反GMイネ生産者ねっとNo.289
2003年3月8日
農業情報研究所(WAPIC)
米国:農務省、薬品等生産用GM作物の実験ルール厳格化を発表
3月6日、米国農務省(USDA)の動植物保健監視局(APHIS)が、医薬用または工業用物質を生産する遺伝子組み換え(GM)作物による食品汚染を防止するために、これら作物のフィールド実験に適用されるルールを厳格化すると発表した。
03年のフィールド実験に適用されるルールの02年に適用されたルールからの主要な変更点は次のようなものである。
■様々な規制と指定された許可条件の遵守を確保するために、実験サイト立ち入り検査の回数を増やす。すべての実験サイトが1回以上検分され、これらの検分は生産の臨界期に行なわれる。サンプル検査は、栽培期間中に5回行なわれ、また翌年の作物自生を評価する別の2回の検査も行なわれる。昨年は、栽培期間中、すべての実験サイトを少なくとも1回検査することが目標とされていた。
■自然受粉コーンにかかわる実験サイトから1マイル以内でコーンがまったく栽培されないことをこれらGMコーンに関する実験許可条件とする。昨年のルールでは、実験サイトから半マイル以内ではいかなる自然受粉コーンの栽培もしてはならないとされ、実験サイトから半マイル−1マイルのすべてのコーンの栽培は、薬品用GMコーン栽培期間から前後21日以上ずらさねばならないとされていた。
■実験サイトが受粉をコントロールされている場合(房の除去や袋がけにより)には、実験サイトから半マイル以内ですべてのコーンを栽培できる。周辺(半マイルから1マイルの間)のコーンの栽培は、実験栽培の前後28日以上ずらすことで隔離されねばならない。昨年のルールでは、4分の1マイル以内のすべてのコーンは21日以上ずらして栽培され、また袋がけするか、房を取り除かねばならないとされていた。また、4分の1マイルから10分の4マイルまでのコーンは実験サイトから時間的に隔離されねばならないとされていただけである。
■実験サイト及び周辺の栽培停止区域での次期シーズンの食用・資料用作物の生産を制限する。以前は、規制対象作物の実験サイトで同一の非GM作物が栽培されないように要求していた。
■栽培と収穫のために使用される機械設備も、実験期間中の設備や規制物品の収納施設も専用化する。以前は、すべての農場設備の適切な洗浄が実験サイトで行なわれ、また規制物品が、もし貯蔵される場合、施設から拡散しないように求めていた。
■施設の洗浄手続は、種子の移動のリスクを減らすために、APHISに提出され、承認されねばならない。種子の洗浄・乾燥手続についても同様である。以前は、各企業に対し、規制作物の生産方法の詳細を述べたプロトコルを要求していた。
■職員の許可条件実施・遵守を確保するための承認された訓練プログラムを義務づける。
■実験サイト周辺の生産停止区域の幅を25フィートから50フィートに増やす。
このような新たなルールの発表に対し、食品産業・消費者・環境団体すべてが、正しい方向への一歩ではあるが、これでは医薬用・工業用物質を含む作物が食品中に溢れ出ることを完全に防止するには不十分だと批判している。これら団体は、特に、農務省がこのような作物を栽培できる地方を制限していないことを非難し、あるいはそのような作物の栽培を通常は食用にされない植物だけに限るように要求している。
しかし、農務省は、非食用植物に限定しても、それが食用植物に混じる可能性があるのだから、汚染のリスクを完全に取り除くことにはならない、交じり合うのを防ぐための厳格な規制がベストだと言う。中西部のコーン・ベルトでこのような作物の禁止の要求については、農民が新たな高収益産業を渇望する中西部コーン・ベルトの政治家による強力な反対の圧力がかかったと見られている。これについても、農務省は、慣行作物との隔離距離の増加により、コーン・ベルトでこのような作物を栽培するのは実際的でなくなると見ているという。ワシントン・ポスト紙は、中西部農民は広い土地を1年間遊ばせるのはためらうであろうし、隔離距離の増加によってもあり得る汚染から生じる損失により、企業はこのようなGM作物栽培をコーンがほとんどないアリゾナやハワイに移すように駆り立てられるかもしれないと書いている。
いずれにせよ、とりわけ薬品生産作物による食品汚染はゼロに抑えられねばならないとすれば、今回のルールで十分かどうかは不確実である。農務省は、今年後半にはさらなるルールの厳格化を考えているというし、いくつかの団体は一層厳格な規制を求めて圧力をかけ続けると明言している。