コーンの10%にスターリンクを検出
アンソニー・シャディド
ボストン・グローブ 2001年5月3日
山田勝己 訳
農務省の発表のよると、昨年何百種類もの軽食製品回収の原因となったスターリンクが、全国の連邦検査官による11万件の穀物検査で約10%に検出された。 多くは10粒位と少ないものだったが、汚染の広がりが、その作付面積に比べて非常に膨大なので専門家達を驚かせている。この検査を受けて穀物商社は、大量のコーンをアメリカの食品と輸出市場からに飼料に回さざるを得なくなった。「こんなににスターリンクがあるということは誰も予測できなかった。」 とミネアポリスのメダリオン食品検査所のアン・ブリッジスは話す。
今回の発表は、アメリカ農業界が今後何年も解決策を模索し続けなければならない一連の報告の最新のものだ。開発者のアベンティスは「今後何年か」は、スターリンクが食品に残ると認めた上で、政府に害のないレベルでの混入を認めるよう申請している。
米政府は、1500-2000万ドルかけて汚染種子の回収を行っている。これまで1/4の種苗会社が申告している。これら企業のコーンの生産量は全体の1%以下と少ないが、既に数百万ブッシェルのコーンを迂回させている。
農務省の穀物検査サービスは11月15日以来11万件以上の検査をしており、そのうち9%にCry9C蛋白が検出されている。数十人の検査官による検査は、荷船、貯蔵箱、トラック等コーンが貯蔵されたり運ばれたりするところ全てで行われており、中西部のスターリンクが中心的に作付けされた地域では16%に汚染が見つかっている。
「全体としての検出率は大体一定している。検査は約15分掛かり延々と続くだろう」と検査サービスのジョン・C・ジラーは話している。検出されたものの迂回は企業に任せている。 「我々はサンプルを取って検査し、結果を証明するだけで、その後コーンをどうするかは企業次第だ。」という。
スターリンクは昆虫の幼虫に対して毒を持っている。環境保護局は、分離登録で家畜飼料としては認めているが、食品としては認めていない。 スターリンクは、全米収穫量100億ブッシェルの1%に満たない分量だが、この分離登録は誤りであったことを認め、バイオテク種子に関しては、今後許可しないとを発表している。
スターリンクは昨年市場から除かれたのだが、食品の流通から取り除くのは、監督機関、農家、食品企業、アベンティスにとって大変な難問であることが分かった。 農務省の検査では、800粒に1粒の精度で汚染種子を検出できる。 検出されたものは全て迂回させなければならない。 「ぽつりぽつりとある粒を探すんですよ。汚染が分かってから分離するんです。通常は予め分かっていて準備できるんだが。」とギラーは話す。
スターリンクは全コーン作付面積の0.4%だが汚染されたのはそれを大きく上回っており、取り扱い(コンバインには1ブッシェルくらい残る)や虫や風や鳥による花粉交雑で混ざってしまう。
アベンティスは2000年産は170万件の検査と8000台のトラック、15000貨車、285艘を要して99%回収していると発表したが、それでも全てをすぐに回収するのは不可能だという。 それで20ppbまでの混入を認めるようEPAに申請している。 反対者は、これを責任逃れだと非難している。
スターリンクの脅威には異論がある。アベンティスが最近出したEPAへの提出書類では、健康への懸念は全くないとあり、EPAは慎重に検討すると言う。 タコスの皮やコーンを含有する食品で数十人が具合が悪くなったと報告しており、EPAはその調査結果を待っている。
昨年12月第3者専門家会議は、スターリンクのアレルギー反応を起こす確率は「中程度」だが、食品に含まれる量では、アレルギーを起こさないだろうとEPAに報告している。 それも今回の結果で揺れている。
「汚染は広がるばかりで、懸念は増えるばかりだ。 最早GM作物を押さえ込むことは出来ないところに来ている。」と全米環境トラストのマット・ランド バイオテク・キャンペーン担当は話す。
推進派の人たちも驚きは隠せない。そして、政府のゼロ許容を止める良いきっかけだと話す。 彼らにとって今回のことは健康への懸念と言うよりも規制の問題と受け止められており、37州の企業が加入している北米製粉組合の副代表ジェームズ・ベアは「(この数値は)ちょっと高いね。 短期間に混入を除くのは難しい。 ゼロというのは本当に低い数値なんですよ。最善を尽くしているんだが。 莫大な費用だ。 負担が大きすぎる。 取引が減ってしまった。」と話す。