Btコーンの根の分泌液中に殺虫毒素が存在
Btコーンは、それを食べる鱗翅類昆虫を殺す細菌Bacillus thuringiensisが作る殺虫性毒素を発現するように遺伝子組換えしたトウモロコシである。この論文で我々は、Bt毒素がBtコーンの根の分泌液を通じて根の回りの土壌に放出されることを証明する。
粘土に結合した毒素は殺虫性能を維持し、土壌粒子に結合する事で微生物による分解から保護されている。昆虫の幼虫の殺虫性能で調べると、色々な土壌で少なくとも234日も活性を維持する。前駆体の形で分泌されるバクテリア毒素と違い、Btコーンは初めから活性毒素を作る構造遺伝子(切断された形のcry1Ab遺伝子:注参照)を持っている。
この芽生えは無菌的にプラスチックのメッシュ(6mm)上に置かれた。20日目に取り除いた。Btコーンと非Btコーンの双方の分泌物にはもっと小さな分子量の蛋白質が見られた。さらにこの毒素は、抗鱗翅類活性試験のモデル生物であるタバコhorn worm(Manduca sexta)の幼虫を使った殺虫バイオアッセイ法でも活性を持つことが確かめられた。
Btコーンの分泌物を含む培養液の上に置かれた幼虫は食餌を止め、2〜3日後から死亡し始めた。5日後の死亡率は90〜95%であった(幼虫の50%死亡率、LC50は蛋白質で5.2μg)。この上澄み液を免疫学的、及び殺虫バイオアッセイ法で分析したところ、Btコーンを植えた土壌サンプルの場合、25日以降でもこれらが陽性であった(100%死亡、LC50=1.6μg蛋白質/試験管当たり)が、非Bt コーンの土壌サンプルではネガテイブであることが見いだされた。
根圏土壌の中の蛋白質濃度は土壌1g当たり約95μgであったが、抽出緩衝液中の実際の毒素蛋白質の濃度は明らかに極めて低く、SDS電気泳動法では検出出来なかった。
この結果は毒素が速やかに表面活性のある土壌粒子に吸着し、土壌に結合した毒素も殺虫活性を保持し、この結合によって生物分解から保護されているという以前の知見とも一致している。
Btコーンの成育中に根から土壌中に放出されたBt毒素は、開花期の花粉から移行したり、また収穫後の植物残査の取り込みによる土壌中毒素に追加されるだろう。
我々はフィールドで実際に根からの分泌物中のBt毒素が土壌環境にどう影響を与えるかについてはわからない。根圏中のBt毒素は害虫対策に改善をもたらすかもしれないし、あるいは毒素に耐性をもつ標的昆虫をはびこらせるかもしれない。毒素の受容体は標的昆虫ばかりでなく非標的昆虫にも存在するので、非標的昆虫やより高等な栄養段階の生物もBt毒素の影響を受けるリスクもある。
Deepak Saxena(*), Saul Flores, G,Stotzky(※)
(*) Department of Microbial Ecology,New
York University(※) Instituto Venezolano de Investigaciones
Cientificas