反GMイネ生産者ねっとNo.344
2003年5月24日
農業情報研究所
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フィリピン:Btコーン抗議ハンスト終結
米社農薬・種子の不買運動へ
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先月22日以来のBtコーン「モラトリアム」を要求するフィリピンのハンガーストライキは終結した。行動を停止したストライカーは、Btコーンが既に栽培されるにいたった以上は、政府の責任はモラトリアムを課すことだけでは済まない、植えられたコーンを除去する責任があると言う。ハンストが終わっても闘いは続くであろう。19日には、100人近い農民が農業省地方事務所でピケを張り、西ビサヤでのGMO禁止を要求、農民とNGOにBtコーンが作付けされた場所と地域の公表を求めた。地方事務所長は、Btコーンは地域の推奨作物に含まれていないと答えた。
闘いは、ある程度の成果をあげたようだ。20日、議会上院農業委員会委員長のマグサイサイが、Btコーン批判者にGM作物販売を許す大統領の決定を論駁する機会を与える意志があると表明した。そのために、来週、公聴会を予定しているという。ただ、彼自身にGM作物を止める意志はないようだ。彼によれば、政府は、既にグローバリゼーションの影響を緩和するために、新たなテクノロジーを利用する農業生産性強化に重点を置いている。2004年までには、WTOの下ですべての関税が排除されることになると言う。彼はGM技術による作物品質の改変にも期待している。
フィリピン大学の研究者は蛋白質含有量が多いピーナツを開発してきたし、彼自身が望むコレストロールが少ない卵など、フィリピンにはGM食品への強い需要があると言う。ハンガーストライカーが要求する食品中のGM成分確認の製造者への義務付けはコストが高すぎると退ける。彼は、上院議員が、その代わりに、有機市場を作り上げるための政府の資金供給・インフラストラクチャー・財源の強化を提案したと言う。その方が工場に表示を義務付けるよりも安上がりだというのである。
これでは批判者に対する答えにならない。23日には、持続可能な農業のための全国ネットワーク・Masipagが、ビザヤ地区(ネグロス、レイテなどを含む)の農民にモンサント社の除草剤や種子のボイコットを呼びかけた。ビサヤ全体で71千以上の農民の参加が予想されるという。彼らは、非Btコーンとの交雑で、どんな結果をもたらすかわからない遺伝子が拡散することを恐れている。また、自らのコントロール下にある在来種子を失い、巨大企業から種子を買わねばならなくなることも恐れている。
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欧州議会委員会
法的ルールでGMO・非GMOの共存確保を
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5月22日、欧州議会の環境委員会が食品及び飼料に含まれるGMOについての報告を賛成31、反対21で採択した。採択された報告の柱は次の点にある。
・理論的にはGMOが含まれないが偶然の汚染が起きるかもしれない事故あるいは技術的に不可避な汚染の限界を、欧州議会と規則を「共同」決定する閣僚理事会が採択した0.9%から0.5%に引き下げること。主要食品メーカーや小売業者は0.1%を目指しているが、欧州議会のEPP(ヨーロッパ人民党)−ED(ヨーロッパ民主党)グループと欧州委員会は、0.5%は遵守が不可能としている。7月の本会議でこれがすんなり通るとは予想されない。
・食品・飼料中の承認されていないGMOを、3年間、0.5%まで許すという閣僚理事会の立場を否認したこと。
・食品と農業におけるGM製品と非GM製品の「共存」を「法的」ルールによって確保すること。共存の問題は現在議論が進行中であり、5月26日−27日に開かれる農相理事会でも論議される。その際、欧州委員会は、4月24日に行なわれた共存に関する広範な関係者の会合の結果を報告するとともに、共存にかかわる”lignes
directrices”(指導指針)に関する通信の準備状況を報告する予定である。議会環境委員会は、今までのところ欧州委員会が共存確保のための自主的指針を示唆していることに対して、ヨーロッパでGMOの商業規模の栽培が許されるときにはそれでは不十分で、追加立法が必要だという立場を明らかにしたものである。
このように、環境委員会は、欧州委員会や閣僚理事会が提案したGMO規制を一層強化しようとしているわけであるが、委員会が同時に採択したGMOのトレーサビリティーに関する報告を提出したEPP−EDグループのアントニオ・トラカテリ議員は、昨年7月に欧州議会が新規則案を採択した際も僅差の票決であったこと、閣僚理事会が合意にいたる過程も困難を極めたこと、既に獲得した譲歩に鑑み、欧州議会議員が要求を和らげるように要請している。
7月に予定されている本会議で環境委員会案がそのまま通る保証はないが、採択されれば、4年以上に及び、米国が早期解除を求めてWTOに提訴したGMOの新たな承認の「モラトリアム」の解除の前提条件とされてきた新たなGMO表示・トレーサビリティー規則が成立することになる。たたし、その内容次第では、閣僚理事会との再調整が必要となるかもしれない。また、新規則の成立がただちに「モラトリアム」解除につながるかどうかも未だ不透明である。そのためには「共存」問題での妥協も必要と考えられるからである。恐らくは、GMOの賛成者にとっても、反対者にとっても、完全に満足できる結果を期待することはできないだろう。