遺伝子特許で金儲け
theage.com.au
3月15日(木)
訳 山田勝巳
ソルト・レイク・シティに本拠を置くアメリカ企業 Myriad
Genetics社は、乳ガンのリスクを高くすると考えられているBRCA1とBRCA2の遺伝子特許を持っている。この特許の意味するところは、Myriad社がオーストラリアで営業を始めると、乳ガンの女性や乳ガンの家族を持った女性が、乳ガンの検査を受ける際、今は公共病院で無料で受けられる検査が、遺伝子検査の費用として数千ドル払わせられる可能性がでてくる。Myriad社は、アメリカで遺伝子の突然変異を調べる費用として2600ドル請求している。ニューキャッスル大学医療遺伝子学のRodney
Scott学部長は、遺伝子情報の商業化が増えると、遺伝子検査は金持ちしか受けられなくなると言う。 これは問題である。
医学の進歩から受ける恩恵は、預金残高で決まってはいけない。
遺伝子の医学的理解が進むにつれ、利益目的のためにこの情報が使いずらくなる可能性も増えてきた。遺伝子検査費の支払いは、オーストラリア健康倫理委員会とオーストラリア法改正委員会で遺伝子情報に関する諮問の中で検討されている。
昨年6月に人間の遺伝子マップが発表されたとき、二つのゲノム解析プロジェクトの一つに資金を出したイギリスとアメリカの両政府は、情報は誰でも自由に使えるようにすべきだと主張した。しかし、人ゲノムプロジェクトの公的資金で得られたマップと、Craig Venterのアメリカ・バイテク企業Celera Genomics社が収集した情報が前後してリリースされた。Celera社のマップ作りの一番乗り競争によって、いわゆる“いのちの本”が私有の商品になるのではと言う懸念が強まっていた。
Venter博士を非難する人達は、遺伝子で特許を取るのは道徳的に間違っているとあざ笑う。しかし、Venter博士は、薬品会社が新しい治療法を開発するために数十億ドルの金を投資するためには、特許が必要だと信じている。Celera社は昨年、7000にのぼる自社の発見に特許を申請したが、同時に有償で学術団体とオーストラリアの研究者達に情報を開示した。
この情報は、人ゲノムプロジェクトが配信したタダのデータよりも使いやすくより包括的だとされているがその代わり、お客はCelera社に高い使用料を払う。企業のこうした利益を得る必要性と公共性のバランス取るような思慮ある妥協は、この情報を公共の利益のためにどう使うかのモデルになるのかもしれない。ピーター・マッカラム研究所のJoe Sambrookが、乳ガン検査が「納得のいく金額で精度が高くて早ければ、Myriadが特許を持っていても問題はないと思う。」と言うのは、このやり方を認めているためだろう。