モンサント社のラウンドアップ耐性ナタネ(RT73,RT200)の安全性審査申請書の問題点

 

遺伝子組み換え食品安全性審査申請書点検グループ

(文責 河田昌東 遺伝子組換え情報室)

 

はじめに

さきに、我々はモンサント社の除草剤耐性大豆(RR大豆)の安全性審査申請書を点検し、数々の問題点を指摘した。一言で言えば、それは一見科学的装いをしながら非科学的な推測やデータ解釈の歪曲に満ちた内容で、安全性を科学的に証明したものとは言いがたいものであった。今回、我々は同じモンサント社の除草剤耐性西洋ナタネ(キャノーラ)の安全性審査申請書をチェックした。

それは昨年来日本のナタネ輸入港周辺で遺伝子組換えナタネ(以下GMナタネ)が輸入に伴うこぼれ落ちによって自生し、場所によっては国内産ナタネや各地の河川敷で野草化している西洋カラシナとの交配による意図しない遺伝子伝播が起こる危険が生じているからである。実際に国内産ナタネ科植物に汚染がおこれば、GMナタネが内包する問題点はそのまま国内産作物に取り込まれる可能性がある。チェックはまだ一部分に過ぎないが、これまでに明らかになった問題点を公開する。

 

問題点1 安全性研究に使ったラウンドアップ耐性たんぱく質はナタネではなく大腸菌由来

 このような「替え玉試料」による安全性試験や分析はRR大豆の安全性審査申請書でも行われ、我々はその非科学性を厳しく批判してきた。組換えに使ったプラスミドDNAが同じであるという理由で、大腸菌でもナタネや大豆でも同じたんぱく質が作られているという保証はない。それは大腸菌のような原核生物と高等動植物では遺伝情報の翻訳機構が同じではないからである。こうした古くから分かっている事実を無視し、モンサント社はナタネからこのRRたんぱく質(CP4EPSPS)を多量に抽出するのが困難である、という理由で安易な大腸菌の形質転換体を使ったものである(これが理由であることは安全性審査申請書に明記されている)。

 

問題点2 RRたんぱく質(CP4EPSPS)のアミノ酸配列分析は455個のうち16個だけ

 これもRR大豆同様の不完全な分析である。問題点1で述べたことから、RRたんぱく質のアミノ酸配列は全配列にわたって決定すべきであるにもかかわらず、ナタネから抽出したRRたんぱく質でも大豆同様にN末端から16個しか分析が行われず、そのうち4個はアミノ酸が特定不能、3個は多分こうだ、というあいまいな分析結果である。

● RRプラスミドDNAから推定されるアミノ酸配列  MLHGASSRPATARKSSGL

● RRナタネのRRたんぱく質のアミノ酸配列   XXX(A)SSRPAT(A)RK(S)XG

       注:Xは不明、(A)(S)は推定

● RR大豆のRRたんぱく質のアミノ酸配列    (L)HGASSRPATARKSS

 

こうした部分的分析で良いとする慣行は、RR大豆以来全ての遺伝子組換え植物で採用されていると見られ、安全性審査の根幹にかかわる問題であるにもかかわらず、食品安全委員会もこれを追認している。しかも、このRRナタネのアミノ酸配列が、RRプラスミドDNAから推定されるアミノ酸配列とほぼ同じであることをもって、その他の動物実験に、プラスミドを使った大腸菌由来のRRたんぱく質を使うことが適切である、という倒錯した結論を導いているのである。(このページは企業秘密という但し書きがある)

 

問題点3 GOXたんぱく質のアミノ酸配列もN末端の15個だけ

 RRナタネには除草剤耐性たんぱく質(CP4EPSPS)だけでなく、RR大豆と違い積極的にラウンドアップを分解する酵素(グリフォサート酸化還元酵素 GOX)を作る細菌Achromobacter sp.の遺伝子が挿入されている。このGOXたんぱく質のアミノ酸配列もまた、CP4EPSPS同様にN末端から15個だけの分析で済ませている。全部で431個のうち残りのアミノ酸配列はDNAからの推定である。

 

問題点4 マウス急性毒性試験用GOXたんぱく質もRRたんぱく質も大腸菌由来

 モンサント社はマウスを使ったGOXたんぱく質の急性毒性試験を行うために、RRナタネからGOXたんぱく質を多量に抽出することを試みたが失敗した。原因の一つは種子の約40%が油といわれるキャノーラ・ナタネの特性である。その結果、モンサント社は「理想的にはナタネから大量抽出すべきだが・・・」と断りつつもRRナタネからはGOXたんぱく質を精製純化せず、CP4EPSPS同様、大腸菌で作ってマウスに与えることにした。大腸菌で作ったGOXたんぱく質とRRナタネのGOXたんぱく質が同等であることを証明しようとしたが、RRナタネから純度の高いGOXたんぱく質を精製できず粗抽出液のまま分析に用いた。同等だという根拠は、電気泳動による分子量が同じであること、GOXの抗体と反応すること等である。対照に使った大腸菌由来のGOXたんぱく質も純度は18〜22%までしか精製されなかった。結局、毒性試験には全て大腸菌由来の組換えたんぱく質(替え玉)が使われた。

 

問題点5 マウスの毒性試験はたった7日間

 毒性試験に使ったCP4EPSPSとGOXたんぱく質自体に問題があるばかりでない。経口投与による急性毒性試験は、たった7日間しか行われず、その間の体重が変わらなかったことをもって、RRナタネに急性毒性は無い、と結論した。これは28日間投与したRR大豆の場合よりも後退している。実験動物の数もオス、メス各10匹ずつに過ぎない。こんなずさんな毒性試験では到底安全性を証明したとは言えない。WHO/FAOの報告書では組換え作物の安全性試験は、最低3ヶ月は行うのが望ましい、としているのである。

 

問題点6 消化妨害物質(アルキル・グルコシノレート)の増加は組換えの影響か

 西洋ナタネにはアルキル・グルコシノレートという消化妨害物質が含まれている。それで、人間は直接これを食用にすることが無く、カナダでは西洋ナタネの品質を守るために、搾油後の油粕におけるアルキル・グルコシネートの含有量を1グラム当たり30マイクロモルと定めている。市販の西洋ナタネの平均含有量は、14マイクロモル/gであるという。モンサントの分析によれば、栽培条件によってはRRナタネ(GT73株とGT200株)では平均値を超えることがある。しかし、基準の30マイクロモル以下なので実質的同等性がある、と結論している。平均値を比較すれば以下のとおりである。

組換え前の宿主Westar種(8.75μモル/g)、GT200(10.7)、GT200H(12.6)、GT73(11.2)、GT73H(16.8)

明らかに、アルキル・グルコシノレート含量は組み換え体で高い傾向があるが、原因は不明とされている。

これは組換え操作自体に原因がある可能性があり、家畜飼料として利用する場合注意すべき点ではないだろうか。

 

問題点7 グリフォサート分解物は基準から排除

 GOX遺伝子を導入したことによって、RRナタネの中ではグリフォサートが分解し、アミノメチルフォスフォン酸(AMPA)という物質が作られる。RR大豆の安全性審査申請段階では残留農薬基準としてグリフォサートとAMPAの合計値が20ppm(大豆)、200ppm(全草飼料)と定められた。これ自体ラウンドアップ耐性に伴い、除草剤散布量が増加することに対する対策であった。ところが、今回のRRナタネでは、基準からAMPAを除外する、という決定がモンサント社とアメリカ政府EPA(環境保護庁)担当者で話し合われ、合意に至ったとされている。これは事実上安全基準を2倍に引き上げるものである。しかも、モンサントの安全性審査申請書にあるグリフォサートとAMPAの安全性に関する動物実験では、グリフォサートとAMPAの毒性レベルはほとんど変わらず、ラットの亜急性毒性、イヌ亜急性毒性はグリフォサートよりも強い毒性を示すデータが添付されている。こうした事実があるにもかかわらず、AMPAを基準から除外することは、栽培方法を優先し安全性を犠牲にする点で、ラウンドアップ耐性大豆と同じ対応であり、科学的とは言えない決定である。

 

問題点8 GMナタネの野生種との交配は前提

 申請書によれば、ラウンドアップ耐性西洋ナタネ(Brassica napus)と自然交配可能なのは、日本の栽培用ナタネ科植物(Brassica rapa = Brassica campestris) と河川敷などに生えている西洋カラシナ(Brassica juncea)である。これらは風媒だけでなくミツバチ等の虫媒によっても交配する。申請書によれば仮に交配しても、その雑種世代は生育異常や種子稔性が悪いので、自然条件下では繁殖しないだろう、と楽観的である。

しかし、種子稔性が悪いということと、交配不可能で種子が全くつかないこととは違う。また、雑種第一世代が、その親株と交配する「戻し交配」が起これば、それ以降は安定して遺伝子が伝えられることは、遺伝学の常識であり、Brassica 属の遺伝子伝達に関するそうした論文も存在する。また、申請書では、仮に雑草化してもラウンドアップ以外の除草剤を使ったり、引き抜いたりという物理的手段で駆除できる、とされている。

こうした楽観論は危険である。RRナタネの栽培認可をしていないEUでは、RRナタネが栽培されれば野生種のBrassica rapa種との交配が危険とされている(Brassica rapa種は日本では栽培種だが、ヨーロッパやカナダ、アメリカでは雑草である)。

 このように、モンサント社はRRナタネの野生種との交配が当然のこととして、安全性審査を申請し日本政府もそれをきわめて楽観的に認めているのが実情である。こうした状況下では、国内各港周辺に自生するGMナタネの組換え遺伝子が、国内栽培種や河川敷の西洋カラシナに伝播する危険はきわめて高いといえる。

 

問題点9 ラウンドアップ耐性ナタネは収量が悪い

 これはモンサント社がカナダで行ったRRナタネの野外栽培試験の結果である。親株のWestar 種その他の栽培種と比べて、ラウンドアップ耐性ナタネ(RT73,RT200)の収量は平均して12%程度低いことが記されている。ラウンドアップ耐性大豆だけでなく、RRナタネでも同様に収量が低いことは、こうした組換え体のメリットとして、これまで主張されていた「収量増」がやはり単なる宣伝に過ぎないことを示すものである。

 

 

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