反GMイネ生産者ネット#227
2002年11月21日
報告:『ストップ!遺伝子組み換えイネ全国集会Part2』と
257,730筆の署名提出
11/17(日)、ストップ!遺伝子組み換えイネ全国集会PART2(以後GMイネ全国集会)が名古屋市中区のナディアパークで開催されました。午前の部を『鉄腕ダッシュ』のプロデューサー、今村司氏の講演、『ラブ・アース・ネットワーク』の歌と演奏。午後をGMイネに関する基調講演、シンポジウム。その他関連団体による、出展などと多彩なプログラムが用意された。遠くは、秋田県大潟村より黒田 正、喜多さん夫妻(ライスロッジ大潟での安全な米の生産と出荷をしてみえる。奥様は大潟村の村長)も駆けつけてくださり、有意義な発言をしていただくことができました。
一日に及ぶプログラムではありましたが、大変な盛況ぶりで、GMイネに対しての意識の高さを痛感する全国集会でした。午後のシンポジウムでは500名ほどの聴衆で立ち席まで出るほど。
天笠啓介(市民バイテク情報室)、河田昌東(名古屋大学理学部)両氏の基調講演では、EU(欧州連合)でのGM事情(特に食品の表示について)、最新の遺伝子汚染について報告されました。GM作物が引き起こしている、相次ぐ汚染問題。それを食い止めようという、欧州での消費者運動とそれに影響され、立ち上げられつつある徹底した表示のシステム。これからの日本での消費者運動にも大いに参考になる内容となった。
東北でただ一人の女性村長、黒瀬喜多さんの頼もしくも力強い農へのエール、GMイネへの反対宣言。
黒瀬 正(ライスロッジ大潟)、松沢政満(愛知県新城市の有機農業家)、中村友美(民主党愛知県議会議員)、そして天笠、河田両氏を交えてのシンポジウムは、斎藤まこと氏(名古屋市議会議員・わっぱの会)の司会で進められた。
黒瀬氏は、GM技術や大量の化学物質を使わなくても大型稲作は十分可能であるし、今後の自然な姿である。 松沢氏は、農業は循環という自然界のサイクルを無視しては考えられない。 稲作の低コスト化のための『乾田直播農法』に照準を合わせての今回のGMイネ(祭り晴)だが、この農法による水田の砂漠化は水田農業にかかわるあらゆる生態系を根底から破壊してしまう。 また、県政にかかわる立場として中村氏は、議会でのGM食品・イネについての質疑の模様。そして、直接『食』にかかわる立場として、その安全性には気を配っている。 生産者とのネットワークに参加しているが、生産者と消費者の信頼関係が大切だとの発言。
前回7月の全国集会では、その大半が消費者により占められていたように思うが、今回PART2では生産者側からの発言が目立ったように思う。
関連団体による展示、試食、販売なども平行して行われ、来場者のGMについての疑問に答えてくれた。
総じて、予想以上の盛況ぶりで、全国の消費者、生産者、流通業者のGMイネに対する意識の高さを見せ付けるものとなった。さらに愛知県農試での研究をストップさせようというエネルギーも、十分すぎるほど感じられる全国集会であった。
ここで忘れてはならないのは、今回の研究に対する反対署名だ。前回の集会では323,100筆、そして今回はさらに257,730筆の署名が集められ、合計580,830筆ということになった。
11/18、署名の提出
翌日、愛知県農試で(先回は県庁であったが、なぜか今回はこちら)、29名の訪問団により署名提出が行われた。
席上には、県側から県農林水産部農業経営課・神田多喜男主幹と県農試企画情報部長・塩田悠賀里両氏が出席。訪問団からの質問があびせられた。質問の内容としては『研究がこのまま続くのか』『中止の予定はないのか』がメインとなった。それに対し、「今年の研究結果を見ないと判断はできない。さらにモンサント社とのかかわりもあるため、
最終的な結論は来年2か3月になろう」という回答。今年の一般ほ場での栽培試験については、なにも情報公開を得ていなかった。『これほど重要な実験について、情報公開がなされないのは問題だ。今後は十分気をつけてほしい。自らの研究について、その社会的責任を十分に考慮していただきたい』という申し入れもされた。さらに各自治体に対し、全国的に@学校給食で遺伝子組み換えの米を使用しない、A食品や飼料として遺伝子組み換えイネを承認しないよう、そしてB全遺伝子組み換え食品に表示を義務化するよう国に対して意見書提出の要請をしている(すでに250の自治体に)。
ここまで広がった運動のすそ野
今まで、「食の安全は自ら守る」とその運動を展開してきたのは消費者であった。GM食品の安全性に対する不安、コーンや大豆のGM汚染が食品の流通という場面で起こっていたのに対し、愛知県農業総合試験場とモンサント社の共同研究に見られるような、その作付け、栽培による日本国内での自然環境に影響を与えるかもしれないという大きな問題が現れた。このような研究を見逃せば、取り返しのつかない事態を招きかねない。
純粋に、『乾田直播』農法のための切り札としてのGMイネというのが、県農試の目論見であったのかもしれないが、これがバイテク企業モンサントにとってはGM米の市場独占、さらにはアジア全体を照準にした種子支配というまったく時限の異なったもくろみである点について留意しておきたい。 今やモンサント社は、大豆で、綿、菜種で種子支配を確立しようとしている。さらにその支配域を世界の二つの主食である、『米』と『小麦』へと広げようという段階にまでこまを進めようとしている。
米国では『小麦』が食品として認可されるかもしれないという、緊迫した状況にまで達しているそうだ。それを躊躇するのは消費者ばかりでなく、むしろ生産者そしてその両者をつなぐ農協側であることに注目しておきたい。すでにコーンと大豆で現実のものとなっているGM汚染が『交雑』により、『分別の不備』により、常識のものとなってしまっている現実は見逃せない。もし『米』と『麦』がGM化されれば、これと同じ汚染が、世界の重要な主食に起こってしまうことになる。これは大豆やコーンなどといった規模とはかけ離れているところが恐ろしい。とりもなおさず、これは地球規模での環境汚染ともなりかねないのだから。
今や、すでに認証されているGMについての安全性も大きく揺らいでいる。すでに環境ホルモンによる、半ば取り返しのつきにくい環境汚染が問題となっている。このうえさらに、GM汚染という今度は、自ら増殖することのできる生命体としてこの汚染が起こるとすれば、さらに深刻な危機となってしまいかねない。
遺伝子組み換えイネ、食品はいらないという意思表明が、つまるところ、地球的な規模での問題にかかわっているということにも、深く認識しておかなくてはならないと思う。