02/12/05
愛知県議会で中止決定
遺伝子組み換えイネ研究・商品化も断念

愛知県議中村友美氏の一般質問に対する県農林水産部長の答弁。

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6年間の研究の結果、除草剤抵抗性遺伝子を導入した有望な系統を作出できる見通しがたったので、平成15年3月末日をもってモンサント社との共同研究を終了する。

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作出した遺伝子組み換えイネについては、消費者に不安感もあり、商品化に必要な厚生労働省への安全性審査の申請は行わない。

以上の回答は、以下のような中村県議からの質疑に対するもの
 (GMイネに関する部分のみ抜粋してあります)
 11/18、県と農試に対して、58万の署名が手渡された。それには全国140の団体がかかわっている。県農試でのGMイネの研究は全国的な問題となっており、ストップ!遺伝子組み換えイネ全国集会には南は九州、北は東北まで750人の参加があった。
 共同研究のパートナーであるモンサント社はイネが終われば、次は小麦へという意気込みだ。第三世界では、身体を張ってのGM作物『No』が叫ばれている。
 今や、食の安全という問題だけでなく、世界的に影響を及ぼす環境の問題でもある。


中村友美氏(質疑)
県が行っている農業試験場での遺伝子組み換えイネについてお伺いします。
 この質問は、私一人からではなく、11月18日知事に遺伝子組み換え稲の研究・開発・申請中止を求める署名を提出した、賛同団体140団体を始め58万人の声ですので、しっかりと受け止めて答弁をしていただきたいと思います。傍聴にもきています。

 さて皆さん、愛知県農業試験場で行われている遺伝子組み換えイネの実験は、私たちが思っている以上に全国的に大きな問題となっています。

 11月17日、名古屋において遺伝子組み換え全国集会が開かれました。私も参加させていただきましたが、遠くは、九州から東北まで全国から消費者、生産者750人が集まり、愛知県の遺伝子組み換えイネの実験の危険性について議論がなされました。全国がいま愛知県農業試験場に注目をしているのです。

 遺伝子組み換え作物などにとても詳しい方からこんな報告がありました。モンサント社は、モンサント社というのはいま愛知県が農業試験場で、遺伝子組み換えイネの実験を行っている相手です。そのモンサント社は、イネの実験が終われば、今度は小麦をやろうとしている。そうなっていくと、世界の穀物が、モンサント社の支配下に入ってしまう。第三世界は、体を張って遺伝子組み換え作物の「ノー」をあげている。愛知県の実験いかんによって大きな流れが変わる。と発言されておられました。

 何回も何回も、申し上げておりますが、遺伝子組み換えイネの開発は、食の安全だけでなく、田畑を含む自然環境、生態系を大きく壊してしまう危険性をはらんでいるのです。

 農地を「水田砂漠」にしないように以下質問していきます。

まず最初に署名についてです。
 愛知県の遺伝子組み換えイネの研究について不安を感じている、愛知県民を始め全国からの声が遺伝子組み換えイネの研究・開発・申請中止を求める署名として県に提出されましたが、その重みをどのように感じているのかお伺いします。

第二点目遺伝子組み換えイネの研究の今後の取扱いについてです。
 遺伝子組み換えのイネの研究について、最終的な決定は知事にあります。知事は6月議会の答弁の中で、「米は主食であり、常に口に入れるもの、県政モニターのアンケートでも県民の皆様の「絶対食べたくない」「できれば食べたくない」と言う声が大変多い、意向は真摯に受けとめなければならない。研究成果のその取扱いについては慎重に判断しなければならない。とおしゃっておられます。イネの研究について、県の当初の目的は十分達成したと思います。これ以上はもう結構です。しかも県民の多くが「食べたくない」と態度を表明しています。知事の思いもこの間の答弁から察すれば、私と同じであろうと感じています。

 さらに六月議会の中で、農林水産部長は、共同研究については今年の研究成果を見て判断すると答弁されておられます。どのような判断をされようとしておられるのか、また商品化についてはどのように考えておられるのかあわせてお伺いをし、私の質問を終わります。

農林水産部長(答弁)
 モンサント社との共同研究は、除草剤耐性イネ品種を育成するための系統の作出が目標でございまして、現在の共同研究期間が来年の3月末までとなっております。

 本年度の実験につきましては、これまでに育成しました3系統の中から最もよいものを選び出す目的で行っておりますが、ほぼ初期の目的を達成することができましたので共同研究は終了いたします。

 また、県政モニターアンケートの結果なども考慮して、商品化に必要な厚生労働省への安全性審査の申請は行わないことといたします。

 なお、今回修得いたしました遺伝子組換え技術につきましては、現在行っております花の新品種開発に活かしていきたいと考えております。


さらに県農水部長の答弁に対し、中村氏は次のように述べています。
 県農試の研究は全国から注目を浴びている。研究の進行に対し、全国から学校給食に愛知県産の米を使わないというような圧力もかけられている。不買運動も起こりかねない。

 県農試のイネについての技術が全国でもトップレベルであることが、今回よくわかった。その点は誇りとしたいけれども、喜ばしいのか悲しむべきなのか・・といったところだ。

 今回で、全国的なイメージが下がってしまった。今後、名誉を挽回してほしい、と。



愛知県のこの決定により、除草剤ラウンドアップ耐性遺伝子組み換えイネ『祭り晴』の商品化への道が閉ざされたこととなる。

これは、この研究のパートナーであるモンサント社にとっては、大きな痛手となる。綿、ナタネ、大豆と快進撃を続けてきたモンサント社だが、今回『米』においてつまづいたことで、世界のもうひとつの主食である『小麦』においても苦戦を強いられることはまちがいないだろう。

市民運動の波が、アグリビジネスの最右翼であるGM作物の、しかもイネにストップをかけた意義は非常に大きい。

2002年6月の県議会で、中村友美氏と同じ会派のかしわぐま光代氏がGMイネについて質疑をしています。その中でのかしわぐま氏の感想は、『行政は一度始めた事業はどんなことがあっても途中で止めない、というのが鉄則なのですね』というものでした。

しかし、その情勢も7月に行われた『ストップ!GMイネ全国集会』をきっかけに大きく変化しました。それは全国から消費者、生産者が意思表示のため、32万の署名を携えて集まったことの意義の重さによるものでしょう。

その後8月、遺伝子組み換え食品を考える中部の会の愛知経済連への会見では、『経済連では消費者に受け入れられないものは扱わない。経済連が扱わなければ、生産者は生産することはできない。』との口頭の見解を得ています。

さらに26万ちかくの署名を上乗せしての、11月の全国集会が行われ、これも大成功を収めた。

その上での、今回の県議会ということになった。

これらの流れから見ても、何がこのような結果に結びついたのかといえば、もはや明快であると思う。これは、全国からの県に対する圧倒的なプレッシャーだろう。その力は今、農水省が推し進めようとしているGM作物のイメージアップ作戦をも打ち消すかたちとなったわけで、非常に意義深い。

またモンサント社との縁切りがなされたことは、今後のバイテク企業と公的機関との共同研究にも、少なからず影響を及ぼすことになるだろう。



今や、GM食品、作物は世界的に大きな正念場にさしかかっているといっても過言ではありません。

いずれ明確になるのでしょうが、現段階では『安全性』の議論はまだ尚早であるかもしれません。そういった不確かなものについて、受け入れるべきではありません。

GM作物が及ぼしている地球的なレベルでの環境の問題は、今や現実的なものとなっています。

さらに経済の国際化の名のもと、その最右翼の武器として快進撃してきたアグリビジネスは、世界の二大穀物である『米』と『麦』を我が物としようとしのぎを削っています。

おそらく、GM化された二大穀物が引き起こしうる『環境破壊』と種子支配による『経済の独占』は、世界に取り返しのつかない傷跡を残すこととなるだろう。

未来に向かってわたしたちのとるべき方向は、明白なものといえるでしょう。もし、ポジティヴな未来というものがあるとすれば、『環境の維持・再生』『世界の貧困の解消・平和』以外のなにものでもありません。

私たちが、GM作物に反対するのは、まさにポジティヴな未来を、私たちの子孫に託すという行為に他なりません。