不満の「種」

 

ナンシー・アレン

メイン州・サンデーテレグラム 6月3日 

要約 山田勝己

 

ジョージ・ブッシュが政権入りして、貿易推進がGMと結びついて急速に進められようとしている。1992年当時、この貿易取引が食糧供給、農民、労働者、そして環境にどんな影響があるかを知っていたのはラルフ・ネーダーと緑の党関係者だけだった。これとWTOがあれば、地方の条例、州法、更に国の法律をも無効に出来るということに気付いている人は少ない。

4月5日のウォールストリート・ジャーナルに、他紙は殆ど取り上げなかった、「non-GMO」又は「GMO free」と表示のあった食品20品目の中16品目から何らかの遺伝子操作の形跡があるとの記事が出された。

 

丁度この頃行われた電話による世論調査では、75%の人が表示は必要と答え、58%の人がGMを原料に使うことを反対している。

 

ウォールストリート・ジャーナルによれば花粉によってGM形質が一般の作物へ移ってしまうという。

 GM業界は、「市場がGMで溢れどうしようもなくなり、お手上げになるのを待っている。」という。 政府関係者は市民のこの反対を甘く見ていたようだ。多くの国でアメリカからの遺伝子組み換え食品を輸入拒否している。アメリカ農民が批准されたWTOの犠牲者になりかねない勢いだ。

 

農務省は農家への広報で「種をよく調べ、スターリンクというcry9C蛋白が入っていないことを種苗会社で保証してもらったのを使うよう」に求めた。 この警告は遅すぎて既に多くの食品にスターリンクが混ざり、種子も汚染されてしまった。

 

5月17日のボストン・グローブによると、政府による厳密な検査で1/4の穀物サンプルにスターリンクが出ており、前回の発表よりも遥かに高く、又汚染は現在も花粉による交雑ばかりでなく、流通段階でも進行中だ。

 

5月8日に来たEPAからの広報には、「種子を買う前に、種苗会社から農務省認可の検査キットでスターリンクがないことを確認するようお奨めします。」とある。

種子会社からは、検査は順番待ちで2ヶ月先まで一杯だという回答が来た。 その頃には農家はすでに種を播いてしまっている。  何故これほど対応が遅いかというと、政府が企業の利益を優先して市民運動や農民の心配は無視されてしまっているからだ。

 

もうすぐ議会は、NAFTAを南米にまで拡大したAFTT(アメリカ大陸自由貿易地域協定)を特急(fast track)投票に掛ける。NAFTAは既に労働者や環境にとって失望する結果になっているのに、アグリビジネスは中南米にまでこの失敗を広げようとしている。

この特急投票は大統領が起草し、修正無しで「YesかNoか」を問うものだ。 FTAAはNAFTA同様、条約(実態はそうだが)ではないので議会の2/3以上の賛成を得る必要がない。この貿易合意が成立すれば、米バイテク企業は製品の販売が非常に楽になる。 FTAAやWTOは参加国のGMO禁止を貿易障壁ととらえることが出来る。 GMOを拒否する国はWTOに提訴するか、多額の制裁金を払うことになる。

 

食糧供給が一度GMで侵されると、避けようがなく、GM企業の思うつぼになってしまう。 農民と消費者は犠牲者となり、環境も汚染されて取り返しがつかなくなる。

非民主的で破壊的貿易政策とGMによる食糧支配は、密接につながっており、これが成功すれば、我々は今後非常に長い間苦しめられることになる。

 

しかし、未だこの特急列車を止める時間がある。投票は夏の半ば頃になる見込みで、メインの議会は一貫して反対の立場をとっており、今後もこの姿勢を維持するよう働きかける必要がある。

 

 

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