反GMイネ生産者ねっとNo.444
2003年9月3日
農業情報研究所(WAPIC)
欧州委員会、北オーストリアのGMO禁止要請を拒否
欧州委員会は、9月2日、北オーストリア地域(州)で遺伝子組み換え体(GMOs)の使用を3年間禁止するというオーストリアからの要請を拒否する決定を行なった。北オーストリア政府のこの措置は、有機農業と伝統的農業を保護し、また動植物遺伝資源をGMOとの交雑から守るための手段として、この3月に通知されたものである。EU構成国がこのような例外措置を取ることは、新たな科学的証拠の発見や特定国の特殊な条件の存在などの厳格な条件の下で、欧州共同体(EC)条約第95条が認めている。北オーストリア政府は、GM農業生産方法と非GM農業生産方法の「共存」問題が完全には解決されていないことから、GM種子の一般的禁止が正当化されるとしていた。
欧州委員会は、欧州食品安全庁(EFSA)の意見を聴した後、欧州委員会は、オーストリア当局により提出された情報は環境保護に関する新たな科学的証拠を構成するものではなく、また北オーストリア地域に特別な問題の存在を立証していないと決定したものである。
この決定は、オーストリアが山岳地域との条件不利地域を多く抱え、農業の存続を有機農業に賭けてきただけに、オーストリアの農業振興政策の根本的変更を迫る恐れがある。7月23日に出された欧州委員会のGM作物と非GM作物・有機作物の共存の確保に関する指針は、共存は農場レベルで適用される管理措置と近隣農場間での緊密な協力で確保すべきものと勧告、他の手段では目標が達成できない場合には、小地域レベルでの措置も可能としていた。ただし、フィシュラー農業担当委員は、国・州といった広域なレベルでのGMO禁止は絶対に認められないと言明してきた。とはいえ、GM汚染を非GMとして認められる0.9%未満に抑えることは、作物によっては一定の経済コスト(空間的引き離しや開花期の調整のために必要になる)を払えば
可能である。しかし、花粉移動性が高いナタネのような作物では、このコストは禁止的な高さになる恐れがある。GM作物が大規模に、広範に栽培されるようになれば、GM汚染ゼロを確保する手段はなく、有機農業は、GMゼロの基準を維持するかぎり、存続不能となる。こうしたことは既存の研究で明らかにされている。
オーストリア農業は重大な試練に立たされることになる。欧州委員会は、GM作物導入を各国に迫る一方、EUレベルでの有機農業開発も重要課題に据えている。しかし、0.9%までの汚染を有機作物にも認めるとなれば、有機農業への消費者の信頼は揺らぎ、開発は大きく阻害されるだろう。
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