まだ当たり外れの多いGM食品テスト
エコノミスト 3月30日
山田勝巳 訳
GM表示が意味を持つためには、沢山のGM成分検出を早くて手頃な費用で確実なテストができなくてはならない。 テストには、原料から製品段階まで全ての過程からのサンプルで使える必要がある。
昨年の秋環境グループ Friends of the
Earth(地球の友) が、色々な食品をGenetic ID社に送り7000ドル相当のテストを行って、クラフトフーズのタコスの皮から未承認のスターリンクを検出できた。これが引き金となって食品の回収が起こりアベンティス社はその費用に推定5億ドルを要した。
スターリンク事件でこの論争に「GM食品のテストにまだ当たり外れがあるという」重要な現実問題が浮かび上がった。現在は、スターリンクを検出するために試験紙を用いている。家庭用の妊娠検査キットと同じ技術だ。この試験紙は一度に一種類のGM(この場合はスターリンク)しか検査できず、一枚当たり10ドルかかる。その上サンプル中のGM成分の量が特定できない。単に一定レベル(通常1%)以上あるかないかを知ることが出来るだけである。
この試験では既知の安全でない物が食品にないことを確認するためには適当だろう。しかし、GM表示となると沢山あるGM成分を早く、安く、高い信頼性を持つテストを発明しなければ意味がない。そしてテストは原料から製品までの全課程からのサンプルに有効であることが要求される。
GeneScan-Europe というドイツ、フライブルグにあるバイテク企業は“eSensor"という電子バイオチップでそれが可能だという。eSensorを開発したのは、カリフォルニアのパサデナにあるモトローラ社の臨床マイクロセンサー部で、小さな36本の金の電極を持つ回路基盤で、各電極には10億以上の同一DNA分子が一本に束ねられて接続しており、DNA束はフェロセン分子という導電性の炭素化合物に取り付けられている。
電極部のDNA分子は、GM作物の特定のDNA片に対応(遺伝の基本である遺伝暗号照合《genetic-letter-matching》)する。一本のDNAがそれと相補するターゲットに触れると、それらが結合して一本になる。この反応でフェロセン分子は、電極の表面近くに捕捉され、これが電極を通る電流を変化させる。この電流を測定するデバイスが、どんなDNAが検出されたのか量り、それがどれくらいサンプルにあるかを推定する。
このデバイスは実験室用にはすでに入手可能だが、現場での使用にはまだ改善が必要だ。今のところ、サンプルはテスト前に長い化学工程を経なければならない。試料のDNAはeSensorが簡単に検出できるように抽出後、複製する必要がある。臨床マイクロ・センサー社は、DNAを10分以内に抽出し複製するマイクロフルイド・システム(microfluid system)でこの過程を置き換えたいと言う。
次の段階として、このシステムを収穫後圃場を離れる前にトラックで使えるハンディな検出器具と合体させる。この器具は0.025%の含有率まで検出できる。eSensorは一度にたくさんの種類のDNAを検出できるので原料や加工食品を一度通すだけでよい。このような検査を義務付けようと熱心なヨーロッパ諸国には最適だろう。