一般的植物ベクターが人の細胞に遺伝子を注入する
ジョー・カミンズ
ISISレポート
2001年9月24日
訳 山田勝巳
遺伝子組み換え業界では、植物に遺伝子を挿入するベクター・アグロバクテリウムが動物の細胞には感染せず、遺伝子を注入することはあり得ないと想定していた。 しかしこれが間違っていることが判明した。ジョー・カミンズ教授がラボや農場の作業者に警告する。
アグロバクテリウム・ツメファシエンスは、感染した植物の茎にこぶを作るバクテリアである。 このバクテリアは、瘤を作るプラスミド(Ti)を感染した植物の細胞に注入して瘤を作る。 Tiプラスミドには毒性遺伝子があり、これが細胞にとりつきT-DNAプラスミドの一部を植物細胞に移す。 移されたDNAは基本的にランダムに(割り込み場所は特定していない)植物染色体に入り込んで、植物の腫瘤細胞の成長を刺激するバクテリア遺伝子を付加する。 作物の遺伝子操作(GM)では、腫瘤を作る成長促進遺伝子を抗生物質耐性遺伝子、植物ウィルスプロモーター、除草剤耐性など希望する作物特性遺伝子等を持ったGM構造物と置き換える。
つい最近まで、遺伝子操作業界では、アグロバクテリウムは動物の細胞には感染しないと想定してきており、それが遺伝子を注入するなどは考えられなかった。 しかし、これが間違っていることが証明された。
今年始めに発表された論文では、T-DNAは、人の細胞の染色体に入り込める事を報告している[1]。 それにアグロバクテリウムは、何種類かの人の細胞にとりつき、遺伝子変化を起こすことさえする。 この研究者は、T-DNAが植物細胞ゲノムに組み込まれると同様に、組換えの起こった人HeLa細胞では、正確にTiプラスミドの境界であるT-DNA部分で組み込みが起こったことを発見した。 これは、アグロバクテリウムが植物の細胞を変えるのに使うのと同様のメカニズムで人間の細胞を変えられることを意味する。
論文では、人のガン細胞がニューロンや腎臓細胞と共にアグロバクテリウムのT-DNAで変化したことが示されている。 この発見について、実験室でアグロバクテリウムを扱う人は警戒すべきである。
組み込まれたT-DNAは、人の染色体に入るのであるから、突然変異源として働くのはほぼ間違いない。 ガン遺伝子を活性化したり、ガン抑制遺伝子を不活化したりしてガンを引き起こす可能性がある。 その上、バクテリアを組み換えるときのT-DNAの配列は、変化した細胞で発現しうる(CaMVウィルスプロモーターはHeLa細胞[2]で活性を持つことが分かっている)、そしてインターロイキンという薬理活性のある人の遺伝子構造を持つ細胞で現在試験されている[3]。
組み換えバクテリアが環境中に逃げ出すのを防いだり定量化するというようなことは殆どなされていないのは明らかだ。 アグロバクテリウム・ツメファシエンスを扱うラボや農場作業者のガン検査が必要だ。作業者のT-DNA検査が有効だろう。
1..
Kunik T, Tzfira T, Kapulnik Y, Gafni Y, Dingwall C, and Citovsky V.enetic
transformation
of HeLa cells by
Agrobacterium. PNAS USA, 2001, 98,1871-87.
2.. Ho
MW, Ryan A and Cummins J. CaMV 35S プロモターツメファシエンスが動物の細胞で活性がある。 Microbial Ecology
in Health and Disease, 2000, 12, 189.
3.. See "GM AIDS
virus more deadly" by Joe Cummins & Mae-Wan Ho ISIS Report,
July 19, 2001 www.i-sis.org
詳細についての連絡先:jcummins@uwo.ca