反GMイネ生産者ねっとNo.378
1.遺伝子組み換えイネの野外試験
北上の岩手生物工学研究センター
03/06/15 岩手日日新聞より
2.組み換えイネ実験環境への影響低い
北上で回答説明会
03/06/15 岩手日報より
3.GMポテト給食で栄養不足
インド
03/06/16 農業情報研究所(WAPIC)HPより
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遺伝子組み換えイネの野外試験
「交雑の可能性ない」
北上の岩手生物工学研究センター
生産者に説明
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2003年6月15日
岩手日日新聞記事
岩手GMイネ監視ネットワーク 入江敦さんより
北上市成田の岩手生物工学研究センター(日向康吉所長)が開発に取り組む遺伝子組み換えイネの野外試験について、県と同センターに対し生産者らが要望していた説明会が14日、同センターで行われた。野外試験のため、同イネの花粉の飛散などを心配する生産者らに対し、同センターでは「フェンスで囲った隔離ほ場で一般水田とは十分距離があるほか、これまでに行われている実験の結果などから、交雑の可能性はないと考えている」とし、理解を求めた。
「基礎研究の段階」強調
同日の説明会は、「いわて遺伝子組換え稲監視ネットワーク」(入江敦事務局)が試験の概要などの説明を求めて提出していた質問状に応える形で開かれたもの。同センターでは4月20日に同試験に関する公開説明会を開催しているが、これを後日知ったコメ生産者らが同ネットワークを設立し、改めて試験に関する説明を求めていた。
説明会には県内外から生産者や消費者団体の会員、地域住民など約60人が出席。同センターの担当者らが、開発中の遺伝子組み換えイネ「sub(さぶ)29系統」の開発の経緯、野外で行う試験の概要や調査項目を説明した。
同センターによると、「sub29系統」は、低温などの際に発生する活性酸素を取り除くことができるGST遺伝子をイネから取り出し、ほかのイネに導入して作り出した冷害に強いイネ。野外試験は、人や動物が侵入しないようフェンスが囲った10アールの隔離ほ場内に設置した縦5メートル、横1メートルのコンクリート槽を利用しており、5月から16年11月までを実施期間としている。
同ネットワークの質問状に盛り込まれたのは、試験の方法、花粉の飛散による近隣ほ場への影響や安全性、万が一有害であることが判明した場合の対応、商品化した場合の生産者にとってのメリットなど18項目。これに対しては同センターと県生物工学研究所から文書による回答があり、これを補足する形で説明と質疑応答が行われた。
質疑では「屋外で試験をすることに危険はないのか」「必要な研究なのか」「数年の試験だけで安全といえるのか」などの質問と意見が出された。研究については、「本県は冷害常襲地帯。耐寒性に関するGST遺伝子を取り出すことができたことから、品種改良に向けてこの遺伝子の機能を解明している基礎的な研究の段階。今回の試験は屋外条件下での特性や環境への影響を確認するもので、安全と判断したため屋外試験へとなった。今回の結果を受けてさらに試験を重ねて安全性を確認していくことになる」とした。
また、イネ花粉の飛散距離については「10から20メートルの距離があれば交雑する可能性はない」とする過去の実験結果を引用。最も近い一般水田でも120メートルの距離があり、「sub29系統の花粉が交雑する可能性はないと確信している」と回答。「遺伝子組み換え作物には多くの種類がある。皆さんに内容を公表しながら研究を進めることで、安全性の確保につなげていきたい」と理解を求めた。 同センターでは今後も要望を受けて臨時、ほ場を公開するほか、9月に計画されている参観デーで公開する。
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組み換えイネ実験環境への影響低い
北上で回答説明会
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2003年6月15日
岩手日報新聞
岩手生物工学研究センター(日吉康吉所長)は14日、北上市成田の県生物工学研究所で行われている遺伝子組み換え(GM)イネ「Sub29系統」の屋外栽培実験について、市民団体から寄せられていた質問状への回答説明会を開いた。 説明会は同研究所で開かれ、県内外から農家や消費者など約60人が出席、センター職員らが説明した。県内のコメ生産者などで構成する「いわて遺伝子組換えイネ監視ネットワーク」(事務局 東和町、会員100人)が5月に提出した質問状に対するセンターの回答を基に質疑応答した。
参加者は、GMイネ花粉飛散による自然受粉など、周辺環境への影響に関し「開花期には台風も来る。強風で花粉が飛散する恐れがある」と質問。研究員は「強風湿潤では花粉の交雑力が極度に低下する」と理解を求めた。 同市民団体の事務局を務める入江敦さん(36)は「疑問や不安は尽きない。再度質問事項をまとめるつもりだ」としている。
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インド:GMポテト給食で栄養不足、実験承認にも不備
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2003年6月16日
農業情報研究所(WAPIC)
先日、インドが通常よりも蛋白質を多量に含むポテトを6ヵ月以内に承認するだろうとBBCが報じたことを伝えたが、これはシャルマを長とするバイオテクノロジー部(DBT)の独断的発表だったらしい。承認に当たる遺伝子操作承認委員会(GEAC)は、DBTまたはGNポテト開発者から大規模フィールド実験のいかなる許可申請も受け取っていないという。このことは、ヴァンダナ・シヴァ率いるニューデリーの科学・技術・エコロジー研究在団(RFSTE)が、栄養不良に脅かされている児童の栄養状態を大きく改善するためにこのポテトを学校給食に使うというDBT部長・シャルマの計画を厳しく批判したプレス・リリースのなかで明らかにしている。
GEACは昨年、インドで初めてのGM作物となるBtワタの商用栽培を承認したが、DBTはその前年、GEACの承認を得ることなくBtワタの大規模開放フィールド実験を認めている。このとき周辺作物・植物の遺伝子汚染が問題となったが、開発研究を率いるアシス・ダッタがリードする遺伝子操作審査委員会を通じて、DBTがまた同じ違反行為を繰り返す恐れがある。
ところで、RFSTEの前記のリリースは、GMポテトにその遺伝子を組み込まれたアマランスに比べて、GMポテトの鉄・カルシウムの含有量が著しく少ないことを示している。また、蛋白質含有量は、インド各地で栽培されている様々な豆類のほうが、GMポテトと同量の蛋白質を含むと想定されるアマランスよりも多いことも示している。このことから、リリースは、GMポテトを学校給食で使えば、児童の鉄・カルシウム不足が広がり、栄養状態はかえって悪化するだろうと警告している。アマランスの遺伝子を組み込んだポテトよりも、アマランスのような作物の栽培と利用を増やすほがずっと利口な選択だし、ともかくインドの豊かな生物多様性と料理からすれば、アマランスだけが蛋白源でもないと主張する。
リリースは、このような栄養面だけでなく、GMポテトがインド農民に与える深刻な影響にも注意を喚起している。インドでは、今年、数人のポテト栽培者が過剰生産と買い手がないために自殺している。農民は1キンタルのポテトの生産に255ルピーを支出するが、40ルピーでしか売れない。ヘクタール当たりの生産費は5万5千ルピーから6万5千ルピーで、そのうち4万ルピーが種子代であった。GMポテトの導入はインド農民にとっては大災厄であり、「生産コストの増加と脆弱な市場」のために一層の自殺につながる恐れがあると言う。
なお、ヒンドゥー紙は、このリリースについて触れた記事とは別のもう一つの記事で、GEACは13日、Rasi Seeds社のBtワタ品種・RCH-2の大規模フィールド実験をタミル・ナドゥ南部・中部の10万エーカーで承認したと報じている。他方、モンサント系のMahyco社は、既にこのGM品種の栽培実験をグジャラートで実施している。しかし、この実験用種子が不法に販売され、グジャラートの家内工業に転用されているという情報がある。GEACはこれに対して深刻な懸念を表明、既に違法行為の証拠をつかんでいるという。
GEACは、重要決定の透明性を増すために、承認の最終決定の前に最終ユーザーも含む関係者に意見の自由な表明を許す小委員会の立ち上げを決定し、また実験と検査のメカニズムを強化するための手段を提案する別の小委員会も作ったという。この記事は、GEACがGMポテト栽培実験の許可申請を受け取っていないと言っていることも確認した。