悪党かヒーローか、GM街道をつき進むモンサント

 

ケイリー・ギラム      

ロイター、

2001年3月28日

山田勝巳 抄訳

 

チェスターフィールドにある6階建ての煉瓦造りのモンサント研究施設は、屋上を見るまでは典型的なオフィス・ビルに見える。

建物の屋上には2エーカーの温室があり、モンサントのハイテク作物が太陽に向かって伸び、様々な緑の植物が茂っている様子は、あたかもモンサントの利益をのばそうとする希望を象徴しているかのようだ。

農家にとっては、大豆やコーンなどの主要作物の生産性が向上することで、モンサントはヒーローのような存在である。しかし、バイオテク反対者にとっては環境や食品の安全を脅かす、母なる自然を破壊する仇のような存在だ。

組み替え種子事業には訴訟や抗議がつきまとい、増大する財政的圧力でモンサントは、ファーマシア&アップジョンと合併してファーマシア社を設立することにした。  

ファーマシアとして新たに農業製品事業に乗り出すモンサントは、再出発を期すが、見通しは明るくない。 他では思いもつかなかったような新しい製品や新しい手法で革新的な企業だったが、「明らかに多くの難問に直面している。」と食糧農業政策研究所のパット・ウェストホッフは言う。

 

約束の種

 モンサントのラウンドアップは除草剤売り上げ世界一で、家庭菜園から農場まで雑草撲滅に愛用されている。去年の純益は、ラウンドアップ関連の除草剤だけで26兆ドルで全体の48%を稼ぎ出している。しかし、ラウンドアップの主要成分の特許が9月で切れて、モンサントの稼ぎ頭は価格競争に曝されることになった。  

 マーケット・シェアを維持するためラウンドアップの値段を下げ、新たな製品を売り出したが、どちらもラウンドアップ・レディ作物の拡大を見込んでのことだ。 

 GMコーンとGM大豆の人気は1990年代半ばにデビューして以来、農家の間で急速に人気をのばしてきたおかげで、ラウンドアップ除草剤も増えてきた。去年は、モンサントのバイオテク種子は15%伸びて10300万エーカーに及んだ。

現在、モンサントはRR小麦の栽培許可を申請しており、その延長上にはRR米とRRアルファルファがある。 更に、その先にはワクチンを作り出すGM植物を計画している。 

「我々は、植物を、健康を向上させるものを作る工場と見ている。」と科学戦略のエリック・サックス部長は話している。

 

「フランケン食品」との戦い

 モンサントが邁進する一方で、GM食品の安全性への懸念は治まる様子を見せない。 

特にヨーロッパでの反対が激しく、「フランケン食品」とレッテルを貼られて、規制当局の許可は棚上げされたままである。

先週、イタリア警察は120トンのトウモロコシが未承認のGM成分で汚染されているとして差し押さえた。

1月には、ブラジルで千人以上に及ぶ抗議者がモンサントの実験農場を襲い、GMコーンと大豆を引き抜いた。

それほど派手ではないがUS国内の反対者も活発だ。先週スターバック社の年次総会でピケを張り、組み替え大豆やコーン製品、それに成長ホルモンを使ったミルクを使用しないよう要求した。  

去年は、マクドナルドや他のファースト・フードチェーンにモンサントのGMじゃが芋を使わないようにさせ、その後モンサントはこれらを生産中止している。  

アメリカの農家は、モンサントの予定しているGM小麦による生産性向上は歓迎しているが、市場を失うことを懸念している。 ワールドウォッチの研究者ブライアン・ハルウェルは、「モンサントという名前は、バイオテクノロジーの何でも悪いもの、醜いものの代名詞になっている。」と話す。  

 

新顔

 モンサントはこの逆風を乗り切る決意で、これまでの攻撃的な促進は押さえて、教育と福祉に重点を置いた控えめな作戦に変える。コスト削減のために研究費を少なくし、去年課税前費用で2億6千百万ドルかかったリストラに焦点を絞る。2000年に460人を解雇し、今年は235名を予定している。

今月始めの発表では、2001年の売り上げはラウンドアップ除草剤と種子、その他バイオテクノロジー関連で5%の伸びになる予測だ。しかし、将来的成長性については疑問を感じている人も多い。  

将来的発展のためには、バイオテクの受け入れを促進することが鍵となるということでは内外の見解は一致している。

                                                              

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