反GMイネ生産者ネット#250
02/12/17
消費者リポートより
ヨハネスブルクサミットの結末
いのちの水を商品にさせない運動を!
三本裕子(A SEED JAPAN理事)
2002年9月、1992年に開催されたリオサミットから10年が経過し、ヨハネスブルクサミットが開催されました。会議の全日程が終了したとき、NGOはその結果を「Rio−(マイナス)10」と表わしました。
それは、リオサミットに比べてほとんど成果が上がらなかったと評価されているということです。リオサミットに比べ、熱気がなかったという感想を述べる参加者もいます。リオサミット当時はまだ環境開発問題についての熱気がありました。しかし、ヨハネスブルクサミットにその熱気は当初からありませんでした。
世界には環境条約が約400ありますが、発効されているのは数少ないのです。国連の調査によれば、絶対的貧困者は10年前から1億人減少しましたが、貧困の格差は7倍となりました。環境問題がこの10年間でどのような経緯を経たかがよくわかります。
世界のルールを決めるのは誰か
世界のルールは誰によって決められるのか?交渉の結果は明らかに「世界のお金(貿易・経済)の流れを決める機関は国連ではない」といった結果を市民に伝えました。その理由として、より強まった経済のグローバリゼーションがあげられます。
多国籍企業の企業活動は衰えをしらず、関税は下がり続けました。それを裏付けるのが、サミットでの貿易交渉です。サミットで最大の焦点となった貿易交渉は、アメリカ・日本・EUによるnon−paper(存在しないはずのペーパー)が議長に提出されるという、まさに現在の世界構造を明白にする形ではじまりました。
NGOの働きかけにより、最悪の状況を免れたという成果があったものの、結果的に今後の貿易・経済の方向性を決める重要な文言は、ほとんど「WTOのルールに則して」という表現になってしまいました。貿易の分野で市民が最も懸念していたのは、今まで国連で合意されてきた生物多様性条約や京都議定書などの環境条約が、WTOの貿易ルールよりも弱いものになってしまうことでした。そしてその危惧の通り、貿易ルールは市民のための結果とはなりませんでした。これは私たち市民にとっては悲劇的なことですが、今後10年間でWTOが決定する範囲はさらに拡大していくのではないでしょうか。
ヨハネスブルクサミットはたった2点の前進と多大な停滞を交渉で示し、終了しました。それは漁業と水の衛生です。そして03年3月に開催される「世界水フォーラム」を宣伝していました。世界水フォーラムとは、世界水委員会が運営する水に関する国際会議です。水と衛生に関する条項は、数少ない年限と具体的数値目標を表わしたものです。G8首脳会合によって採択されたミレニアム宣言をうけて「2010年までに安全な水にアクセスできない人口を半減する」という内容です。今後、この目標達成のために水道設備などがどのように整備されるかは重要な課題です。
多国籍企業が実権を握る世界水フォーラムにこの問題を任せておくことは、残された巨大市場「水」を多国籍企業に売り渡すことにつながっていくでしょう。
ヨハネスブルクサミットでは、市民の声は届きませんでした。そして今、WTO会議においても水に関して市民の声が届かない結果が予想されています。最低でも、第3回世界水フォーラムに市民による監視と、それによって基本的人権である「水」を恣意的な機関に任せることを許してはなりません。私たちには継続した働きかけが必要です。