2005.9.12 中小企業センター

講演会記録

野菜が危ない拡がるGMナタネ

―ずさんな安全性審査―

講師  河田昌東(四日市大学講師)

 

今日は、遺伝子組み換え(以下GM)問題、その中でもGMナタネが国内のあちこちで自生しているという問題について、お話しします。日本はGM作物を一番たくさん消費していますが、GMナタネの自生が環境問題として、また国内の農業にどういった影響があるかを考えていきたいと思います。

日本は世界最大のナタネの輸入国で、合計するとおよそ年間200万トンになります。その中でカナダ産が160万トン(80%)で、カナダ産は80%がGMですので、ナタネの輸入量全体の約60%がGMの可能性があるという事になります。

ナタネの輸入港は、近くでは名古屋港、静岡県の清水港、三重県の四日市港です。これまで全国の仲間とすべてのナタネ輸入港について『こぼれ落ちによる自生があるかどうか』を調べてきましたが、私たちは四日市港および名古屋港を中心に調べています。ご存知のようにナタネは直径1_くらいの非常に小さい種子ですので、さまざまな港での取り扱いの時にこぼれてしまうという事が容易に想像できます。たとえば、名古屋港に行きますと小麦なども輸入されているわけですが、港の一角に小麦も、小麦畑のようにいっぱい生えているわけです。加工品・食用として輸入されるのですが、それ自体発芽能力があるので、当然芽生えてくるという事です。

いずれこういう問題が起こるのではないかと思っていたのですが、農水省がこぼれ落ちによる自生問題が心配で調査した結果、04年の6月末に千葉県の鹿島港付近にGMナタネが生えているという事を急遽発表しました。われわれは、すぐに四日市港に飛びまして、7月中に四日市港の実態を見たわけです。ナタネは、もともと冬成長して春花を咲かせるもので、7月とか8月の真夏に花が咲いているとは思っていなかったのですが、来年の予備調査という事で行ってみました。ところが、堂々と花を咲かせていたのです。

港では、巨大なタンカーに乗せて小麦やダイズやトウモロコシが入ってきます。埠頭ではアンローダーという巨大な掃除機のような真空ポンプで種を吸い上げ、ベルトコンベアーでサイロに運びます。こういった設備は何処の港でも共通した設備になっています。そしてベルトコンベアーの真下に点々とナタネが生えていますが、コンベアーからこぼれ落ちて生えているのは一目瞭然です。種が小さいので、舗装道路にちょっぴりある土にたくましく生えているというのが、現地を見たものの実感だと思います。花が咲いていないと分かりにくいのですが、輸入のナタネはキャノーラという種類で、カナダで開発された油を採取するためのナタネです。一見キャベツの苗のように葉っぱが青白くてごわごわしていて、在来ナタネとは、ずいぶん違います。在来ナタネはふわふわしてしわがあり、薄黄色い葉なので、慣れれば、西洋ナタネとの違いがすぐに分かります。

 

GMナタネは港を出て、50km地点まで拡がっていた!

調査結果は地図のようになります。埠頭から細い道を通って、国道23号線に出て行くわけですけれども、この道路の両端にも生えています。その後新聞にも取り上げられ、私たちは何回も調査に通って、推移を見守るようになりました。

サイロからトラックに積み込む時、ナタネが出てくる筒が上からぶら下がっており、1回に1トンず                                                                                                                                    つトラックに落とし込み、トラックが10トンならば10回落としてカバーをかけ、運んで行きます。種をどさっと落とす時に、鳩がたくさん群がって食べているから「落ちているんだな」と分かりました。トラックを追跡したところ、松阪の近くにある嬉野市の油工場に運んでいました。港から油工場に向かって、道路の左側にたくさん生えています。それと中央分離帯ですね。油工場から港の方向に向かっては余り生えておらず、非常にまばらな事から、これはトラックの積荷からのこぼれ落ちである事が明らかです。

今年の3月に徹底的に調べようという検査したのですが、世界で一番使われているラウンドアップ(以下RR)という除草剤に耐性を持たせたGM、バスタ(以下LL)という除草剤に耐性を持たせたGMがありますが、港の近辺で自生しているナタネの30〜40%にRR耐性が出ています。港から出て搾油工場まで50km弱ありますが何と約80%が除草剤耐性でした。

 

GMナタネはたくましく生き残る?!

これは一体どういう事か?ですが、GMナタネが特別強いのか?あるいは除草剤をかけるから非GMのものは枯れてしまって、残るのか?いまだに判然としません。道路公団に伺うと今は、除草剤は使っておらず、手刈りをしている。なぜ沿線に生えているのかは正確な所はわからない。中央分離帯でも花を咲かせているのですが、触ったら手が黒くなるほど真っ黒になりながら、花を咲かせて実をつけています。本当にびっくりするような環境でも生えています。最初港の中は、こぼれるものは全部こぼれて、だんだん減るのではないかと思ったのですが、実は間断無く生えているのです。つまり、ばら撒きながら走っているという事で、とても大きな問題です。鹿島港も80km近い所まであるという事です。

そこでいろんな問題が起こってきています。四日市に内部(うつべ)川いう川があり、国道23号線と交差しています。ここは春になりますと、本当に美しい菜の花畑が出現します。これは皆菜の花だと思っていますが、近づきますと、足の踏み場も無いくらいにカラシナが生えています。もちろん菜の花の仲間なのですけれども、学名はブラシカ・ユニシアという名前で違う種です。そもそも外来種で、いつの頃に入ってきたのか分らないのですが、いつの間にか日本中の河川敷を席巻するように拡がっています。セイタカアワダチソウのように一旦入ってきてしまうとはびこってしまうという例です。

 

GMナタネと野菜の交雑は時間の問題!?

問題はそこから発生します。橋の下にはカラシナとGMの西洋ナタネが隣り合わせて生えているのですね。条件が整えば、交配して種をつける事になります。内部川の河川敷はGMナタネとその他ナタネ科植物の言わば混合状態です。何故河川敷に白菜が生えているのか、よく分らないのですが、白菜とカラシナと西洋ナタネが渾然一体として生えているのが内部川の実態ですね。しかもお互い花期が同じで、交配の危険が非常に高いという事です。

さてもう少し南下して20q位でしょうか。鈴鹿市の郊外で、田圃(たんぼ)の水を引く用水があって、この土手に沢山ナタネが生えていたのです(参考資料@)。初めはお百姓さんが田圃の畦に植えたのだと思い込んでいました。ふと心配になって車を止めてこれを調べたら、在来ナタネでなく西洋ナタネで、殆ど総てがRR耐性でした。その根元を倒してみますと、草という感じではなく、ものすごく大きくて太さは32oもありました。田圃の畦ですから、水も肥料も有るので大きく成長し、越年したものと考えられます。

GMナタネが多年草化して群生

 
 実は亡くなった丹羽文雄さんは四日市出身の作家ですけども、彼の小説の中にナタネが良く出てくる。だからそもそもこの地域はナタネの生育にとって良い環境で、気候温暖で水とか土壌とか非常に条件が良いという事ではないかと思います。

 私も相当しつこいと思うのですけど、1本のナタネから種の莢を採って、一晩かかって数えたのですが、莢が1,104本ありました。莢に20個位小さい種が入っているので、1株で2万個位の種がつくわけですね。西洋ナタネの重量の40%は油ですから非常によく出来た、油を取るのに適した改良品種です。しかし逆にこれだけ種が沢山つきますと、子孫が拡がって行くのは避けられないので、この場所で世代交代を起こしています。つまりこぼれたものがその場所で発芽し、自立して繁殖していると確認できました(参考資料A)。しかし環境省も農水省も、「可能性としてはある」と言っているのですけれども、フォーマルには「今のところ世代交代は無い」という見解です。

余談ですけども、先ほどのGMナタネの種を30粒蒔いてみたのですけど、見事発芽率100%で、大事に育てているとたった1ヶ月位で、蕾がつきました。念の為にGM試験紙で確かめますと、濃い赤いバンドが出て、RR耐性という証拠です。ついいでですけどもこのGM体の遺伝子は、全て優性遺伝子として2本の染色体の両方に同じ染色体、遺伝子が入っていますから何世代経ってもこの性質は受け継がれます。普通ですとメンデルの法則でその子供は3:1に分離するのですが、何代経っても除草剤耐性という遺伝子が受け継がれます。

袋を外してやりますと、蜂が寄ってきて花粉や蜜を漁る。約2ヶ月後ちゃんと種をつけまして、30粒蒔いて何百倍に増えたのでしょうか?ちゃんと種も確保してあります。

 

港のこぼれ種もモンサントの特許だから回収すべき!?

これも余談ですが、こうして種を採るのは本当はモンサント社の特許権を侵害しているわけです。ご承知のようにカナダの農家のパーシー・シュマイザーさんは、ずっと非GMナタネを栽培してきたのですが、自分の畑に花粉が飛んできて、RR耐性のナタネが生え、GM汚染したというのにモンサント社から訴えられました。「あなたの畑にはわが社の特許であるRR耐性のナタネが生えているから賠償しろ」という裁判を起こされて、結局シュマイザーさんが負けたのですが、意図して植えたのではないので、損害賠償はしなくてすみました。しかし「意図せずに生えたものに対しても開発企業は特許権を主張できる」とカナダの最高裁は認めたわけです。そのようにモンサント社が特許権を主張するのであれば、世界中の港に勝手に生えているナタネだって本来ならば回収する義務があるという事になります。畑に生えたものは損害賠償を請求するけれども勝手に生えたものは黙っているのです。私は意図して植えたのですから、ぜひ訴えてもらって裁判で議論をしたい。(会場笑い)

GMナタネの自生問題で、一番心配しているのは、今のところ港の中と周辺に限定され、点と線ですが、横に広がって面になっていった時には我々の手には負えなくなります。何とかして数年以内にGMナタネを駆除できるようにしたいと思います。皆さんがわざわざGMナタネを植える事は無いと思いますが、知らずに種を採って来て蒔くという事は要注意です。

 

GM作物の安全性審査、実は楽観論で非科学的?!

GM作物が自生していく事の危険性に対して、政府がどのように考えているのか、皆の協力を得て厚生労働省にGM開発企業が提出した安全性審査申請書のチェックをしました。

申請書は「西洋ナタネ、雑種、カラシナは交配するが、RR耐性なら他の除草剤で駆除できるし、見つければ抜き取ればいいから安全」と大変楽観的です。しかし現実にはカナダで交配がみつかっている、どの除草剤をかけても死なないスーパー雑草が現実にある、政府の言う事は現実からかけ離れています。

安全性審査では、政府は科学的にやっていると言いますが、実は非科学的です。例えばGMダイズをマウスに食べさせる実験で、28日間食べさせて死ななかったが、実はオスは体重が減っていた。でもそれは無視して「大丈夫だ」という結論です。ナタネの実験だとマウスに食べさせる期間はたった7日間、それで変化がなかったので、認可してしまっています。食品、医薬品の安全は急性毒性、慢性毒性、次世代毒性まで含めて考えなければいけないのに、GMの世界はそこから大きく乖離していて、これで安全性が確保されるのか、大変に心配です。

 最近分った事ですが、GM作物の作る蛋白質の中にスギ花粉や家ダニ等、アレルギー物質と共通の配列を持っている可能性があるというので注目されています。家ダニのアレルギーで、家の中を徹底的に掃除してきれいにしているはずなのに『ナタネを食べたらアレルギーが起きた』という事が理論的に起こりうるわけですね。食品としての安全性については、安全性審査の段階で厳密なチェックはされていないので、やり直す必要があるのではないかと私は思っています。

(中部よつ葉会)

参考資料@ 田圃の畦のGMナタネ大株の群生

参考資料A 田圃の畦のGMナタネ大株からの世代交代

 

 

 

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