を無効にすることがある」と語ったという。