参考資料: スターリンクの安全性における問題点(2) 河田昌東(2000年12月5日)
10月25日にAventis社がEPAに提出した「新資料・データ」の論点とEPAの予備的評価のまとめ
課題 |
Aventisの主張・データ |
EPAの見解 |
1)Cry9C蛋白質の安定性について |
人工胃液PH2では4時間以上安定だが、PH1.2とPH1.5では30分から分解が始まり、60分で分解する(新データ)。 人間の胃液は通常、平均PH1.4であるので、30分以上経てばCry9Cは胃の中で分解し、アレルゲンになるチャンスは少ない。 |
人間の胃のPHは1.0〜3.0まで変化する。食後かどうか、抗酸性物質が有るかどうか、医薬品などで変化があり、100倍の範囲で水素イオン濃度は変わるので、PH1.2〜1.5で分解するからと云って安心できない。 また食物が胃の中にとどまっている時間も、空腹時の15分程度から満腹時の4時間まで幅がある。30〜60分で分解しても安全と断定出来ない。 |
2)アレルギーのための感作と応答(1) |
他社の2製品でCry9B蛋白質を含むものが認可されている。これは類似した蛋白質なので、これを食べた人がCry9Cにも反応するはずだがそんな例はない。 |
他社製品注のCry9Bを含む遺伝子組み換え体はCry9C蛋白は作っていない。また、Cry9BとCry9Cのアミノ酸配列は60〜70%しか似ていないので、Cry9Bを摂取した人がCry9Cに反応するとは限らない。 |
3)アレルギーのための感作と応答(2) |
通常の食物アレルゲン蛋白質は、全蛋白質の1〜40%と高濃度に含まれる。Cry9Cはコーン蛋白質の0.0129%しか含まれないので、人間には感作作用がない。 |
経口摂取ではないので比較は出来ないが、農薬としてBt菌を職業として扱っていた人々が、Cry9Cに反応するという研究が最近出た。これは、丸ごとのBt毒素を、呼吸で吸い込んだ例であり、遺伝子組み換えで使われているBt蛋白質断片を食物として食べた訳ではないが、Cry9Cがアレルゲンになりうるということを示す。 |
4)アレルギーのための感作と応答(3) |
コーンアレルギー患者の血清は非組み換え体コーンと反応するが、スターリンク・コーンとの反応はそれ以上に強くはない。 一般的なアメリカの食物アレルギー患者(卵、ミルク、ピーナッツ、海老、大豆、麦、など)の血清とスターリンク・コーンとは反応しない。国民がすでにスターリンクを食べているとすれば、こうした敏感な人々はすでにCry9Cに対しても感作させているはずであるのに反応しないことはCry9Cにアレルギー性がないことを示す。 |
このデータはスターリンクによる感作がないという決定的証拠にはならないが、アメリカ国民が一般的にスターリンクでどの程度感作されているかを知る基礎資料として役に立つ。 これは長期間にわたる国民のCry9Cに対する感作を否定するものではない。 |
5)アレルギーのための感作と応答(4) |
16名のピーナッツ・アレルギー患者の血清の反応限界はピーナッツ蛋白質100mg 中にAra h1とAra h2(アレルギー・蛋白質)が16mgでは反応せず、それぞれを20倍(320mg)に増やすと反応する。これをスターリンクに当てはめれば、最悪のケースでもCry9C蛋白質の摂取量は6.4〜8.6mgにしかならないので、アレルギーは起きない。 |
Cry9Cがピーナッツと同等のアレルゲンかどうか分からないが、EPAの食物摂取量評価では、場合によってはCry9C摂取量は16mgを超過する。 また、EPAの評価でも、Cry9Cがピーナッツ・アレルゲンの閾値である320mgをこえることはなかった。 |
6)スターリンク摂取によるCry9C蛋白質への国民の暴露量の評価 |
スターリンク・コーンのアメリカでの生産量はコーン全体の0.32%(99年)と0.43%(2000年)である。流通、加工等の過程を経て食物として国民の体内に入るのは、最大に見積もっても0.22%。しかもCry9Ct蛋白質のコーン内の発現量は0.0129%であるから、実際に体内に入る量は微々たるものである。この量ではアレルギーは起こさない。 |
EPAの見解ではAventisの評価は最悪ケースとは言えない。調査によれば、穀物倉庫での混入率は0.25〜62.5%までまちまちである。平均混入率は2.8%。 Aventisの評価の9倍近い。また混入が必ずしも平均的とは限らず部分的には高頻度で混ざることもあり得る。国全体の平均混入率でも1.2〜1.5%と見積もられる。いずれにせよCry9C蛋白質の平均摂取量が極めて低いのは事実である。 |