反GMイネ生産者ねっとNo.265
2003年1月19日
日本農業新聞
1.米国、中国と農業技術協定
2.論説 「人間の進歩 課題多い先端技術の活用」
米国、中国と農業技術協定
米国はこのほど、中国と農業科学技術協力協定を結んだ。農業分野でのバイオテクノロジー(生物工学)や環境間題といった課題を中心に共同研究を進める。また、食品安全、乳製品加工、農産物加工、節水技術なども研究する。合同作業部会を作り、協定に基づいて研究促進や見直しをする。
米国農務省によると、これまで25年間にわたり中国とは農業科学技術問題で協力しており、米国の政府、大学、民間から1400人以上の科学者と職員が関与してきた経過があるという。
同時に、この協定は、農業科学技術面の相互協力という意味合いだけでなく、両国の貿易上のさまざまな問題を解決するためにも重要視されており、農業賢易関係の強化になると見込んでいる。(ジェトロ「フード&アグリカルチャー」から)
論説 人間の進歩
課題多い先端技術の活用
畜産の世界では、クローンの生産をはじめ雌雄の産み分け、20年以上も前の凍結精液による人工授精など先端技術の導入が進んでいる。人間も動物の一種だから当然、人間の生殖医療にも応用できる技術である。だが、産まれてきた子どもは、どう感じるだろうか。倫理の問題はあまりにも重い。人類が誕生して数百万年たつが、経験したことのない問題に人は今、直面している。
シベリアの永久凍土に埋もれている絶滅した巨象・マンモスをクローン技術で復元させようと、近畿大学とロシアの研究機関、岐阜県畜産研究所の三者が共同研究を進めている。同研究所は、独自に同県の有名な和牛種雄牛「安福」の凍結体細胞を使い、クローンで復活させる研究もしている。「安福」は1993年9月に死亡したが、理論上は、冷凍保存した肉片からでも体細胞クローン動物を作ることができるので、「安福」復活の可能性はある。クローン技術の可能性を確かめる研究として、共同研究の成果に注目したい。
ヨーロッパ・アルプスの氷河から、5000年前の新石器時代に遭難した男性の凍結遺体が1991年に発見された。彼は発見された場所がオーストリアのエッツ渓谷に近かったことから、「エッツィ」との愛称で呼ばれている。将来、クローン技術がさらに発達したら、マンモスや「安福」と同じようにエッツィも復元できるかもしれない。
もし、復元に成功したら、エッツィにぜひ聞いてみたいことがある。それは「人間の進歩」ということについてだ。エッツィの調査にあたったインスブルック大学のコンラート・シュピンドラー教授によると、エッツィには虫歯が一本もなかった。その代わり歯はひどくすり減っており、硬い乾燥肉を食べていたと考えられる。事実、彼と一緒に、周囲の肉がかじり取られたアイベックス(アルプス・ヤギ)の首の骨が発見されている。エッツィは西洋スモモの実や弓矢、それに鳥を捕まえるためと考えられる網も持っていた。
身長160cm、体重50Kg、推定年齢35〜40歳の彼は、体脂肪はとても少なかった。マントなど身につけていたものからは、麦類の穀物の殻も見つかっているので、穀物も食べていたとみられる。髪の毛の分析では、金属類の含有量が現代人と比べて、はるかに少なく、彼がきれいな空気と食料に恵まれていたことを示している。もし、彼が現代社会によみがえったら、今の私たちの食生活を、どんな風にとらえるだろうか。
正式に確認はされていないが、米国では、新興宗教団体が昨年末から今年始めにかけてクローンベビーの誕生に成功したと発表した。元ケンタッキー大学教授のパノス・ザポス氏も、クローン人間づくりに取り組んでいるという。人間の復元話は、現実に近付いてきた。
その先端技術をどう扱うのか、人類は判断を迫られている。5000年かけて人類は、どれだけ進歩してきたのか、エッツィは、さまざまなことを私たちに問いかけている。