GMイネ生産者ねっとNo.317

 

2003年4月8日

農業情報研究所(WAPIC)

 

カナダ小麦ボード、GM小麦承認に「費用−便益分析」を要請

 

4月3日、カナダ議会下院の農業・農産食料委員会で、カナダ西部平原で生産される輸出用小麦・大麦の集荷・輸出を独占するカナダ小麦ボード(CWB)の理事会議長・ケン・リッターが、遺伝子組み換え(GM)小麦の承認手続に「費用−便益分析」を加えるように訴えた。

 

カナダの現在の承認手続では、食品及び飼料としての安全性、環境にとっての安全性が評価され、基準を満たせば承認される。この場合、モンサント社が申請したラウンドアップ・レディー小麦は来年春にも承認されると見られている。しかし、過去数年間、GM小麦とその規制のあり方に関する農業・産業・顧客間の論議を進めてきた小麦ボードは、この週の初め、カナダにおいて規制の欠陥があるという統一見解を述べた書簡を農相に送り、この書簡では、同時に欠陥を埋めるための規制変更の際に考慮されねばならない原則の概要も述べた。この書簡への署名者は、現在の規制システムが作物の食品・飼料・環境安全性を保証することを認めた。しかし、製品が開発される技術やプロセスのような他の要因に基づくこれら製品の消費者による拒絶から来る農民または顧客の利益は適切に保護していないということで一致したという。

 

リッターは、ボードが最近組織した除草剤耐性作物に関する農民と穀物産業の会議で花粉と遺伝子の移動や自生植物に関する現在の研究状況を聞いたが、そこで得られた情報は、農民がGM小麦の放出について抱く農学的懸念や輸出非GM小麦の純粋性の維持への挑戦に関連するから重要であると言う。この会議への参加者は、GM小麦の現在の市場の受け入れ状態について、カナダ農民のカナダ・ウエスタン・レッド春小麦市場の82%がGM小麦は買わないか、買うことができないと聞いたという。その結果、会議の主要結論は次のようなものになった。

 

1.ラウンドアップ・レディー小麦のような製品の放出の農学的帰結をよりよく理解するためにはさらなる研究が必要。

 

2.非GM小麦輸出船荷中のGM小麦の妥当な許容量が設定されねばならず、さもなければGM小麦は放出されるべきではない。1%の許容量は達成できないだろう。商用生産のための許容限度ははるかに高くする必要がある。多くの市場は許容限度を未だ定めておらず、定められた、あるいは議論されている限度は達成不能であろう。

 

3.この技術を採用する農民の行動は、採用しない農民に直接的な農学的かつ市場にかかわる影響を与える。これは花粉移動やGM、非GM小麦の意図的でない混合から生じるその他の機会の潜在的可能性に起因する。

 

また、会議に参加した多くの農民は、現在のカナダの規制システムのために、GM小麦の導入を阻止できる手段がないと感じたという。

 

リッターは、このような農民の不安を背景に、GM小麦承認には、食品安全性・飼料安全性・環境安全性の評価に加え、「費用−便益分析」が必要と述べる。彼は、さらに、農民と関係産業が合意したこのような規制変更の原則は次のようなものだと言う。

 

1.GM品種のあり得る登録はケース・バイ・ケースでなされるべきである。

 

2.費用−便益分析は可能な限り客観的で、量的なものでなければならない。

 

3.費用と便益は、小麦関連産業全体への潜在的影響、特に農民の所得への影響を評価すべきである。

 

4.プロセスには影響を受けるすべての関係者との協議が含まれねばならない。影響を受ける関係者はGM作物の放出または登録から直接の経済的リスクまたは利益を受ける者に限定される。

 

5.市場影響のテストは現在の安全性承認基準も、登録勧告委員会による現行評価基準も、変える必要はない。

 

6.市場影響テストを組み込むための既存規則への変更の程度は最小限であるべきである。

 

リッターは、最後に、小麦ボードは小麦に焦点を当てているが、費用−便益分析は、例えばカノーラのような他の商品でもプラスになろうと述べている。彼は、カナダ・カノーラ委員会の分析は、除草剤耐性カノーラは市場での損失以上の大きな農学的利益があること、農民は分離の費用を負う必要がなかったことを示したが、除草剤耐性小麦についての分析は非常に異なるものになろうと言う。

 

関連情報あり。詳しくはWAPIC、HPをごらんください。

  http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/

 

 

戻るTOPへ