バイオ関連会社と『日本たばこ』の繋がりに於ける命に関わる特許の危険性
速報 2001年11月12日(月)
ジーン・ウォッチ(イギリス)
訳 長坂敏雄
GeneWatch UKは本日、遺伝子に関する特許を与えることが、新しい治療や薬品対して排他的な支配をもたらし、それらが悪者の手に落ちることを警告した。
GeneWatchとThe Guardian新聞が明らかにしたところによると、アメリカのバイオテク関連会社2社と日本たばこ(JT)の間に新しい肺ガンワクチンの開発と販売の排他的権利を持つという契約が成立したのでこうした警告が出された(1、2)。喫煙反対運動家たちとWHOもこの契約を非難した。
「タバコ会社にガンワクチンの独占的な権利を与えることは、ドラキュラに血液銀行をまかせることに等しい」、とGeneWatch
UKの副会長のヘレン・ワレス医師は言う。「遺伝子に特許を与えるシステムは、こうした独占的な取引を支えることであり、遺伝子情報をこれらの会社が占有することを可能し、高値で商売することを許すことになる。各国政府は、遺伝子特許をやめるべきであり、CorixaやCell
gebesysのようなバイオ関連会社が特許による利益をむさぼることを阻止すべきだ」。 喫煙と健康に関する行動(ASH)の代表、クライヴ・バイツは言った。「タバコ産業にとっても、喫煙と疾病を統合する試みは、自己中心主義と欲望における新たな開拓を印すことである。彼らは、喫煙生活が問題ないというイメージを必死になって宣伝する一方で、怖ろしい病気を利用してもうけることを考えている」
WTOの非伝染性疾病局代表のDerek Yachは言った。「私たちはタバコの喫煙という悪癖を打ち破り、人々が喫煙をやめ、二度と始めないように援助する行動をとることによって,ガンとの闘いに取り組んできました。肺ガンワクチンの権利を支配しようとする最悪のタバコ会社は、病気を起こす第一原因である製品から巨額の利益を得る会社である。
バイオ関連会社の調査の多くは、ボランテイアの患者を抱えている。Corixaの特許申請書は、すくなくとも二人のガン患者の細胞が調査に使われたと明らかにしている。他の患者はワクチンの臨床実験に関係するものだ。特許は、彼らが喫煙者であったかどうかは明らかにしていない。
「喫煙は死につながる」とワレンス医師は言う。「これらの患者は、遺伝子に関する調査の結果が日本のタバコ会社にゆだねられることを望んでいたとは考えられない。ガンに関する調査はガンの原因となる製品を作る会社によって支配されるべきでない。遺伝子の特許は、このように道理に合わない扱いをより可能にするし、より危険なものにする」。
1999年6月、 Corixa社 は、日本たばこ(JT)に向こう3年間、肺ガンの防止と治療のためのワクチンの開発と販売の資格を北アメリカ、日本、そして他の多くの地域において許可した。(3、4)それらのワクチンは、元はと言えば、Corixaが肺ガンにかかった細胞から取り出したデータに基づくものである。
1998年以来、Corixaは肺ガン診断とその療法に関する6つの特許を申請している。その特許は、肺ガン細胞によって影響を受ける遺伝子配列に関するものも含まれている。(5) そうなれば、他の会社や調査員たちが、これらの遺伝子による肺ガンの診断、予防、処置の新たな開発とその市場調査をすることを妨げることが少なくとも向こう20年間、Corixaには可能になる。
1998年のCell Genesysとの同様の契約は、JTに対して遺伝子操作されたガンワクチンの、日本、台湾、韓国における単独の販売権利を与えるし、他の地域では共同販売の権利を与える(6)。もしそのワクチンが治療実験に成功すれば、8000万ドルの価値になるだろう。
イギリスの会社British Biotechは心臓発作と脳溢血のための遺伝子操作を用いた治療法の発展に対して、JTから報酬を受け取っている。(7)喫煙習慣が数十年間にわたって存在する国では、肺ガンの90%はタバコに原因がある。(8)
1)
GeneWatch UK Briefing 「バイオテクの取引が、肺ガンワクチンの希望をJTの手にゆだねる」は、以下のHPで見られる(www.Genewatch.org.)
2)
JTは世界の第3のタバコ会社で、世界の5大ブランドのうち3つを占めている、Camel,Seven Star, Winstonがその3つだ。会社は、その中心がたばこ産業でありながら、製薬会社に衣替えした。
3)
アメリカのバイオテク会社、Corixaはシアトルにある。Corixaは1999年に、取引によって160万ドルをもうけた。そして2001年には、JTから100万ドルをさらに受け取った。
4)
特許は、ヨーロッパ、元のソ連、アルゼンチン、ブラジルそしてコロンビアを除く地域をカバー。これらの地域は、イタリアの製薬会社(Zambon Group)に対して、Corixaから特許が与えられている。中国においては、この2社が共同して、開発・販売をまかされている。
5)
世界の特許は以下のとおり。・・・・・・今年の4月、Corixaは 遺伝子配列によるものではないが、潜在的な肺ガンワクチン法にたいするアメリカの特許を得た。
6)
Cell Genesys no記者発表 1999年4月5日:取引は、前立腺ガンと肺ガンの両方にたいするCell Genesys の GVAXガンワクチンの使用を認めている。米国での販売は除外されている。この場合、遺伝子それ自体は特許の扱いを受けていない。
7)
British Biotech 記者発表 1999年6月30日
8)タバコと健康に関する情報(www.ash.co.uk)