遺伝子組換え食品を考える中部の会では、2022年4月10日、三重県の国道23号、鈴鹿市『北玉垣町』交差点から津市『江戸橋北詰』までの15.3kmの区間で、遺伝子組換えナタネの自生調査を行いました。

今回の調査と抜取りは、昨年7月に中部の会で行った、雑種ナタネ調査以来約9か月ぶり。また「抜取隊」としての大掛かりな駆除は約3年間実施できていません。

本来なら、一般市民のみなさまの協力のもとで春の『抜取隊』を行うところですが、今回も、新型コロナまん延防止措置発令のもと、やむを得ず中部の会関係者のみによる調査としました。

今回、赤線で示した左図を4区画に分け、計13名で調査を行いました。各班の調査区画が4km前後となるため、走行する車中からの目視による観察を基本とし、セイヨウナタネの自生が目立つ箇所では、車を降りて駆除のための抜取りと検体採取を行いました。

『磯山4』より約150m南
今回の調査で、抜取りしたナタネの総数は750本。イムノクロマト試験紙による検査の結果、検体として選んだセイヨウナタネ64本のうち48本が遺伝子組換えセイヨウナタネと判明(RR:ラウンドアップ耐性26本、LL:バスタ耐性22本)。遺伝子組換えの陽性率は75%(RR:40.6%、LL:34.4%)でした。

雑種ナタネの検体2本はいずれもGM陰性でした。




C班で採取された雑種ナタネ GM陰性

Romer社 RUR-HS 試験紙
(他の試験紙と区別するため赤印がつけてあります)
2019年12月、四日市港のトラック積込み用ピットに新設されたトラック洗浄用エアーシャワーの効果のためか、昨年7月時点までのセイヨウナタネ自生状況は減少傾向を示していたものの、今回の調査では増加の傾向が見られました。年間延べ約2000回に及ぶ輸送を、すべて完璧に洗浄された状態のトラックで行うことの難しさを痛感せざるをえません。

今回、抜取られたセイヨウナタネのほとんどが、芽生えてあまり時間が経過しておらず、部分的に連なって自生していることから、輸送時でのこぼれ落ちによるものと思われます。

■「RUR(roundup ready)HS」試験紙の試用
なお、今回のGM検査にあたり、RR+の検出用試験紙に、さらに好感度の Romer社「RUR HS」を試用しました。これは、従来の「RUR」試験紙の感度不足を補う目的に使えば、偽陽性や隠れGMなどの判定に役立つのではないかと「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」から支給を受け試用しました。

D班の検体から2検体にRUR-HS試験紙を試用
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今回は従来の「RUR」試験紙と「RUR HS」試験紙を両方試用してみましたが、B、C、D班では感度の差はほとんどありませんでした。A班のみ、従来の「RUR」試験紙と「RUR HS」試験紙に異なる結果が出ましたが、前年7月の抜取り隊で20本だけ残った「RUR」試験紙を使用した為、試験紙の劣化で感度が落ちていた可能性があります。が、後日河田代表から「異なる結果が出た場合は、PCR検査に出して確認すべき」との指摘を受けました。もともと「RUR」試験紙の感度が低いという事から「RUR HS」試験紙との比較テストをしたという先入観があったので、思い至りませんでした。

今回採取された個体のほとんどが、芽生えてあまり時間の経過していないものが多い
トラック輸送の途中でこぼれ落ちたセイヨウナタネ種子が発芽したものと思われる

左の写真は、A班での「RUR-HS」試用の模様(HS試験紙に赤い印)
(前列左から @ 2-3 A 4-8 B 7-20 C 2-4 後列F 5-14 H 5-13 I 6-16)
2-3 4-8 7-20 は従来のRR試験紙は陰性で「RUR-HS」試験紙は陽性。
2-4 5-14 5-13 6-16 は従来の「RUR」試験紙は擬陽性で「RUR-HS」試験紙は陽性。

ナタネのGM検査をするにあたって、試験紙は使用期限を厳守し、届いてから検査直前まで密閉容器に乾燥剤を付けて入れ管理を厳重にし、できる限り空気に触れないようにすると劣化が少ない。

中部の会の結果では、同じ使用期限であれば「RUR」試験紙と「RUR-HS」試験紙の感度の差はほとんどありませんでした。

農民連食品分析センター八田純人氏によると、試験紙の保存と使用については:
・乾燥状態の保てる密閉容器に入れ(乾燥剤封入)冷蔵または冷暗所保存(湿気厳禁)
・冷蔵保存の場合、使用する時、容器が常温になるまで置いてからフタをあけるようにする

遺伝子組換え食品を考える中部の会では、2022年7月10日に雑種ナタネ調査を行う予定です。例年、その時期に、雑種ナタネの自生が多くみられるため、4月のナタネ調査とは別に機会を設定しています。