反GMイネ生産者ねっとNo.407

1.遺伝子組み換え食品 消費者6割『買わない』

  農水省ネット調査

2003年7月22日

中日新聞

2.南米の生産事情 広がる遺伝子組み換え大豆

  コスト削減狙い 単一化にも抵抗感

2003年7月21日

毎日新聞

  

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1.遺伝子組み換え食品 消費者6割『買わない』

農水省ネット調査

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収量を高めたり、害虫や農薬に強い性質を持たせるなど遺伝子を改変した作物を原料とする「遺伝子組み換え食品」について、消費者の6割以上が安全性に不安を感じ、購入を控えたいと考えていることがインターネットを使った農水省の調査で分かった。国内で食品として認可されている組み換え作物は大豆、トウモロコシ、ジャガイモ、菜種、綿、てん菜の6種類。加工食品も部分的に表示が義務付けられている

が、消費者の抵抗感の強さが浮かんだことで、さらに対応が迫られそうだ。

 

 調査は農林水産政策研究所の矢部光保環境評価研究室長が2−3月、インターネットプロバイダーの会員に5段階評価で回答してもらい、約600人から回収した。

 

 「組み換え作物の生産者は健康と環境に対する潜在的危険性を配慮してるか」との問いには約65%が「全く同意しない」「あまり同意しない」と否定的な回答だった。

 

 従来の食品と比べて組み換え食品が「かなり安い」場合でも約68%が購入を控える姿勢を見せた。「栄養価が高い」「低化学肥料、低農薬で生産」であっても約60%が購入に消極的で、敬遠傾向がはっきり出た。

 

 「もし組み換え食品に間違いが起これば、地球規模の惨事になる」というバイオハザードへの不安を持つ人は70%。「悪い影響が表れたとしても遠い将来のこと」という考えに否定的な回答も70%に迫った。

 

 現在、国内で組み換え作物の商業栽培は行われていないが、矢部室長は「安全性や環境保全面で、消費者の多様なニーズに合った政策が必要」と話している。

 

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2.南米の生産事情 広がる遺伝子組み換え大豆

コスト削減狙い 単一化にも抵抗感

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ブラジルとアルゼンチンを合わせた大豆の生産高は今年、トップの米国を初めて抜いた。ブラジルの増産に加え遺伝子組み換え(GM)の大豆を積極的に進めるアルゼンチンの急伸と、自家採取され周辺に散らばるGM大豆の種が、大きな原動力となった。農法のたやすさや増益から、インターネットのような勢いで広がる組み換え大豆の生産事情をのぞいた。

 

 南米の内陸国パラグアイの東部、日本移民が1960年代に開いたイグアス農場では、ブラジルの港への出荷を前に遺伝子組み換え大豆が仕分けられていた。パラグアイ政府は「GM大豆の試験的生産」を認めつつも、GM導入には踏み切っていない。だがイグアスの一部農家は昨年からGMの種子を植え始め、今年の出荷分のGM大豆は約3割に上った。

 

 周辺の農場の大半は90年代後半から不法にGMの生産を始めたが、イグアスでは「自然の大豆」へのこだわりがある。「GMの方が種は高いが農薬を使わない分、コストが減らせる。でも、先々を考えると自然の大豆も残したい」とパラグアイ日系農協中央相談役、久保田洋史さん(58)は言う。

 

 南米に広がるGM大豆は米国のバイオ企業、モンサント社が開発し96年に商品化されたラウンドアップ・レディーと呼ばれる品種だ。種子は同社の除草剤ラウンドアップに耐性がある。つまり除草剤を散布しても、枯れない抵抗力を備えており、季節、雑草や土の性質で農薬を使い分けていた従来の栽培に比べ、格段に作業が楽になる。それでも久保田さんが自然の大豆にこだわるのは「GMの場合、栽培が単純化し畑の面積が大きいものだけが勝ち残るという不安がある」からだ。

 

 イグアス農場は大雨時の土の流出に泣かされた80年代、「不耕起栽培」と呼ばれる、土を耕さず直接種をまく米国の農法を取り入れ、同国と周辺国に広めるパイオニア的な業績を残した。こまめに雑草を抜く農家の工夫や知恵が成功の一因だったが「GM大豆の場合、技術の格差が生じず農家個々に工夫の余地はない」という。

 

 地域特有の理由もある。手間のかかる雑草抜きがこれまで地元民に職を与えてきたが、GM大豆になれば「雇用は消え治安が悪化し、我々のような少数派は標的にされる」とイグアス農協の井上幸雄組合長(52)は心配顔だ。農場のあるイグアス市の人口は1万1000人。うち日系および日本人は900人。大豆栽培の成功で日系世帯の収入はパラグアイ人よりはるかに多く、従来の農法は「地元との共生」にも欠かせない。

 

 現在、イグアスの大豆の大半はサラダ油などに使われる油にするためブラジル経由で米国に出荷されている。久保田さんは今、自然の大豆を日本の豆腐業界に卸すことを模索している。「ただ豆腐や納豆など食用の場合、日本の製造元は国産や中国など特定の生産者に固執する傾向があり、油用と見られている南米産が好まれるかは疑問だ」(日本の政府系輸入関係者)との声もある。

 

管理甘い禁止国パラグアイ アルゼンチンは積極推進

 南米の弱点は仕分けや流通時の品質管理の甘さだ。パラグアイ農協連合のカルロス・ペゴラノ参事(42)は「禁止されているGM大豆が伸びえるのは、出荷時に自然の大豆とごちゃ混ぜになり、取引価格も同じためだ」という。

 

 米穀物大手、カーギル社の推定ではパラグアイのGM大豆の割合は5割に達している。ペゴラノ氏は「数年内に大半がGM大豆になるだろう」と予測する。

 

 国が禁じているGM大豆がなぜ広まるのか。少なくとも10品種の種子が隣国アルゼンチンから密輸されているためだ。自然大豆の種子は市場で1キロ25円相当だが、アルゼンチンからの密輸品で最も高いGM品種は5倍の125円相当もする。中には通常大豆と大差ないものもあるが、パラグアイでは値の高い品種ほどよく売れる。

 

 「気候の違いもありアルゼンチンほどの収穫増は望めない」とペゴラノ氏は言うが、米国の種子会社にロイヤルティーを払わないもぐり生産≠フため、収益は大きい。

 

 91年に遺伝子組み換え作物の安全性を評価する国家諮問委員会を発足させたアルゼンチンは、大豆1、トウモロコシ3、綿花2の計6品目の商業化を許可し、大豆のラウンドアップ・レディーは米国に1年遅れた97年、市場に出回った。

 

 「これほどの勢いで広がるとは思いもしなかった」と語るのは同国の農牧肥料衛生評議会のリカルド・ハラ理事(45)。農牧庁によると同国の大豆作付面積は、97年の約670万haから03年には1300万haへと倍増、00年にはGM大豆が90%に達し、現在は100%近い。

 

 アルゼンチンでGM大豆が伸びた要因はさまざまだ。ひとつにはメネム政権下(89〜99年)、欧米系企業に大半の国営企業を売却し「穀物の種子販売、流通の大半を米国系企業が握り、農牧庁との関係を密にしたのがおおきい」(農牧庁職員)。

 

 また、遺伝子組み換えに関する法令に環境小が関わらず、ほぼすべて農牧庁独自で作成されてきた。遺伝子組み換え大豆については先進国を中心に「土壌の生態系を破壊する」「人体への影響を否定できない」という声も強い。環境行政が関われば多少のブレーキがかかったかもしれない。

 

 米国に次ぐ世界第2の生産国ブラジルでは、アルゼンチンからの密輸種子の広がりから、GM大豆は推定10〜30%に上る。にもかかわらず、政府は許認可を保留しており、輸出相手の欧州の動きや左派出身のルラ大統領と環境保護団体とのつながりなど政治が絡むため、早期解禁の見通しは薄い。

 

 当初からGM大豆の問題に関わってきたハラ理事はこう語る。「私もできるなら無農薬野菜と非GM食品だけを食べたい。でもそんな余裕が無いのが第三世界の実情で、何事も消費者より生産者優先で決まる。農家に一番大事なのは安く多く作ること。それに合致したのがGM大豆だ。楽をしてもうけたいという国民性にも合っている」。

 

 経済低迷の津ずくアルゼンチンにとり、近未来の有望分野は農業と観光だけだ。輸入国の筆頭、中国がいつまで買い続けてくれるのか。そんな不安もあるが「売れるうちに突っ走るしかない」のが今の姿だ。

 

■欧米間では対立のテーマ

 米国席の企業がおもに開発を進める遺伝子組み換え(GM)作物の広がりは、欧米対立のひとつのテーマになっている。欧州連合(EU)は98年からGM作物の安全性審査を凍結し、事実上の輸入規制(通称モラトリアム)を続けている。スペインなど一部を除き加盟国でGM作物の試算は進んでおらず、認可されている大豆を始め輸入品には「遺伝子組み換え」などと商品にラベル表示することを義務づけ、表示は飼料用大豆にも課されるなど、より強化されつつある。

 

 米ブッシュ政権は今年5月、EUの規制で年間約3億ドルの損害があったと世界貿易機関(WTO)に提訴した。WTOの具体的な審理や決着の時期は未定で、勝者の対立はかなりの長期戦となりそうだ。

 

 EU内で影響力の強い環境保護団体などは商品の安全性とは別に、70年代からいち早くG開発に取り組んだ米系企業による「世界の穀物支配」といった論を展開している。

 

 

 

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