GMイネ生産者ねっとNo.313

 

2003年3月31日

農業情報研究所

http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/

 

-------------------------------------------------------

GM作物栽培承認に向けてのドイツ・スペイン・英国の動き

-------------------------------------------------------

 

ドイツが遺伝子組み換え(GM)作物の商用栽培の承認に踏み切りそうである。

 

メディアが伝えるところによると、消費者保護・農業大臣のレナート・キュナーストは、3月2日、ドイツ政府は、今年、ドイツ市場へのGM製品の輸入に道を開く遺伝子技術に関する新法を実施すると発表した。彼女は、政府が5月の閣議で新法を承認、GMトウモロコシやGM種子が、数年のモラトリアムを終え、ドイツに再び輸入できるようにすると語ったという。新法は、欧州議会で最終的審議が行なわれているGM食品の輸入と表示に関するEU規則の発効を待って実施される。キュナーストは、GM種子の拡散がコントロール不能になるような最悪のシナリオに向けた厳重なドイツの規則を望んでいる。

 

消費者団体は、このような発表を今しなければならない理由はなく、誰の利益にもならないと批判するが、大臣は、現在、GM製品は、消費者に知られることなく、一定の生産過程で使用されており、将来はこうしたことがなくなると言う。環境意識が高く、GMOの倫理的意味合いを恐れるドイツ人の新たな遺伝子技術への抵抗は強いが、ドイツ政治家はバイオテクノロジーの巨大な潜在的経済利益に覚醒、1997年には欧州議会によるバイオテクノロジー特許法承認を支持した。欧州委員会は、EU構成国は、GM製品への抵抗により、バイオテクノロジーの国際レースで敗れると繰り返し警告してきた。ドイツには、バイテク研究に深くかかわる600ほどの企業がある。

 

 キュナーストも、GM作物は、既に世界で6千万ha作付けされており、うち半分以上が米国での作付けであると指摘、GM製品は「世界的現実」となったと強調した。彼女は、「このような事実を前に、我々はイエス−ノーの論議をしている場合ではない」、政府は慣行農業、エコロジカルな農業、GM作物の選択の自由と共存を求めると言う。消費者団体は、この突然の決定には、GM食品をめぐる米国とEUの紛争の急迫も影響したのではないかと見ている。

 

それにしても、2001年1月、狂牛病対策の過ちから辞任に追い込まれた消費者保護大臣と農業大臣のあとを継ぎ、10年で有機農業面積を20%にまで拡大すると宣言したキュナーストは、GM作物と慣行農業・有機農業との「共存」の問題をどう解決するつもりなのであろうか。この問題の解決策に関するEUレベルのコンセンサスは未だできていない。

 

EU規模のGM作物新規承認のモラトリアムの解除に向けての動きは、ドイツだけでなく、他のEU諸国でも強まっている。やはり今月初め、スペイン農業省は、耐虫性GMトウモロコシなど5種類のGM作物が近々承認されることになると発表している。

 

イギリス政府は、国内でのGM作物商用栽培の2004年承認を目指して行なってきたフィールド実験を昨年で終えたが、実験過程における不手際が次々と発覚、反対気運がますます高まるなかで、昨年7月には、商用栽培の是非をめぐる国民的規模の「パブリック・ディベート」を設定、承認はその結果を待って決めることとされた。しかし、この国民的論議は、現実には一向に広がってもいないし、深まってもいない。消費者・環境団体は、政府の結論は既に決まっており、政府設定の論議はこれを正当化するための口実を作るにすぎないのではないかと疑っている。環境担当相・ベケットはこれを否定しているが、3月初め、EUに栽培と輸入の申請が出ている18の作物については止めようがないことを認めたと報道された。3月17日付の「ガーディアン」紙への投稿で、ベケットは、GM問題の論議が終わる前にGM作物の商用栽培を許可するつもりがないばかりか、イギリスには、そうする権限はまったくないと弁明した。しかし、EUレベルでの承認過程におけるイギリスの役割をまったく放棄したこの弁明は、却って政府の約束への疑念を強める結果となっている。

 

なお、EUによれば、EU諸国で今までに商用栽培されたGM作物栽培面積は次のとおりである。

(単位:1000ha "Agriculture in the European Union - Statistical and economic

 information 2002",2003.3/13による)

 

       1998   1999   2000   2001

---------------------------------------------

スペイン   20    10    30    30

フランス    2     1     0     0

ポルトガル   1     1     0     0

 

 

2003年3月31日

農業情報研究所

 

----------------------------------------------

害虫を殺すGM作物は害虫の生長を速める?新研究

----------------------------------------------

 

イギリスの「インディペンデント」紙の報道によると、新たな研究が害虫を殺すための遺伝子組み換え(GM)作物が、実際には害虫の生長を助けるらしいことを明らかにした。この研究は、「ロンドンのインペリアル・カレッジとベネズエラ・カラカスのサイモン・ロドリゲス大学の科学者による」新たな研究としか伝えられておらず、今のところ発信源が確認できていないので、どこまで信頼できる情報なのか確かめる必要があるが、重大な内容なので一報する。

 

今までの研究でも、これら作物が害虫の毒物への抵抗性を発達させることが問題にされてきたが、新研究、今までまったく予期されなかったこれら作物の悪影響を発見したことになる。研究者は、抵抗性のコナガ幼虫−米国南部や熱帯地域でますます厄介になっている害虫−に普通のキャベツの葉とBt毒で処理されたキャベツの葉を食べさせたところ、処理された葉を食べた幼虫がはるかに速く(56%高い生長率)生長した。

 

幼虫はBt毒を「消化し、利用することができ」、それを「追加食糧」として利用している可能性があるという。また、毒の存在が、幼虫にとっての「植物栄養バランスを修正した可能性がある」という。

 

以上、詳しくは

http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/をごらんください。

 

 

 

戻るTOPへ