反GMイネ生産者ねっとNo.461
2003年11月1日
農業情報研究所(WAPIC)
米国食品医薬局(FDA)
クローン動物は食品として安全
米国食品医薬局(FDA)がクローン動物は食品として安全という暫定的結論を出した。国民のコメントを受け付けた後、来年春にはクローン動物の表示が必要かどうかを含め、規制のアウトラインを示すことになるという。そうなれば、クローン動物由来の牛乳や肉が店頭に出回ることになる。
とはいっても、クローン牛の乳や肉がそのまま出回るわけではない。現在、クローン動物を作るには一頭当たり2万ドルの費用がかかり、これから作られるハンバーガーは100ドルにもなるというから商売にならない。クローン牛は性能の高い牛の繁殖のために使われ、その子の乳や肉が販売されることになる。あるいは、クローン技術は、乳中に薬剤を生産するとか、耐病性遺伝子、あるいは食品栄養成分増強遺伝子を持つ動物など、遺伝子組み換え(GM)動物の作出を助けることになる可能性もある。
クローン技術は食品としての安全性だけでなく、母親やその子に深刻な健康障害を生んでいることから、動物福祉上の問題も叫ばれてきた。全米科学アカデミーもこれを最大の問題と指摘していた。しかし、FDAは、こうした問題は人工授精などの他の繁殖技術でも起きることであり、クローンに特に問題はないと結論している。FDAは、この結論を覆すよほど強力な証拠が出ないかぎり、パブリック・コメントを経ても、特別の規制も、表示も必要ないということになるだろうと見ている。
しかし、安全性に関する批判者の懸念は完全には払拭されないであろう。FDAの結論は、牛ではなく、別の動物に関するデータを基にしているという批判がある。動物福祉上の問題や農業に与える影響をなお懸念する声もある。さらに、これが人間のクローンの作出に拍車をかけることを恐れる者もいる。何よりも、消費者が簡単に受け入れることはありそうもない。一部食品企業は、例え安全だとしても、GM作物と同様、消費者がシャット・アウトしてしまうことを恐れている。食品企業にとっては、FDAのお墨付よりも、消費者の承認の方が大事ということだ。クローン牛の生産は誰にも利益をもたらさない可能性がある。
GM食品といい、クローン動物といい、「安全性」に論議が集中する傾向があるが、食品が広く受け入れられるためには、研究者や開発者が「安全」と確認するだけでは足りない。研究者・開発者は安全を疑う人々を「非学的」と嘲笑するだろうが、科学は食品の絶対的安全性を証明できるわけではない。人々が安心して食べられる食品は、何千年の歴史的経験が人々に安心を確認させたものだけだ。新規食品が短い間に完全に受け入れられると考えるほうがどうかしている。おまけに動物虐待のイメージが付きまとえば、消費者はわざわざ好んでこれを食べるだろうか。ただ、表示もしないとなれば、消費者に選択の余地はない。こんなものを食べたいと思わない消費者は、せめて米国産という表示をしてもらい、米国産乳製品や牛肉を避けるしかなくなるかもしれない。
我々の住み心地をわざわざ悪くし、平安を奪うようなことばかり、なぜこうもあくことなく続けるのだろうか。地球は住みにくくなるばかりだ。
詳しくは、WAPICのHP
http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/GMO/news/03110101.htm
をごらんください。