シンポジウム

安全な食はこうつくる

日 時 :
2004/2/15(日)
場 所 :
愛知県中小企業センター 講堂

このページでは篠原 孝氏の基調講演を要約しています


インターネットで検索すると『地産地消』は5万、『旬産旬消』は3万ほどヒットするほど一般的なことばとなった。

旬産旬消については、ハウス栽培の生産者から文句を言われそうだが・・・。もう農水をやめたので言いたいことを言えるようにもなった。

イタリアのトリノにファーストフード・マクドナルドができたとき、対抗してスローフードということばが生まれた。

韓国では身土不二、農都不二ということばがよく使われている。日本では一楽照雄氏(日本有機農業研究会)が提唱したが、あまり浸透しなかった。私自身も有機農研の会員になっている。

米国カリフォルニア出身のジョゼ・ボベはフランスにできたマクドナルドを襲撃した。器物損壊で3ヶ月収監されたが、彼が釈放になったとき、3千人の町に5万人の支援者があつまった。

藤田田(日本マクドナルド前社長)は日本人を12歳までにハンバーグの味を覚えさせて、一生食べさせてやるなどととんでもないことを言った。これは経営者としてモラルがないとしか言いようがない。

『ファーストフードが世界を食い尽くす』(草思社刊 楡井浩一訳)の著者・エリック・シュローサーが文芸春秋に米国の肉は食べるなと描いている。藤田は「日本人が50年間ハンバーグを食べ続けると髪の色はブロンドに目の色は青になります」などといったと述べている。日本はマックに対して全然嫌悪感を持たない不思議な国民だ。

フードマイレッジ(フードマイルズ)
食卓と農場の距離を縮めることが環境を守ることになる。レイクディスクリクト(ピーターラビットの故郷)。英国の反グローバリズムの旗手ティム・ラングが提唱。

漁業でいうと
日本では養殖業を増殖業、栽培漁業などと同じ意味の言葉を作る傾向がある。私は有機農業に環境保全型農業という言葉を作ったが、それに似たような言葉が乱立した。

地産地消のメリット:
県の立場からすれば地産地消が進むことが望ましい。愛知県では地域ごとの自給率を計算している。

トレーサビリティーのためには、地元産のものを食べるにこしたことはない。
雪印事件のおかげで追跡可能性が浸透した。産消提携。

岩手県志和町:空き缶ポイ捨て禁止条例の町
農産物の直売所が何箇所かできた。農家を番号制で管理するようにした。どんぶり勘定から脱却するために奥さんの管理で直売所で販売をするようにした。

千葉県柏市胴元知事:千葉県の『千』を取って千産千消としている。農協が直売を始めてみると、市場出ししなくても地元だけで売切れてしまうほど。

石巻、松島など、魚のうまいところがあるが、そこから取り寄せたものよりもその土地へ行って食べるのが一番うまい。

喜多方市:
残念なことに、地元の小麦でラーメンを作っていない。オーストラリア産の麦を使っている。もとは地元でラーメンに適した小麦が採れたのが『喜多方ラーメン』の起源なのに遺伝資源が消失してしまった。輸入小麦を使ってきたので、製粉工場もなくなってしまっている。

喜多方ラーメンを多くの観光客が食べに来てくれるのはありがたいが、すぐに売り切れる。地元産小麦のものは午前中で売切れてしまうため観光客にまで行き渡っていない。

食品表示でたとえば、讃岐うどんの原料の小麦は讃岐でできたものでなくてはいけなくなる。九州鹿児島のお茶は全国第2位の生産量を誇っている。にもかかわらず、ほとんどが静岡茶になってしまっている。徳島県でも同様。宇治茶の原料に三重や愛知からお茶が行っている。
現在ではその土地のお茶が50%以上含まれていれば、その土地の銘柄をつけることができることになっている。

加工畜産などのようなことはしていてはいけない。多量の輸入飼料をつぎ込んで、多量の排泄物が産業廃棄物として発生している。

安全な食のためには:
消費者の不買の権利が一番効果がある。農薬の問題で中国産の野菜が売れなくなった。米国ビーフを買わない。消費者として絶対に譲ってはいけない。

セーフガードで中国のネギとしいたけはストップできなかったが、消費者が買わないことで輸入量が確実に減っている。

戦後日本は学校給食にパン食を取り入れた。当時、貧乏人は麦を食え(池田隼人)と言った政治家がいる。米国は韓国、タイ、日本、インドネシアなどにMSA協定を締結しようとしたが取り入れたのは日本だけだった。これが米を食べないフランスに対して、余剰した米を援助するから使えと言ったとすると、そのようなことがフランスでは許されるはずがない。

学校給食について:
北海道の詐欺パン。帯広北見では米はできないのに、キララ397の北海道米を週3回の給食で食べさせ、地元産でない小麦でパンを食べさせている。

日本では小学校の給食費は一人当たり一食200円そこそこ。月5千円。大人はカラオケだ、パチンコだと無駄な金を使っておいて、給食費をケチっている。フランスでは1300円ほどの給食で食生活を教えている。日本では給食を先割れスプーンで食べさせていたりする。おそらくフランス人は、日本がそういう食育をしていることを信用しないだろう。日本人は堕落している。

日本での学校給食の当初の役割は各生徒の貧富の差をなくすため、統一化するためのものだった。粗食の代表のように言われた。

米国では学校犯罪の対策として、朝食まで給食をはじめている。
朝食を食べないということが、学校での犯罪につながっている。『切れる』子供たちが増えている。学校給食から変えてゆかなければいけない。地産地消の給食のために、親がまず市町村をたたかなければ変わらない。給食を通して食育ができる。
日本では管理栄養士の資格をもった教師をもうけるという計画もある。

長野では学校給食で地域食材の日というのを作ったが、一ヶ月に一回ではいけない。一ヶ月に一回の地域食材でない日を設けるぐらいでなくてはだめだ。

鶏肉1Kgを生産するのに穀物3〜4kg、豚肉1Kgに穀物7〜8Kg、牛肉1Kgに穀物12〜13Kgが消費されている。インドでは一人当たりの年間穀物の消費量が200Kgなのに、米国では一人当たり2000Kg食べていることになる。米国のBSEの問題があったが、日本の牛丼屋は罰が当たった。

マクドナルドは現地で現地の産物を使うという約束を世界中でしている。日本ではそういうことはしていない。その土地に貢献せよという取り決めがマクドナルドにもある。

フードマイレッジ、グッズマイレッジ。地産地消、旬産旬消、余計なものは買わないようにするべきだ。