雑種ナタネの栽培レポート


雑種ナタネと思われる個体から採れた種子を栽培してみました
2015/07/16〜2016/04/30

@D3東Z(RR+)

AE1東Z(RR+)

左の画像@Aは、2015年5月に行った第17回GMナタネ抜取隊で採取された雑種と見られる2個体です。

左が『D3東Z』、右が『E1東Z』(東は国道23号線の東側、Zは雑種の意)で、いずれも簡易検査ではRR(ラウンドアップ耐性)陽性でした。

それぞれ、セイヨウナタネと比べ、枝が多く、さらに垂直方向にのびる。鞘に種子がほとんど実っていません。

D3東Z、E1東Zそれぞれの種子を植木鉢にまき、育ててみました。播種は 2015/07/16 でした。


BD3s、E1sのいずれも発芽率100%(15/7/21)

CD3s、E1s、いずれもセイヨウナタネの特徴(16/03/19)
左の画像は、B播種まもなくで出芽時(15/07/21)とC8ヶ月後の生育状態(16/03/19)。この段階では、D3s、E1s(それぞれD3東ZとE1東Zと区別するためのナンバリングとする)いずれもセイヨウナタネの形状を示している。

15/07/16に播種したこの2個体は、酷暑の夏を越し、秋に開花することなく越冬し、春に開花結実という、通常では考えられないサイクルでの生育となっています。

これら2個体D3s、E1sのGM簡易検査を行ったところ、いずれも陰性の結果が得られました。

3/19の画像Cでは開花のみで、種鞘は作られていません。

D16/4/14 撮影。D3sに雑種の特徴が現れた。1本だったはずの幹が枝を増やしている

E開花後はD3sでは不稔の鞘ばかりが目立ち、種子の実った鞘も貧弱。E1sは典型的なセイヨウナタネの形状で多くの種子を実らせている
16/04/30
4/14(画像D)になると、E1sには種鞘ができ、ほとんどすべてに十分な結実が見られます。さらに1本の茎が多くに枝分かれしたのが確認できます(画像Cと比較)。

画像E参照すると、D3sでは種鞘はできていますが、ほとんど結実には至っていません。画像ではわかりにくいですが、最終的に結実したのは3個の鞘のみで、しかも結実は不十分でした(画像E:黄色の囲い部分を参照)。

今回、すべての種子を回収し、さらに播種し、生育状況の観察を続けます。

それにしても、D3sのDからEへの変化の大きさには驚かされます。

なお、D3sの個体の花についても、その花芯を顕微鏡で観察したところ、昨年10月の抜取隊での観察と同様、花粉がまったく見当たりませんでした。


Fイヌカキネガラシ
Sisymbrium orientale Linn
物臭狸の花日記 にリンクさせていただきました

Gハタザオガラシ
Sisymbrium altissimum Linn
セイヨウナタネの自生が見られる国道23号沿線では、高頻度で雑種と見られるナタネが確認されています。

これはしばしば見られる状況ですが、左の画像のようなイヌカキネガラシやハタザオガラシなどのアブラナ科野草とセイヨウナタネが近接して自生することがあります。

最近の調査では、16/05/05の知多市北浜埠頭の飼料工場周辺でも同様な状況が確認されています。

以上、あくまでも状況からの推測から脱することはできませんが、このようなアブラナ科雑草などとの交雑についても視野に入れておく必要があるのかもしれません。

一般にセイヨウナタネ(Brassica naps)とイヌカキネガラシなど(キハナハタザオ族:Sisymbrium)の交雑は起こりにくいとされています)。