反GMイネ生産者ねっとNo.327
生物特許について
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■時代の申し子ともいうべきか。生物にまで特許が
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生物科学技術が発達するにつれ、生物特許というのが浮上してきています。これは先立っては米国において、また日本でも認められている。遺伝子組み換えやクローンなどの技術研究の盛んな先進国では認める方向なのに対し、開発国や多くの市民団体などからは反対の表明がされています。
1998年、カナダのサスカチュワン州である事件が起こった。地元で50年来、在来のカノーラ菜種を栽培してきたパーシー・シュマイザー氏(当時68歳)が、身に覚えのない『生物特許』の侵害の罪で告発されてしまいました。原告は除草剤ラウンドアップ耐性(RR)菜種の特許の持ち主モンサント社。実はこれ以前にも米国で何例かの裁判があるとのことです。
モンサント社が(無断で)シュマイザー氏の畑からサンプリングした菜種の実から、RR遺伝子が高濃度で検出された。そしてそれは特許権の侵害にあたる、と。元来、シュマイザー氏の立場からしてみれば、GM汚染を受けたのはこちら側で、むしろ被害者であるはず。ただひとつ、シュマイザー氏の落ち度といえば、RRカノーラが移ったらしいことに気づいていながら、従来どおり、次作のために種採りをしたという事実だろう。ただし、ラウンドアップは使いませんでした。
RRカノーラを栽培する場合、農家とモンサント社との契約では、種子は必ず買わなければ栽培してはいけないということになっている。シュマイザー氏の例がそれに当たるということになるわけだ。
この話に納得がいかない点は、シュマイザー氏が裁判で敗訴してしまうことです。
■生物多様性条約とのかかわり
人の健康のための遺伝子組み換え食品の表示、安全性を問う目的としてコーデックス会議の『バイオテクノロジー特別部会』というのがありますが、それに対して、自然環境を守る目的で行われる『国際サミット』があります。このサミットは、二酸化炭素の排出を制限するための『京都議定書』と、人為的に操作された生物(LMO)の自然環境に対する影響を制限する目的として、生物多様性条約というのがあります。これは『カルタヘナ議定書』で明文化されていますが、このなかではGM作物などが輸出入されることで、不用意にも他の在来種や同種作物、自然界の植物などと交配することでおこってしまう汚染を防ぐ目的のものです。
とくに赤道周辺の国々には、多様性を持ったおびただしくたくさんの生物がいる。それらは地球の環境を維持する上で非常に重要で濃厚な自然が存在する場所。さらに動植物学に貴重であるばかりでなく、医学や生物科学のための知られざる材料の宝庫でもある。そういった場所に遺伝子操作をされた生物が放たれることの脅威から環境がまもられなければならない。というのが、生物多様性条約のカルタヘナ議定書というわけです。
この国際間の取り決めは、まだ発効していませんが、これが批准されなければ、生物特許の問題はここでも猛威を振るってしまう結果となってしまうでしょう。つまり、GM作物に付加された便利な機能のために、農家はその種子を買わざるをえなくなる。今までしてきた、今年の収穫から来年の種子を採るということもできなくなる。ましてや、交雑による影響で、長い歴史の間行ってきたその行為が、『生物特許』の侵害につながってしまうことになってしまう。その結果小さな農家は貧困にあえぐ結果に。
ヒトとイネにおいて、その遺伝子情報(ゲノム)は国際的に自由に使用できるよう守られているけれども、特定の品種、たとえばモンサント社のRRカノーラ菜種やRR大豆などのようなものでは、この生物特許が発効してしまうわけです。
■日本でも同じことが・・・
現在、日本ではGM作物の商業目的での栽培は行われてはいません。しかしながら、すでに食品としてみとめられているかぎり、それが可能なわけで、今後実現してしまう可能性もあるということを忘れてはいけません。
この狭い国土の日本で起こりうる事態というのは、米国やカナダで起こっているGM汚染とは比べものにならないほど深刻なものとなる可能性があるわけです。そのときになって、在来の作物が姿を消すような事態が起こりうるとしたなら、GM作物の国内栽培は決して許されることではないでしょう。
日本の農業を守る意味でも、これは非常に大きな問題として考えなくてはなりません。
【道 長】
道長のHPで関連の写真も掲載しています。ご覧ください。
(道長だよりの頁です)
http://www.bea.hi-ho.ne.jp/michinaga/