「食べるワクチンも間近」
ジュリー・クレイトン、
2001年10月19日、
バイオメドネット・ニュース
訳 山田勝巳
B型肝炎の食べられるジャガイモワクチンは、これまでの所見込みがありそうだと話すのは、コーネル大学ボイス・トンプソン植物研究所の植物遺伝学者ヒュー・メイソン氏。
メイソンによると、実験ボランティアの抗体レベルを示す未公表データは、有望で、一般に販売されているB型肝炎ワクチン注射は生産費が高く、移動や保存に冷蔵しなければならない。植物ワクチンは安く、どこでも作れ、注射の必要もなく、特に途上国での利用に適している。
国立科学アカデミーの先月の機関誌に記録されているデータによると、マウスでの経口予防接種に成功している。「未来のワクチン:パリ、パスツール研究所に於ける合理的設計から臨床適用まで」と題したメイソンの最近の結果は昨日の会議で提出されている。1990年代の終わりに大いに吹聴された、最初の食べるワクチン臨床テストの後、研究者はラボに戻り、投与量と植物由来の抗原を腸壁から効率よく吸収させる方法の開発に取り組んできた。メイソンは、最初の植物ワクチンを人体で試験するチームの一員で、下痢を起こす大腸菌のB−毒素を発現するジャガイモを作り出した。
彼のチームは、現在罹ると致命的なB型肝炎ウィルスの抗原を持つジャガイモで始めての人体実験を行っている。しかし、今後の実験は、免疫抗体反応を引き起こすほどの高濃度の抗原が作れるかどうかにかかっている。更に抗原が消化されないようにして、胃腸粘膜を通過しやすくするために、発現する遺伝子やウィルスベクターが大きなウィルスのような固まりを植物細胞の中に形成する必要がある。「効率的にこれを形成する方法を見つけるのが課題だ。」とメイソンは語る。
これまでのジャガイモでB型肝炎抗原を強める試みでは、植物の成長が妨げられ、芋の出来が悪い事が多かった。組み込んだ遺伝子からのメッセンジャーRNAが多すぎて、植物ゲノムに遺伝子抑制が起こってしまうためで、メイソンの解決策は、植物成長の可能な限り最後の段階まで遺伝子増幅機能が働かないようにすることだ。これを実が熟す段階のトマトで試験中だ。最終ゴールは、途上国でも作りやすいジャガイモで実現することだ。
メイソンのチームは、黄色豆矮化ウィルス(the Bean Yellow Dwarf Virus )のプロモーター部分とGUS及びGFPレポーター遺伝子を使って、この機能を実現しようとしている。これが上手く行けば、レポーター遺伝子を目標とする抗原遺伝子で置き換える予定だ。「少なくとも数日間は強く発現するような発現カセットのコピーを沢山作ることを目指している。」とメイソン。イリノイ大学の植物遺伝学教授シュイラー・コーバンは、「植物ワクチンでの抗原濃度は、重要な課題で、メイソンの方法がよいだろう。」と語る。
コーバンのチームは、毎年5000人近くの子供が犠牲になる強い感染性のある呼吸器シンシチウム・ウィルスのワクチンを口当たりの良いリンゴジュースの形で作り出そうとしている。今のところトマトとジャガイモでワクチンが出来ていて、マウスの実験では、良さそうな結果が出ている。2年以内には臨床試験が出来るようにしたい意向だ。GM食品の懸念に対し、メイソンは、植物の成長とワクチンの利用には厳しい規制を課して、食品の流通には絶対紛れ込まないようにする。交雑を防ぐために薬用ハウスを作物ハウスから隔離して、保管や加工も分けるようにするとメイソンは強調する。