カナダ農民モンサントに敗訴
マーク・カウフマン
ワシントン・ポスト 3月30日
訳 山田勝巳
自分の農場に、近所の農場からの花粉で特許作物が生えてモンサントに訴えられていたカナダの農家が数千ドル支払うように命じられた。注目されていたこの裁判は、農家に特許技術の使用料を支払うよう強行してきたモンサントの勝利に終わった。気付かぬうちに、特許作物の花粉が飛んできて責任を問われる農民にとって大きな痛手となる。
アメリカでは、数十人の農民が訴えられているが、カナダではこれが初めての裁判。
「ずっと自分の種を取って使ってきたけど、近所でGM作物を作って花粉が飛んできたらもうそれが出来なくなる。基本的に自分の種を使う権利を取り上げられたって事だ。」
と、モンサントに訴えられたパーシ・シュマイザー(70)は言う。
アメリカでは、遺伝子操作されたコーン、キャノーラ(なたねの一種)、綿、大豆は広く使われるようになり、最近これらの花粉が普通作物へ拡散する事実が分かっている。近所の農家が組み換え作物、特にコーンやキャノーラのような風媒花品種を作ればこのシュマイザーさんのような状況に置かれることになる。
モンサントは、これで会社と使用料を払って使う農家の知的所有権が守れる。
「この勝利は非常によいニュースだ。判事はシュマイザーが特許を侵害したと判断して損害賠償を認めたわけだから」と言う。
W.アンドリュウ・マッケイ判事は、農家は特許を持つ企業との契約無しにその作物を栽培する権利はないと結論した。また農家が(自ら)特許遺伝子を利用した(シュウマイザーさんはそうしていない)かどうかは問題ではないとも言う。モンサント等のバイテク企業は、1シーズンだけ使うという契約で農家に種を売っている。農家は伝統的に自分で採種して使ってきた。
モンサントの技術を販売する種子会社は、農家に不要なGM作物が出てきたらそれを抜くために協力する。シュウマイザーのようなことは稀で、特許を守るために農家には協力してもらっているという。
しかし、30万農家を組織する全米農家組合のスポークスウーマンは、このケースを憂慮していると言い「農家にとってこの結果によってどんな責任が生じるか非常に心配している。特にGM作物との交配が心配だ。」と語る。
憂慮する科学者同盟(Union of Concerned Scientists)のマーガレット・メロン氏は
「あきれた。これだとGM作物を作る農家の隣人は、買った憶えもない、利益もない商品に使用料を払うことになる。」と言う。
判決はシュウマイザーが自分の種を使うのを禁止し、モンサントに使用量10,000ドル、1998年の収益分として最大75,000ドル払うよう命じている。両者が合意に達することが出来なければ、マッケイ判事自身が、決定を下すとしている。
シュウマイザーは5代目の農家で、1997年にラウンドアップレディが紛れ込んだのには気付いていたという。その種をいつも通り使ったが、GMの特性を利用しようというつもりなど全然なかったと言う。
モンサントは、1998年に近くの農家からシュウマイザーが契約も無しにラウンドアップ・レディキャノーラを作っていると通報を受け、私立探偵に採種してもらったサンプルで確かにあることを確認した。報告では殆どがGMであった、となっているが、第3者の検査では、それよりもかなり少なかった。シュマイザーはバイテク企業に反対する人達や農家のヒーローの様な存在になっている。