兵 庫 県

兵庫県の安全食品連絡会(会長 山中純枝)をはじめとする92団体(30142名)は、兵庫県に対し、『兵庫県内における遺伝子組み換え作物の栽培規制等を求める要望』を提出。
この要望書を受けて11/27付で兵庫県農林水産部農林水産局より回答がなされました。
以下、その要望書と回答書です。


2003年11月19日
兵庫県知事 井戸敏三様
兵庫県内における遺伝子組み換え作物の
栽培規制等を求める要望について

(要望団体は別紙(省略))

 私たちは食の安全を守るために30年余り活動している兵庫県下の消費者団体・グループです。

 1996年以降今日まで、遺伝子組み換え作物の安全性などについて疑問をもち、専門の先生方から学習、97年2月、国に「遺伝子組み換え食品の安全性の再確認と表示の義務づけ」を要望しました。

 97年3月、兵庫県議会へも同様の内容の請願をし、3月と6月の継続審議を経て10月議会で採択された経緯があります。

 今回、遺伝子組み換え作物の国内栽培問題が浮上しており、これに関する要望をいたします。

要望主旨
 1996年秋、日本では、大豆、ナタネ、ジャガイモ、トウモロコシの4品目の遺伝子組み換え作物が食品として認可されました。それ以降、認可品目は年々増え続け、今年6月の時点で、ジャガイモ=8品種、大豆=4品種、テンサイ=3品種、トウモロコシ=16品種、ナタネ=15品種、ワタ=9品種、計6品目・55品種にもなっています。

私たちは遺伝子組み換え作物について下記の不安と問題点を見い出しています。
@
国は従来の作物と姿、形、栄養成分が同じ(実質同等)なら安全と判断しているが、組み換えナタネで、「酸の含有量が増える」など品質低下の報告がある。
A
組み換え作物をネズミなどに与える動物実験では、急性毒性実験しかしていない。長期の影響を調べる慢性毒性実験は費用と時間がかかるので省略している。
B
未知の毒性ができる恐れがある。組み換え遺伝子を打ち込む時にどこへ入るか不明。技術は未完成である。
C
新たなアレルギー物質ができる恐れ。すでに殺虫性トウモロコシ(スターリンク)にできている。
D
遺伝子を組み換える時に目印として使われる抗生物質耐性遺伝子が、食べた組み換え食品から腸内微生物に移行して、病気治療のとき、抗生物質を使っても効かなくなる恐れがある。
E
特定の除草剤に散布するため耐性雑草ができ、米国では、除草剤の使用量が増加。環境汚染が増大。
F
殺虫性作物が目的の害虫以外の益虫を殺す。生態系にも悪影響を及ぼす。
G
組み換え技術を開発したモンサント社は、遺伝子組み換え作物は収量が増加し、世界の食糧問題の解決に寄与するとPRしていたが、実際の調査では、収量は7%から11%低下しており、食糧問題の解決にはならない。
H
米国で遺伝子組み換え作物の作付けが増えているのは、米国政府が生産者に補助金を出したり、モンサント社が農家の減収に対し補償金を出しているからである。
I
花粉の交雑によって、組み換え作物の遺伝子が在来種や有機栽培の作物と交雑し、汚染する。


 現在、国が認めている作物の中で、大豆、トウモロコシ、ナタネの3品目の一部に、国内での商業栽培としての作付けが可能となっています。これに関して農水省は、昨年11月、「遺伝子組み換え大豆栽培の場合の留意点」という文書を各自治体の農政局と日本モンサント社に送り「栽培に当たっては、事前に周辺地域住民の理解を十分に得ること。交雑・混入防止の措置を行うことを徹底すること」をお願いしています。しかし、具体的な防止措置を示してもおらず、かつ、自然界では交雑混入防止は難しく、各地で問題が起きています。

宮崎市に本部を置く「バイオ作物懇話会」の代表・長友勝利氏が、遺伝子組み換え大豆を、2001年は9か所、2002年は6か所作付けをしましたが、これまでは花が咲く前に刈り取り、土中に埋め込んでいました。が、栽培地の住民から強い批判が出ました。
今年は、茨城県谷和原村で、組換え大豆の作付けをして開花させ、それが発覚して、7月26日、反対する人たちのトラクターで、土中に鋤き込まれました。
岐阜県瑞穂市の農家でも、組換え大豆の作付けが発覚、県は消費者の不安と在来種と交雑する可能性や弊害を指摘して中止を促し、畑に水を入れて大豆を腐らす処置を取りました。
滋賀県中主(ちゅうず)町でも、組み換え大豆の作付けが発覚し、県は廃棄を申し入れ、8月20日に鋤き込まれました。滋賀県知事は県内栽培を禁止することを発表し、現在「滋賀県の遺伝子組み換え作物の栽培規制へ独自の指針」を検討中です。
03年9月24日、神奈川県綾瀬市の市民団体が陳情していた「遺伝子組み換え作物の栽培中止を国へ求める意見書」が採択され、関係機関に送付されたとのことです。このあと、茅ヶ崎市、水海道市などが続いています。


 2003年7月、カナダの生産者・パーシー・シュマイザーさんが来日、カナダでの遺伝子汚染の実態を聞きました。彼は50年にわたって種子の自家採取を行い、病気に強いナタネを開発・栽培していましたが、周辺に植えられた遺伝子組み換えナタネの花粉が飛んできて、彼の畑のナタネが組み換え遺伝子に汚染されてしまいました。汚染を受けた農家に対し、汚染者のモンサント社は、逆に「特許権侵害」で賠償を要求され、それを拒否したため、裁判に持ち込まれ、一審、二審とも負け、来年1月、最高裁で争われるとのことでした。
 シュマイザーさんは「カナダでは、組換え作物に汚染されていない純粋なナタネや大豆はもはや見つからない。日本はまだ間に合う。頑張ってほしい」と警告されました。


 一度、組み換え作物が日本の畑に植えられ、花が咲き、花粉が風や虫によって交配され、動物にくっついて遠くに運ばれると、どんなに距離をあけても今まで日本の気候風土の中で大切に育種されて守られてきた在来種が組み換え遺伝子に汚染され、在来種の遺伝子は失われてしまいます。

 2001年4月、日本で大豆を原料にした豆腐などの加工品に「遺伝子組み換え」の表示が義務付けられて以来、国産大豆の需要が増えています。恐ろしいことに、モンサント社は日本の大豆を組み換え遺伝子で汚染し、日本の消費者に米国の遺伝子組み換え大豆を受け入れさせ、世界の食料を支配することがねらい、と見られています。


 兵庫県は「丹波の黒豆」の産地です。また、兵庫県は「食の健康運動の推進」に一つに「大豆を食べよう」と大豆の消費拡大と転作作物として増産を進めています。兵庫県下で遺伝子組み換え大豆が栽培され、在来種の大豆が組み換え遺伝子に汚染されると「おいしい大豆」「健康で自然な大豆」としての価値も下がり、経済的損失を招くことは必至です。
 また、生産者がモンサント社から「特許権侵害で裁判に訴えられる可能性もあります。北米では1000以上の農家がモンサント社から賠償金を取りたてられ、モンサント社はこれをビジネスにしています。こういうことにならないよう予防的措置をとることが急務です。
 そこで下記の要望をいたします。

要望事項
2001〜2003年の兵庫県内での遺伝子組み換え大豆の栽培の有無を調査、結果を教えてください。
兵庫県下で生産されている大豆などが遺伝子組み換え大豆の遺伝子に汚染されないよう、滋賀県でも検討しているように、遺伝子組み換え作物の栽培を規制する条例を早急に作ってください。
すでに、03年9月24日、神奈川県綾瀬市議会などが国へ提出した「遺伝子組み換え作物の栽培中止を求める意見書」と同様の内容の意見書を兵庫県からも国へ提出してください。

 以上の要望について、11月末日までに文書でご回答をお願いいたします。
  送り先 666−0026 川西市南花屋敷3−13−19 山中純枝宛(TEL:072-759-2145/FAX 072-756-0428)



以上の要望書に対する、兵庫県農水部からの回答。


農園第 1889号
平成15年11月27日

安全食品連絡会 会長 山中純枝様

兵庫県農林水産部農林水産局
農産園芸課長 佐藤直敏 


 兵庫県内における遺伝子組み換え作物の栽培規制等を求める要望について(回答)

 平成15年11月19日付けで照会のありましたみだしの件について、下記のとおり回答します。
 なお、要望団体には貴職からご連絡いただきますようお願いします。



1 遺伝子組み換え大豆の栽培について
 平成14及び15年度に市町やJAに対して、遺伝子組み換え大豆の作付けについて調査を行ったところ、栽培の実態はありませんでした。

2 遺伝子組み換えの栽培の規制について
 遺伝子組み換え作物の環境に対する影響等については、消費者のみならず再三者の間でも不安感があることから、消費者、生産者、学識経験者等が構成員となった「ひょうご食の安全・安心推進会議」への協議等を踏まえ、遺伝子組み換え作物の取り扱いに関わる方策を検討していきたいと考えています。

3 国への要望書の提出について
 現在のところ、県から国に対して意見書等を提出することは考えておりません。