デモ栽培のGM大豆鋤き込まれる
茨城県谷和原村    03/07/26


一般の畑で栽培されていた、遺伝子組み換え大豆が反対派によって、処分・すき込みされました。

一昨年前から、『バイオ作物懇話会』という団体による、遺伝子組み換え(GM)大豆の国内でのデモ栽培がおこなわれています。このデモ栽培というのは、GM作物の優秀性を理解し、広く普及しようという目的によるもので、宮崎県・長友勝利代表による自主的な活動ということになっています。

昨年は北海道北見ほか、全国6ヶ所で大々的に栽培されました。しかしながら、全国的な「GM作物のような、消費者の望まないものは作らない」という気運から、栽培のための候補地が見つからず、今年はただ1ヶ所、茨城県谷和原(やわら)村の2反ほどの畑でのみの栽培をおこなっていました。昨年も谷和原村で同様の栽培がおこなわれています。

ところが、今年は収穫までの栽培をするという(今までは開花前に処分・すき込みされていた)懇話会の方針に、地元農家はじめ、地域に関連の生協などが反発。そして6月末の段階では、すでに開花が確認されました。このままでは、近隣の大豆に交雑する可能性があり、デモ栽培の続行はやめてもらいたい。という再三の申し入れも受け入れられなかったため、せめて花粉の飛散防止用シートをかけてほしい。ということでありましたが、強風でそれもならず。とうとう反対派有志の、トラクターによる強制執行という結果となってしまいました。

おかげで地元では警察まで動き出す始末となり、日本では前代未聞の事件に発展してしまいました。わたしたち各地のGM関連の運動機関では、次々に更新される情報におおわらわといったところ。このような事態は、フランスの農試に侵入、研究用GM作物引き抜きをして話題となったジョー・ボベさんの日本版ということになるのでしょうか。

ここで少し付け加えておかなければなりません。それは、『バイオ作物懇話会』という団体の素性について。この団体が、日本モンサント社とのつながりを持っていることは、以前から周知の事実でした。しかしながら、今回の一連の顛末のなかで、STAFF(食品化学広報センター)、農林水産省が直接顔を出す場面があり、それらの影でのつながりというものに、いささかのきな臭ささえ感じられてしまう。

認可されているはずのGM作物がなぜ受け入れられないのか
食品として認められている以上、GM作物を国内で栽培することは違法ではありません。今年、日本も懸案の『カルタヘナ議定書』に調印するため、国内でのGM作物の栽培にあたっては、農水省の許可が必要であるという取り決めを作った(しかし、許可を受ければ、正当に栽培ができるということになる)。したがって今回の谷和原村でのデモ栽培も、違法なことでは毛頭ない。にもかかわらず反発がある。進んで栽培しようという個人はいない。その理由は、GM作物が売れないことを、生産者は知っているからに他ならない。なぜなら、大多数の消費者がそれを望んでいないから。

そういった消費者意識、反対派の態度に、推進派の言い分は「非科学的である」。その言動に対して「社会的な反発がこれほどまでに続いていることにたいする科学的な回答をもとめる」と答えた人もいる。米国の推進派は「GM作物で死んだ人はいない」という。これこそ非科学的な論理とはいえないだろうか。この言動は、ダイオキシン汚染に対してさえ発せられている。

はなしを谷和原村にもどします。GM作物反対派が恐れたことは何か。それはせっかく培ってきた地域の農産物の信用が失われることへの恐れ。地域の農業の将来に、決してプラスとはならないだろうという予測。では、GM推進派の期待とは何か。農作業が合理化される。減農薬ができる。収量が増える。利益が上がる。これらはいずれも具体的な理屈のようにも思える。しかし、米国・カナダでそれらの事実はひとつも立証されていない。明確な証といえば、遺伝子汚染された広大な農地とバイテク産業の種子支配。

今回のGM大豆の処分事件は、一体どんな方向に発展してゆくのだろうか。政治力の介入でもありうるのだろうか。あるいはもみ消されるのだろうか。はたまた、単なる不法侵入、器物破損などの罪状での、執拗かつ継続的な取調べの繰り返しがおこなわれるのか。

しかしながら、地元の農家がこうむるかもしれなかった、有形無形の被害について無視されてははなはだ迷惑なことといわざるをえない。