愛知県の遺伝子組み換えイネ
商品化断念に関する声明

 12月5日午後の愛知県議会で、愛知県総合農業試験場がモンサント社と共同開発してきた除草剤(ラウンドアップ)耐性イネの開発に関する中村友美議員の質問に対し、愛知県農林水産部長は以下のように答弁しました。「6年間の研究の結果、除草剤抵抗性遺伝子を導入した有望な系統を作出出来る見通しがたったので、平成15年(2003年)3月末日をもってモンサント社との共同研究を終了する。作出した遺伝子組み換えイネについては、消費者に不安感もあり、商品化に必要な厚生労働省への安全性審査の申請は行わない」と。

 これは、過去10ヶ月にわたって日本各地の消費者運動と有機農産物生産者の団体(148団体)が、7月と11月、愛知県の名古屋市で「ストップ!遺伝子組み換えイネ全国集会」を成功させ、短期間に全国から58万名の反対署名を集めて愛知県に提出する等、粘り強い戦いの結果勝ち取った勝利です。

 県議会では、この運動に同調した中村友美議員の質問に、県当局がどう答えるかが焦点になっていました。小野寺農水部長は冒頭から「今回全国から多数の署名の提出があり、遺伝子組み換えイネの商品化等について、多くの方々が不安を持っておられる事を改めて承知した」「県政モニターアンケートの結果なども考慮した」と述べ、全国に広がった反対の声を考慮し決断した事を認める画期的な内容でした。また「今回習得した遺伝子組み換え技術は、花の新品種の開発に生かしていきたい」と遺伝子組み換えイネの開発からの撤退を明確に表明したのです。

 この6年間、モンサント社は愛知県総合農業試験場に働きかけ、技術と研究費を提供して愛知県が従来の交配法で開発した「祭り晴」という品種にラウンドアップ耐性遺伝子を導入し、新たな遺伝子組み換えイネを日本で開発、大きな市場を獲得することを狙っていました。これに対し、各地の消費者と生産者は日本人の主食であるコメに遺伝子組み換えが行われることに強く反対し、協力して署名活動を展開してきたのです。

 モンサント社の除草剤耐性ダイズはすでにアメリカで75%のシェアを占めるほどに拡大されてきましたが、次の標的は「コメ」と「小麦」です。どちらも世界で年間6億トンずつ生産され、アジアやヨーロッパの人々の主食でもあります。この両者の遺伝子組み換えによる開発と商品化は、同社にとって第一世代遺伝子組み換え作物の最終目標であり、それに成功すれば莫大な利益が見込まれるはずでした。日本国内で最も開発の進んでいた愛知県における開発中止はモンサント社にとって大きな挫折です。このニュースはアジアやヨーロッパで遺伝子組み換えコメや小麦の開発に反対している人々にとっても大きな朗報となるでしょう。

 私たちは愛知県によるこの勇気ある決定を評価し、今後も日本国内の企業や研究機関が、すべての遺伝子組換え作物の開発から撤退することを求めて引き続き活動していきます。

2002年12月15日
ストップ!遺伝子組換えイネ全国集会 実行委員会

日本消費者連盟  大地を守る会
遺伝組み換え食品いらない!キャンペーン
ストップ遺伝子組み換えイネ生協ネットワーク
遺伝子組み換え食品を考える中部の会