GM表示規則はアメリカとの貿易対立の懸念
EU ウイリアム・ドロズディアック
ワシントンポスト(ブリュッセル発) 2001年4月11日
要約
山田勝巳
EUは遺伝子組み替え食品の販売に新たな厳しい規制をかける準備中で、アメリカとの貿易対立が懸念されており、活況を呈しているバイオテク産業に水を差すことになる。
EU議会はこの法案を今月にも通過させる見込みで、そうなれば表示と追跡の基準が厳しくなる。EUは3年間バイオテク商品の販売と流通管理法を作る間、新たな組み換え作物の栽培は禁止していた。これによりアメリカは2億ドル分のコーン市場を失った。一方大豆はそれ以前に許可されていたため15億ドルの売り上げがある。
新たな規制法では、GM成分を含むものは加工品にも適用され、検出されなくても表示が義務づけられる。例えばキャンディの砂糖がGM砂糖大根やコーンからのものであればその旨表示が必要になる。
世界的な景気後退の時期に保護主義だということでアメリカとの対立が起こることは認識しているのだが、EUでは狂牛病をはじめとする食品スキャンダルが相次いでおり、市民の要求は無視することはできない状況だ。「これはアメリカの状況以上に複雑で、米欧の科学者が安全だという確固とした証拠を出さない限り変えられない」とEU運営委員会議長のロマノ・プロディは語る。
アメリカでは除草剤耐性大豆や害虫抵抗性コーンといった物を既に数年食べ続けており、さしたる健康被害も出ていない。未承認のスターリンクについては、回収されて現在FDAがアレルギー反応を起こした数十人の調査をしている。しかし、ヨーロッパでは家畜の疫病を起こしたものと同じ工業的生産方法が原因であるとの見方が一般的で、組み換え体は健康危害があると捉えられている。
飼料に含まれる加工品は、生産から流通の全行程を詳細に記録するための費用がアメリカの輸出業者にかかるのではと懸念している。