反GMイネ生産者ねっとNo.291
第39回全国衛生化学技術協議会年会講演集より
(平成14年10月、山形県にて開催)
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組換え大豆混入試料から作製した加工食品の定量検査について
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○荒木理江 東京都立衛生研究所
門間公夫 東京都立衛生研究所
寺崎涼子 東京薬科大学
植田忠彦 東京都立衛生研究所
【目的】米国・カナダを中心に栽培された遺伝子組換え技術を応用た農作物が輸入され、それらを原材料とする加工食品が流通しているなか、遺伝子組み換え食品の表示制度が実施されている。
現在、遺伝子組換え農作物の定量法は厚生労働省の「組み換えDNA技術応用食品の検査方法について」により通知され、また同様な方法が農林水産省農林水産消費技術センターが作製したJAS分析試験ハンドブック「遺伝子組み換え食品検査・分析マニュアル」に示されている。これらの公定法では現在のところ大豆・トウモロコシを対象にしているが、加工食品にも適用できる定量法の確立が望まれている。しかしながら加工食品の定量法に関しては十分に険討されているとはいえない。そこで我々は加工食品にもそれらの定量法が適用できるか検討するために組み換え大豆が検知された試料を用いて木綿豆腐、絹ごし豆腐、おから、ゆぱ、厚揚げ、豆乳の計6品目を作成し、組換え大豆の混入率を測定した。また輸入大豆からの組み換え遺伝子の検知結果についてもあわせて報告する。
【方法】大豆加工品の作製には平成12年米国産の府分別大豆1検体および分別流通生産管理された大豆2検体を用いた。
各加工食品は以下のように作製した。試料を約500gとり一晩吸水きせたのち、家庭用ミキサーで2分間磨砕した。絹ごし豆腐用には吸水した量を含め、大豆に対して5倍量、木綿豆腐には9倍量の水を加えて薄めた。これを100℃で5分加熱し、布で漉しておからと豆乳を取り分けた。豆乳を75前後まで温め、凝固剤として硫酸ヵルシウムを混ぜてステンレス製容器に注入し、30分放置して絹ごし豆腐を作製した。木綿豆腐はにがりを用いて凝固させ、その凝固物を孔のある木箱に移し、重しをのせて15分圧搾した。作製した木綿豆腐の水をきり一部を用いて5分間素揚げして厚揚げにした。ゆばは、豆乳を80℃一前後に温めて表面に張った薄い膜をすくいとった。
DNAの抽出精製はJAS分析試験ハンドプックに記載されている方法に準じた。
組み換え遺伝子の定量は厚生労働省の通知に従い、TaqMan
Chemistryを利用した定量PCR法(※参照)により行った。定量装置はApplied Biosystems社のABIPRISM7700を使用した。
【結果及び考察】
1.輸入大豆からの組換え遺伝子の検知
平成12年に収穫された不分別大豆6検体(米国産2検体、産地不明4検体)および分別流通生産管理した大豆12検体(米国産大豆7検体、カナダ産大豆3検体、中国産大豆2検体)について、定性PCRを行った。不分別大豆はすべて陽性であり、分別流通生産管理した大豆のうち中国産は陰性であったが、米国産では3検体、カナダ産は2検体は陽性であった。判定が陽性にでた検体について定量したところ、不分別で輸入された大豆は49.8〜78.7%のGMO混入率であった。また分別流通生産管理した大豆でも0.10〜0.7%のGMO混入があったが、非意図的混入率の許容限度5%以下であり、適切に分別流通が行われている事がわかった。これらの結果を表に示す。
2.加工食品の定量結果
不分別大豆、及び分別流通生産管理された人大豆で組み換え遺伝子が検出されたものに対し、計6品目の加工食品を作製した。
まず豆腐、その他加工食品から抽出したDNAをPCR法で増幅し、電気泳動した。その結果、不分別大豆ほど明瞭ではないが、分別流通生産管理された大豆の加工食品も、すべて組換え遺伝子、Le1遣伝子ともに検知できた、次に公定法で示された定量法が適用できるか検討した。その結果、作製した6製品の定量値は元の大豆と比較してやや高い傾向があった。しかし誤差範囲を考慮すると、混入率の大きな変化はなく、今回の加工工程による製品間の差違は見られなかった。さらに検討する必要があるが、先に通知された定量法は、加工食品にも適用できる可能性が示された。
輸入大豆(平成12年度収穫)からの組換え遺伝子の検知結果
分類 生産国 運搬方法 定性結果 定量結果
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@ 米国 コンテナー袋詰 −
A 米国 本船、工場で袋詰 + 0.20%
B 米国 本船 + 0.25
C 米国 本船 + 0.76
分別流通 D 米国 コンテナーばら −
生産管理された E 米国 コンテナー袋詰 −
大豆 F 米国 コンテナーばら −
G カナダ 本船 −
H カナダ コンテナーばら +
<0.10
I カナダ コンテナーばら + 0.10
J 中国 本船 −
K 中国 コンテナー袋詰 −
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@ 米国 本船 + 49.8%
A 米国 本船 + 72.3
不分別 B 不明 本船ばら積み + 76.1
C 不明 本船ばら積み + 78.7
D 不明 本船ばら積み + 57.9
E 不明 本船ばら積み + 67.3
注:
以上で注目しなければならないのは、『分別流通生産』された大豆荷物(12件)のうち5件がGM陽性(+)。出荷国でみると、米国からのものは7件中3件、カナダ産では3件中2件が陽性となっている。
北米産の大豆では、分別されたものでも5割が遺伝子汚染されていたことになる。ただし、定量結果(混入率)が5%以内であるため、厚生労働省の定めた許容範囲以内(欧州連合の許容値は0.1%以下)であり、問題にはならないことになる。
さらに、『不分別』荷物では、その50〜80%が遺伝子組み換え大豆という数値がでている。これは、米国でのGM大豆の作付け割合とほぼ合致しており当然のこととはいえ、あらためて驚かされてしまう。
PCR(※)
PCR法とは、遺伝子検査をする場合、遺伝子であるDNAを人工的に増やす技術。遺伝子そのものは、極めて微細なものであり、これをそのまま定量する事は困難。このため、特殊な増幅技術により、短時間の内に目標とする遺伝子を数十・数百万倍に増幅し、検査ができるようにするというもの。