北海道における遺伝子組換え作物の
栽培に関するガイドライン骨子(案)

平成16年
北  海  道

1 背景
近年、遺伝子組換え作物が、試験研究機関や一般栽培農家において栽培
消費者団体や生産者を中心に遺伝子組換え作物の栽培中止などを求める声の高まり
本年2月から、カルタヘナ法により遺伝子組換え生物による野生生物への影響を防止
農水省は、所管する独立行政法人の栽培実験を対象に周辺の農家の一般作物との交雑や混入を防止するための指針を策定する予定
道としては、当面、道農業試験揚における実用品種の育成を目的とした遺伝子組換えの研究を見合わせ
道議会において、条例で道内における遺伝子組換え作物の栽培を規制する方針を表明
北海道議会では、15年第4回定例会において遺伝子組換え作物の非承認などを求める意見書を採択

2 ガイドラインの策定に当たっての基本認識
遺伝子組み換えなどバイオテクノロジーの研究開発は、将来手粋な本道の産業振興に有用であり、積極的な取り組みが必要
しかし、多くの道民が遺伝子組換え食品や開放系での遺伝子組換え作物の栽培について不安感を抱いており、全国の消費者も同様の意識
遺伝子組換え作物の栽培は、花粉の飛散による交雑や混入による環境への影響などが懸念
道産食品に対する風評被害や本道農業全体の著しいイメージダウンにつながる恐れがあるものと強い危倶
特に、遺伝子組換え作物と一般作物等との交雑や混入を防止することが重要
こうしたことから、道としては、道内における開放系での栽培について、消費者や道民の理解を得ながら慎重に対応することが必要。
(道としては、道内において開放系での栽培が行われることのないよう、強い姿勢で臨むことが必要)

3 目的
遺伝子組換え作物の花粉の飛散による一般作物との交雑や混入による環境への影響を防止するとともに、道産食品に対する消費者の安全・安心・信頼を確保し、北海道プランドの一層の向上を図るため、道内における開放系での遺伝子組換え作物の栽培に関する道としての対応方針などを示すもの

4 ガイドラインの位置付け
このガイドラインは、「食」に関する条例(仮称)の施行までの当面の対応方針を示すもの
消費者や生産者をはじめ、関係機関・団体など幅広い道民のガイドラインに沿った積極的な取組を期待するもの

5 ガイドラインの適用範囲
道内における開放系での遺伝子組換え作物の栽培を対象

6 道としての対応方針
道は、道内における開放系での遺伝子組み換え作物の栽培について、(道内において開放系での遺伝子組換え作物の栽堵が行われないよう、)市町村や消費者団体、農業団体などの関係機関・団体などと連携、協カしながら、次に掲げる対応方針に基づき対処
開放系での遺伝子組換え作物の栽培が行われないよう、道としての基本認識等を周知徹底
翌年度における開放系での遺伝子組換え作物の栽培許画を調査、その調査結果について道民に情報提供
当該作物の栽培を行おうとする者に対して、道としての墓本認鐵等を説明した上で、その栽培の中止を要請
中止の要請にもかかわらず、開放系での遺伝子組換え作物を栽培しようとする者に対して、周辺農家の一般作物との交雑や混入を防止する万全な措置を講じるよう要請
開放系での遺伝子組換え作物の栽培が行われていることが判明した場合、速やかに栽堵の実態に関する調査を実施し、当該作物の栽培者に対して、栽培中止や処分の要請
開放系での遺伝子組換え作物の栽培が行われた場合、必要に応じて周辺農家の一般作物との交雑や混入などの状況を確認するための調査、分析を実施
今後の取組
遺伝子組み換え技術に関する情報を消費者や道民に積極的に提供し、正しい知識の普及・啓発に努める
試験研究機関が研究ほ場で行う遺伝子組換え作物の栽培試 験については、その実施条件を別途検討する
この検討は、食に関する条例の検討の中で行うこととし、条例の提案を予定している来年3月までに結論を得る
左の『ガイドライン骨子案』は平成16年1月、北海道が関連団体に対し配布した公開文書と2月に行われた改正。

骨子の文中青文字の部分が、2月に新たに加えられたもの、または修正された文言です。修正の場合は、その直後に修正前の文章を括弧で括って緑文字で表示しています。


以下、1月時点の骨子に対する北海道有機農業研究会・石塚おさむさんの言

農水省のガイドラインは試験研究機関を対象にしたものですが、基本的に試験栽培をするためのきまりを定めるものです。
北海道のガイドラインは「栽培させない」ためのきまりです。しかも、試験研究機関も含めすべての栽培を規制するものです。ただあくまでも指針なので拘束力はなく、罰則もありません。

来年制定予定の条例へのつなぎです。

北海道の方針は農水省に通告していますが、農水省側の反発は相当強いみたいです。かなり強いプレッシャーがかかっているようですが、道庁農政部内部で検討の結果、基本方針は変えないで初心を貫くことに決めたそうです。

知事は、バイオ産業育成の必要性を認めつつも、GM作物については道民の抵抗感が強い以上、規制は当然との態度です。

一方、推進側の攻勢も強くなっています。富田房男氏(北海道大学教授)が道庁農政部を訪れ、要望書を提出。国の指針案を越える規制はしないよう求めたようです。また道のガイドライン骨子案については、近日中に改めて申し入れするとのこと。

道の担当者は明言しています。「科学的知見はもちろん重要だが、文献が少なく、これまで出されているデータにばらつきがある。安全性の根拠が曖昧な中、何よりも道民の気持ちが大事である。危険かもしれないものはやらない、という方針に変わりはない。」


その後、道による『骨子』は同年2月、加筆・訂正され、関係団体に対し再配布されました。

以下、『北海道遺伝子組み換えイネいらないネットワーク』加藤秀生さんのコメント。


1月に発表された「北海道における遺伝子組換え作物の栽培に関するガイドライン骨子(案)」では、GM作物に対する道の強い姿勢が明確に表現されていました。これは、わたしたちにとって大変歓迎すべき内容であるとともに、今後の道の農業政策の反GM化をより鮮明に打ち出すものとなっていました。

その後、2月13日の私たちの37万筆余の署名提出は、今後の反GMへの動きを加速するための大きな原動力になりました。一方、2月17日開催の「北海道の安全・安心な食を考える会」第2回会合では、このガイドライン骨子についても意見交換が行われた模様です(この会合は30名という限定ながら一般傍聴が認められました当日の資料は、
http://www.pref.hokkaido.jp/nousei/ns-rtsak/shokuan/prekossi.pdf 
からダウンロードできます)。

しかし、推進派の動きも根強く、道庁に対するさまざまな圧力や、ガイドラインへの反対キャンペーン展開など、ガイドライン策定に向けた動きはまだまだ予断を許していません。

そんな中、2/25、生活クラブ生協に対して、ガイドライン骨子修正案について意見を聞きたいという農政部からの依頼があり、早速、池内専務理事、泉屋、佐藤両理事、事務局加藤の計4名で道庁まで出向き、修正案の提示を受けました。
以上のガイドライン骨子に対して、GM推進側である農業・生物系特定産業技術研究機構(NARO)より北海道に意見書が提出されています。