アメリカEPAの諮問委員会がスターリンクの安全性を納得せず
2000年12月5日午後6時2分
ワシントン発 ロイター
Julie Vorman記者
(抄訳)
医師、化学者などの専門家からなるEPAの諮問委員会はスターリンクの安全性に関して、未だ多くの疑問点が解明されていない、との報告書をEPAに提出した。この報告書は28頁の高度に専門的な内容で、EPAがAventisの要請に応じて、スターリンクの食品としての暫定的認可(4年間)を許可するかどうかの参考になる。Aventis社のスポークスマンはこの結果に対するコメントを避けた。
報告書によれば今年度生産された8000万ブッシェルのスターリンク・コーンの一部が農家段階や穀物倉庫、出荷など流通過程で他のコーン製品に混入したと思われる。
ワシントンの法律事務所は先週、Aventis を相手取ってこの混入事件で日本や韓国などアメリカの大手のコーン輸入国への輸出が低下し、損害をうけたとして農家による集団訴訟を提起した。
同報告書によれば、スターリンクで被害を受けたと訴えでた44名の中、少なくとも14名はスターリンクが原因でアレルギー症状を起こした可能性があるが、更に研究が必要である。
諮問委員会によれば、スターリンクのCry9C蛋白質は「中程度のアレルゲンである可能性」があるが、断定するには更にデータが必要である。
アメリカの食卓へのスターリンクの混入レベルに関しては、「食物連鎖の過程でスターリンクがどの程度混じったか追求する必要があるが、実際にアレルゲンとなる可能性は低い」と報告している。
同諮問委員会は、Aventis社 が食品としての4年間の暫定的認可をもとめて新たに提出した主張の多くを却下した。
環境保護団体のバイオテク・エキスパートであるBecky Goldbergは「これで、EPAはAventisが求める認可を大幅に送らせるかあるいは却下する根拠を得たことになる。全体としてリスクはかなり低いだろうが、スターリンクがアレルゲンかどうかという事に関しては次から次へと問題点が出てきている。EPAが現時点で科学的に判断出来るだけの情報は足りない」とのべた。
反バイオテク活動団体「遺伝子技術食品アラート」のスポークスマン、Larry Bohlenは
コーン材料の食品を食べて発病したという44名の消費者を、合衆国疾病管理センターは徹底的に調査すべきだ、と云った。この発病者は「かゆみ」から救急病院での治療が必要な呼吸困難まで様々な症状を起こしていた。
この諮問委員会の報告にたいして食品メーカーは、スターリンクは食品にわずかしか混ざっていない、と指摘した。「スターリンクの混入量は少ないので消費者がアレルギーを誘発する可能性は少ない、というEPAの見解を歓迎する」と国内最大手の食品会社の所属する流通グループ、アメリカ食品製造協会の副理事長Gene Grabowskiは語った。
EPAはFDA(食品医薬品局)、USDA(アメリカ農務省)とも協力して食品のモニターにつとめ、スターリンク混入がこれ以上広がらないようにする、と語った。
また、この3者機関は、今後スターリンクの食品加工段階での影響を評価し、混入の新たな検出方法の開発を行う。