反GMイネ生産者ねっとNo.297
いずれも農業情報研究所(WAPIC)HPより
1.03.3.16(米国:農務省、GM小麦承認に厳格な条件)
2.03.3.18(インド:米国コーン食糧援助の拒否を最終的に決定)
3.03.3.18(ブラジル:GM作物を禁止、既不法栽培収穫の輸出は許可)
4.03.3.18(フィリピン:環境省予防原則を認め、GMコーンの環境影響研究へ)
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03.3.16 農業情報研究所(WAPIC)
1.米国:農務省、GM小麦承認に厳格な条件
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ワシントン・ポスト紙が伝えるところによると、米国農務省(USDA)は、15日、モンサント社が販売承認を求めている世界初の遺伝子組み換え(GM)小麦−ラウンドアップ・レディ小麦−について、外国市場が受け入れるまではそれを販売しないという同社の約束を遵守させるための厳格な条件を課す。
この小麦は米国とカナダで審査されており、2年以内に販売が承認されると見られている。しかし、批判者は、GM小麦に対する消費者の態度は非常に否定的で、もし販売されれば、国内・外国のバイヤーはすべての米国小麦を避けることになりそうだと言ってきた。モンサント社も、少なくともカナダと日本が受け入れるまでは販売しないと約束している。USDAはこの約束が遵守されるように、承認に際してはモンサント社が一定の要件を満たすように要求する。
現在、米国の小麦輸出業者は、米国ではGM小麦は販売されていないというUSDA承認の「ステートメント」を得て外国市場に販売している。ワシントン・ポスト紙によれば、USDAの連邦穀物検査局次長のデヴィッド・シップマンは、ステーツメントを継続発行するとすれば、それが正確であることを保証する必要があると言い、USDAは、モンサント社にGM小麦が販売されていないことを保証するための独立機関の検査に服するように要求する案を検討しているという。また、同社は、各販売年の前に、GM小麦を販売しないというステートメントに調印しなければならず、USDAがDNA検査を実施できるように情報を提供する必要もある。これらの提案を知った上で違反すれば、重い罰を受けることにもなるであろう。
米国のGM小麦販売については、先週(11日)、10万人の加入者をもつワシントンの消費者・環境NPO・食品安全センターに率いられた広範な環境・農業団体連合体が、USDAに対して連邦のモラトリアムを求める公式請願を行なっている。請願は、GM小麦が圃場で自然に他の小麦と交雑することになり、米国農民がEUその他の外国に輸出するのを不可能にすると述べていた。また、グルホサート(除草剤)耐性のモンサントの小麦は環境を害し、グリホサート耐性の「スーパー雑草」の出現にもつながると主張している。
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03.3.18 農業情報研究所(WAPIC)
2.インド:米国コーン食糧援助の拒否を最終的に決定
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3月6日、インドの遺伝子操作承認委員会(GEAC)は、4時間に及ぶマラソン会議の後、遺伝子組み換えコーン(スターリンク)を含んでいるのではないかと疑われる米国からのコーン・大豆ブレンド食糧援助の拒否を正式に決定した。インドのThe
Times of india(3/10)紙が報じている。
GEACは、コーン・大豆ブレンド品の各荷が人間による消費を禁じられているスターリンクを含まないという証明書を求めていたが、米国側は、米国では食品は安全と評価され、米国人は同じものを消費しており、証明書は遺伝子組み換え(GM)作物と非GM作物を区別しない国の政策に反するとして拒否した。GEACは、証明書がないために、昨年11月の輸入拒否の決定の変更の理由がないと裁決した。
この日、特に米国から日本への船荷にスターリンクが発見されたことから、深刻な懸念の声があがった。インド医療研究評議会(ICMR)の代表者は、特に食糧援助は既に脆弱になっている人々に配られることから、GMコーンを含むコーン・大豆ブレンドを長期にわたり摂食することの影響について警告した。また、援助配布後の監視のメカニズムがなく、実際に何が起きたか誰にも分からないことにも注意を発した。
会合では、米国のGM作物承認過程、人間または動物の消費用に承認された品種、食品安全評価の結果、受益組織の名称や健康モニタリングのための取極めなど、広範な問題が論議されたが、なおいくつかの問題が残った。
第一は、米国がGM作物と非GM作物の区別を考えていないことから、証明は問題外とされたことである。第二に、米国は、食糧援助の荷がGM成分を含むかどうか、自主的に情報を開示しないことが分かったことである。しかし、インドのルールは、輸入機関と輸出国にこれを申告するように要求している。第三に、今までのところではスターリンクは検出されておらず、存在する可能性は最小限であると保証されたとしても、コーンの退化した変種が検出されることなく荷に入り込む可能性を否定できないことである。
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03.3.18 農業情報研究所(WAPIC)
3.ブラジル:GM作物を禁止
既不法栽培収穫の輸出は許可
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3月6日の閣議終了後、ブラジルのルーラ・ダ・シルバ大統領が、ブラジルの遺伝子組み換え(GM)作物禁止を完全に執行すると発表した。新政府が発足した1月以来、政府はGM作物(大豆)の不法栽培を許してきたとカルドソ前政府を批判してきた。6日の決定はGM作物栽培の禁止とともに、不法栽培を許さない新政府の立場を確認したものである。
しかし、同時に既に違法に栽培した作物の収穫物の販売(輸出)は許可する決定も行なった。このような決定をせざるを得なかったのは、違法栽培が非常に多く、その販売を禁止することの社会経済的影響が甚大だからである。GM作物に反対してきた諸団体も、既に栽培された大豆の販売を許すというのは異常な決定だが、来季の作物が汚染されるのを防ぐとこの決定を歓迎している。政府は、GM大豆は、今年収穫される大豆4,900万トンの12%に相当する600万トンになると予想している。
ブラジルでは、GM作物禁止にもかかわらず、特に南部では、GM作物の便益を求める多くの農民がアルゼンチンからの密輸種子を使って、大量のGM大豆を栽培してきた。不法栽培である以上、その規模を正確に把握するのは困難であるが、最も信頼できるとされるウベルランジアに本拠を置く農業コンサルタント・Mpradoの推計は、GM大豆の栽培面積割合は、全土で15%から21%、南部では35%から47%に達しているとしていた。
今回の決定に対しても、不法栽培が最も広がっており、ブラジル第3の大豆生産州であるリオ・グランデ・ド・スール州の反発は強い。州農業連盟(FARSUL)会長は、販売が許されたとしても、農民は州の大豆への差別、あるいはGM大豆と非GM大豆の分別への動きを拒否すると言い、それはコストを上げ、利益を減らすと主張している。州農業大臣は、GM大豆自由栽培のための戦いを継続するといきまいている。政府は、決定を下したものの、今後、その実現のための厳しい具体的対応を迫られている。
ブラジルはGM作物の世界的普及をめぐる攻防の最前線と見られていたから、新政府の今回の決定に対する世界的反響も注目される。フランス農民同盟(CP)は、12日、早速、この決定を歓迎し、EUもこの道を進むことを約束せねばならないとする声明を発表した。CPは、同時に、GMOなしの原材料と食料品の消費者への供給を保証するために、ヨーロッパの農産物輸入業者に対して、この機会を速やかにとらえ、専らGMOを禁止した国で買い入れるように要求している。また、農民に対しては、家畜飼料の供給業者に圧力をかけて、ブラジルからの輸入品を要求するように要請している。このような動きは、ブラジル農民のGM作物禁止の遵守を支援するものとして注視する必要があろう。それは、決定を下したブラジル政府への支援ともなる。
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03.3.18 農業情報研究所(WAPIC)
4.フィリピン:環境省
予防原則を認め、GMコーンの環境影響研究へ
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フィリピン環境・資源省(DENR)は、モンサント社の商品名”YieldGard”なる害虫抵抗性GMコーンの拒否を要求するグリーンピースと「GMOに反対するネットワーク」(No GMO、12団体のグループ)のメンバーに、この作物の環境影響を独自に研究すると約束した。
農業省植物産業局は、この作物を既に承認しており、これはフィリピン初の商用栽培承認GM作物となっている。農民は数ヵ月以内に栽培を始めることになりそうである。しかし、環境グループは反対の戦いを継続してきた。
グループとの会合の席上、大臣は「一般的には」予防原則を支持すると語ったという。グループは、この原則に触れた大臣を称賛している。DENRが予防原則を支持したことは、GMOを他の自然の作物と同等とみなす政府他省庁の一般的立場とは対照的である。