新国際条約で種子の一般公開を決定
IATPプレス・リリース
2001年11月5日
訳 山田勝巳
11月3日(土)国連のFAOローマ会議で最新の条約が賛成116−0、棄権2(アメリカと日本)で採択された。”食糧農業植物遺伝子源国際条約(International
Treaty on Plant Genetic Resources for Food and Agriculture)”は、世界の食糧供給に関わる種子や細胞(germplasm)へのアクセスに多面的方法を取ることと、その恩恵の公平で公正な共有を定めている。また農民の自家採種種子の保存、使用、交換を行う権利を認めている。
交渉の結果に対し、アメリカの交渉団は上院が批准するのは難しいと示唆した。この条約は、40カ国が国内で批准した後90日後に発効する。
農業貿易政策研究所の国際プログラム副所長クリスティン・ドウキンスは、「この条約は世界の農民の種子の入手性を改善した。種子保存をさせまいと世界中で農民を訴えてきたバイテク産業にとっては大きな痛手だ。」と話す。
最も議論のあった条文では、農民、研究者その他このシステムを使うものは、「このマルチラテラル・システム(多国参加システム)で入手する植物の食糧農業資源やその遺伝子や遺伝子片の知的所有権や円滑な入手を制限するような権利を申し立てない。」となっている。この新条約を最終決定する直前に、アメリカはこの条項を削除する動議を出したが、97-10で棄却された。
上院多数派リーダー、トム・ダッシェルが国務省のバーバラ・トビアス宛の11月1日の親書で「あなたとアメリカの代表団がなんとしても農民の権利を制限するような条項には反対するように」と述べ、「要は、他の同僚議員同様、私は公的資金で公共機関が行った農業研究とその成果は、公共部門に残るべきだと信ずる。」と締めくくっている。この要請があるにもかかわらず、アメリカの代表団はこの条項の削除を支持した。
他に議論が集中した内容では、WTOの貿易に関する知的所有権(TRIPs)との関連のある新条約部分で、国際法では、特に明記されていない限り、新条約の内容が古いものに優先する事になっている。この新遺伝子源条約の前文では、「この条約の内容は、他の国際合意に基づく対立者間の権利や義務をどのようにも変えるものではなく」そして「この条約と他の国際合意の間に順位を着けるものではない」としている。これが前文であるので、法的には拘束力がないという法律関係者もあるだろう。
多国参加システムから入手した種子や遺伝子に特許を取ろうとする場合の対立は、最終的には、WTO又は遺伝子源条約又はその両方の紛争解決システムによるだろときは、国際司法裁判所に持ち込むことが出来る。
交渉責任者であるFAOの事務総長ジャック・ディオフは、遺伝子源条約の成立に大満足である。1945年に設置されたFAOの使命は、栄養状態の改善、生活の向上、農業生産性の向上、農村住民の社会的地位改善である。人間の食糧や農業で使われてきた10、000種の中、たったの12品種が70%の食糧を賄い、その内
50%が米、トウモロコシ、麦、ジャガイモの4つである。
「明らかに、使える資源を有効に使っていない。人類の生存にとって極めて重要なのに、これを守り続け改善し続けようとする動機がないので、遺伝子源は急速に失われてきている。」とFAOの交渉事務局担当エスキナス・アルカザールは言う。
ローマで交渉を見守っていた非政府団体は、この歴史的条約を歓迎すると同時に非常な危惧も表明している。11月3日の声明によると:http://www.ukabc.org/iu2.htm#e
「至らないこれらの点にも関わらず、遺伝子源の流れが悪くなる問題を取り上げることが出来るのはこのような国際会議だけだ。」 条約の早急に批准して、新たな管理組織が条約の運用を開始して、農民の権利、アクセスや知的所有権条項の解釈、他の国際合意との関係に於ける独立性と整合性の明確化を行えるように求めている。NGOは交渉の議長を務めたベネズエラのフェルナンド・ゲルバシ、20年に及ぶ争点の話し合いを継続してきたFAO職員、そして「最も重要な、遺伝子源の保存と持続的利用を行ってきた無名のヒーローである農民」を賞賛した。